Prologue1 魔王様の目覚め
何か魔王モノ書きたかったんです。
「――おうさま……。まおうさま……っ! 魔王様ぁっ! 起きて下さい!」
「……?」
突如、ベッドの上で寝ている少年の意識の中に飛び込んできたのは、幼い少女の声だった。
しかし少女は、頭に角をはやしているので少年は驚いた。
はっきりと聞こえてきた甘い声だったが、なぜこんな状況にいるのか少年は分からなかった。
ただ、はっきりとしているのは、自分が高校に行っていたと言うことだけ。
(俺は確か、学校に行っていて……。え? な、何だこれ。何でベッドの上で寝てるんだ!?)
「……君は?」
このままでは、何も進展はしない。
そう思って、少年はベッドの横で必死に叫んでいる少女に疑問を投げかけた。
「……ふぇ? ま、おう、さま? ま、魔王様がお目覚めになれたの―!!」
しかし、そう言うだけ言って少年が寝ているベッドのそばにいた少女は、部屋の外へと走っていった。
「ユリウス様っ! 魔王様が! 魔王様が起きたのですよ!」
「落ち着きなさい、カヤ。魔王様が目覚めるまでは、まだ時間があると言っているのにあなたは――」
しばらくすると、走っていった少女――カヤが、白髪で、角をはやしているイケメン――ユリウスを連れてくる。よく見てみると、二人とも尻尾もある。
いや、ユリウスが連れてきていると言った方が正しいのだろうか。今はカヤに引っ張られている。
そうして部屋の扉に二人は入ってきた。
その瞬間、少年の方をユリウスが見ると、はっと目を見張り少年の方へ走って近づいた。
その様子に、少年は驚きながらも、
「ま、魔王様、なのですか? い、いえ……間違えようがありません。そのご尊顔に、この神々しい魔力、溢れるオーラ。紛れもなくこの世界の覇王となるお方のものです!」
「そうでしょう!? ユリウス様! 紛れもなく魔王様ですっ!」
「……は? いや、俺はそこらへんに転がってるような普通の高校生だけど……」
「おおお……魔王様の言っておられることが高次元過ぎて私には理解が出来ないのですが……。っとこうしてもいられない! すぐに儀式の準備を進めますので、魔王様は今少し、ここでお待ちください」
と、ユリウスは自分が言いたいことを言うだけ言って、カヤのように急いで部屋から出ていく。
何故か、自分の目をしっかりと見つめられながら、お前は魔王だと言われた少年は戸惑いながらも、何故か身体がこの状況を受け入れているのを感じて、考えることを止めた。
少年が、この状況に戸惑っている間にもカヤが少年に話しかけてくる。
「魔王様っ! 私は、千年前にはまだ生まれていなかったのですが、おとぎ話や長老に話は聞いてます! ぜひとも私に魔王様の経験を教えてほしいです!」
「…………」
曇りひとつない晴れやかな表情で、少年に向かってそう話されるが、少年は何が何だか分からない。
一応、自分が魔王と認識されているのは分かるのだが、ただそれだけだ。
そもそも少年の中の魔王というのは、ファンタジーやRPG上の空想上のキャラクター。
魔物や魔族を統括するという、一般認識上の知識しかないのだ。
それなのに、魔王と自分が慕われているような状況は、大掛かりなドッキリでも仕掛けられているのではないかと思うほど、意味が分からなかった。
答えようのない、カヤの質問に、少年は黙りこくっていると、カヤの方から活発に話しかけてくる。
「ふぅむ、なるほど……。未熟な私に話すには少々刺激が強すぎると言うことですね! わざわざ私なんかの心配をしてくれるなんて、やっぱり魔王様は優しいんですね! わかりました! 魔王様のお話は儀式の後にゆっくりと聞かせてもらいますのでっ」
そしてさっきから、少年の頭の中でグルグルと疑問の渦を巻いている単語。
儀式。
自分の意識が覚醒してから、ユリウスというイケメン(爆)がそのようなことを催すと言っていたのだが、それの意味も少年には理解できなかった。
つまりはというと、少年は何もわからないのだ。
なので、少年はダメもとでカヤにいろいろと聞いてみることにした。
「……あー、というか、その儀式って言うのは何ですか?」
「おーっ! やっとまともに話してくれました! 無口でかっこいい魔王様だと思っていたのですが……敬語系も全然ありですねっ」
最後の方の言葉が小さくてわからなかったのだが、それを気にすることもなく、カヤは話し続ける。
「儀式って言うのは――はっ!? なるほど……そういうことでしたか。なら魔王様がこの状況が意味不明なのも分からんでもないです。私がアホだったんですね。アホ過ぎました。とりあえず、儀式が始まってからでよろしいでしょうか? というか、儀式が終わったら何もかも思い出すと思います」
「…………」
何やら少年の質問に独り言をブツブツとつぶやくカヤ。
少年には、今現在説明できないということと、儀式が終わったら儀式の意味も分かると言うことだけだった。
そんなことを言っているなら早く儀式を、と思ったが、そんなに早くできるものでもないらしい。
とりあえず少年は、カヤの一方的な話に相槌を打っていると、一時間後くらいだろうか。
ユリウスが部屋に入ってきた。
「魔王様! 儀式の準備が出来ましたので、王座の間へお越しください!」




