周極星
いつも、私はそう。
楽しそうに笑っている彼の周りを回っているだけ。
何人かの友達と一緒に、高校生活を楽しんでいるだけ。
そう思っていた。
卒業式、私たちが高校生として制服を着る最後の日。
いつものように、彼と一緒にいると、ごめんと言われ、急に腕を持っていかれた。
どこへ連れて行くの、と聞いても、彼は部室だよと答えるだけ。
確かに、連れてこられたのは部室だった。
でも、私たちがいた部室じゃなくて、天文部が使っているプラネタリウム室だ。
「周極星、って随分前に言っていたよね」
1年生の頃、理科の授業で聞いた言葉だ。
「髄分前の話よ。あなたが極星で、私が周極星だって。なんとなく思っただけ」
「周極星ってさ、ずっと沈まない星だっていうことも知ってるよな」
それも授業で聞いた話だ。
「じゃあさ、こんな風に思えることもできるんじゃないか」
壁際に貼られたひときわ大きな天体写真。
北極星とその周りの星だ。
下には、露光1時間という文字と、薄くなっている撮影年月日。
「ずっと見つめ続けることができる関係だって。逃げも隠れも、そんなことはなくて、ずっと一緒に居られる関係だってさ」
何が言いたいのかいまいちピンとこないが、急に解った。
「君のことが、好きなんだ。僕らは周極星の関係かもしれない。でも、連星みたいに、ずっと離れることなく、寄り添えるんじゃないかな」
考えてもみなかった言葉、どう反応していいかわからない。
頭の中を探しても、それでも返事は一つしかなかった。
「はい、喜んで」
答えはそれ以外に浮かばなかった。