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私の為に死んでくれますか


「カシャ様」

「離れてどこへ行くというんだ。僕が枷を嵌められてない虜囚だと言ったのはおまえのほうだろう」 

 アスランは僕をじっと見つめたまま黙っている。初めて会ったときにそう言われた。もう四年ほど前になる。彼はそれに対する返答をどう言葉にしようか迷っているような顔つきで僕をみた。

「なにか、あったんだな。そうなんだろ?」 

 命が狙われるのはいつものことだ。

 宮殿のなかにさえいれば安全なのはわかっている。

 何故なら、王家の持ち物である魔の森にはただびとは入れない。もしも入り込んだとしても魔物がいるので喰われてしまうこともある。しかも宮殿にはアスランの施した結界があって外界との接触は限られている。手の出しようがない。

でも話し相手もなくすることもないのに宮殿にずっとひとりでいられるものじゃない。だからたまにこうして森へと出る。危険は承知のうえだ。

 ところが今日は刺客の数も多くて、しかも念入りなことに毒矢まで用意されていたのだ。今日こそ本当に僕は死んでしまうかもしれないと思った。十四年間の、不毛な一生が終わるのかと思ったのだ。

「アスランのその恰好といい、何かいつもと違うのは僕にだってわかる」

 ようやくにして、観念したらしくアスランが口をひらいた。

「城では、あなたはもう亡き者となっているのですよ」

 なるほど。

 それなら、わかる。

「……早手回しだね、パライオロゴス家は」 

さすがに何か言いたそうな顔をした。べつに、意地悪したつもりはない。

「アスラン、僕といては、まずいんじゃないの?」

「どういう意味ですか」

「それとも僕の遺体を確認にきたのか?」

 アスランが息を詰めた。それから絞り出すような声で、

「……なにを言ってるのか分かってますか?」

と尋ねた。凄味を増したアスランに、僕はちょっと怖くなって後込みした。

「あなたは、私があなたを殺しにきたと思ってるんですか」

「思ってないけど……」

 そうは思っていない。おもっていないけれど言わずにはいられなかった。

「でも、そもそもこれは、おまえを王位につけようっていう陰謀なわけだろ?」

「それで?」

「だから、僕が死ななきゃおまえは王になれないわけだし」

「それで?」

 それでとくりかえされて僕はうろたえた。すると、アスランがたたみかけるように。

「それだからなんなんですか。確かに第一王位継承者であるあなたが死なない限り、誰も王位にはつけませんけれどね」

「そうだよね」

そう口にした僕の腕を、アスランが乱暴につかんだ。

「何だよ!」

 こいつ、僕より年が四つばかり上だと思って、しかも上背も力もあるからって、僕をいいように扱い過ぎる!

「カシャ・エリア・バアル王子殿下、私の為に死んでくれますか?」

 な……んだって?

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