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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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S3

怪奇物語

作者: 六藤椰子〃

 「どれか良いものはないかな」

真夏の深夜での出来事である。今日は猛暑日であり、私はレンタルDVD店にやって来て、ホラー映画を探していた。『呪われたビデオ』、『実際に遭遇した怪談』、『告白!大人の怪奇・体験談』などなど…どれもこれも在り来たりなものばかりで、気になるようなものがない。そんな中、『最近の出来事』と言うDVDを見つけ、なんだかそのタイトルに惹かれてしまった。

どうやらシリーズものらしく、一巻から四巻まで揃っている。何気なく一巻のレンタル開始日を見てみる。八月一日と書いてあった。数年前の出来事であり、日付的には数日後の出来事。このDVDを出した会社は何年目なのだろうか…などとくだらない事を考えつつ、一気に全巻を借りる事にした。セルフレジにて会計を済ませ、早速帰って片手にビールを、そしてこのDVDを鑑賞する事となった。

 物語の内容は男女五人のキャンプへ行く話しだった。ホラーと言うぐらいなのだから、幽霊が出るのだろうか。それとも13日の金曜日のように、何かに襲われたりするスプラッタ系の映画なのだろうか。そういえばレンタルする際に、背表紙を流れ見たのだが、内容は至ってシンプルで『これから何かが起こる』としか書かれてなかった。ホラーコーナーに置かれてあったので、ホラー要素を見せずにいられるほどの自信作なのだろうか。

 物語はキャンプへ行くところから始まり、男の幽霊と思わしき存在が男女の後をずっとついて行く。しかし、その存在に気づくものは誰一人としていない。そのままエンディングを迎えた。

「なんじゃこりゃ。確かにずっと憑かれたら怖いけど…」と思いつつ、仕事疲れもあり、そのまま寝入ってしまった。

 ふと目覚めると朝になっていた。私は急いで仕事先へと向かった。遅刻せずには済んだのだが、早く帰って2を見たくて仕方がなかった。不思議な魅力があるそのDVDは、なんだか私の心を決して離すような事はなかった。

仕事も終わり、さっさと帰宅しようと支度していると、「イズモ君、実は話したい事があるんだけど…」と上司から話しかけてきた。珍しい事もあるものだ、そう思いつつ話しを聞いてみようとしたその時、上層部の人から呼ばれて上司はの話しはそのままお流れとなってしまった。

「明日、メール送っておくからね」と上司は言ったので軽く会釈して帰宅した。

 遂に二巻か。物語に繋がりはあるのだろうかとワクワクしながら再生をする。

しかし、どういう訳なのか全く再生されず、真っ暗な画面だけだった。ディスクが汚れているのかと思い、渋々三巻を手に取り、再生出来るかどうかを試みた。

三巻のローディング中にふと何気なくレンタル開始日を見た。すると、七月三十日と書いてある。年数までは汚れてしまって読めないのだが、二巻も見てみると、七月三十一日と書いてあった。

珍しい事もあるものだ…いや、このDVDを出している会社の方針なのかもしれないが、一巻置きに一日早めて出しているようだった。こだわりのようなものを感じられずにいられないのはおそらく、私だけではない事だろう。

 三巻の内容は一巻で見かけた男女の恋愛物語だった。

女性は一巻では幽霊だったその男性の事を想っているが、なかなか気持ちを相手に表す事が出来ない。当然男性はその事に気づくハズもなく、そのまま気持ちがすれ違う毎日がある、と言った内容だった。

「よく見ると女性は上司に似てるな」と微笑んだりもした。名前こそは違うものの、会社の仲間達にも似ているようだ。しかし、どういう訳なのか、幽霊が出てくる様子もなく、結局幽霊は一度も出ないまま物語は終わってしまった。再びそのまま寝入ってしまい、ふと目覚めると午前0時を回っており、丁度エンディングが終わった後に目覚めてしまったらしく、リモコンで停止しようとしたところ、シーンが続きがあった。ここで初めてこの作品には、エンディング後にもちょっとしたオマケシーンがあるという事を知ったのである。一巻で幽霊だった男は出かけた矢先に事故に遭遇してしまい、好かれていた女性の気持ちが強すぎるあまりに地縛霊となってしまうものである。

「そういえば一巻の方はまだ見てないな」と思い、一巻に手を伸ばした。明日は休日であるし、問題はないだろうと思ってそのまま再生をし始めた。

一巻のオチは後味が悪い。キャンプに来た男女が幽霊の仕業なのかどうかまで詳しい描写まではなかったものの、幽霊が必死に停めようとするのだが、結局は事故って終わっていた。さすがはホラー作品だと、逆に関心してしまった。

せっかくだし、四巻もこのまま見続けてみるか。と、私は思い、再生をすると吃驚してしまった。

昨日の仕事先での出来事をまるで映したかのように同じような光景なのだ。「ここで幽霊がきたりするのだろうか」などと寧ろワクワクしていた。タイムリーのようにも感じていたからだ。

しかし、幽霊が出るような事は結局なかった。二巻以降はもしかしたら過去編といったところなのだろうか。となると、二巻がますます見たくなるものだ。念入りに眼鏡拭きを使ってみる。少しは見えるようになるかもしれない。しかし、一向に再生はされなかった。

正しくは、本来は再生されているのだろうけど、暗い画面のままだ。いきなり何かがワッと出てくるのだろうかと疑問に抱き、暫く早送りしてみる。しかし、なにも映らない。

私は明日の朝に店員に文句を言うとして、とりあえず期限が本日までなので、この日記を書いた後に今からDVDを返しに行こうかなと思う。

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