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第1章⑴

 ガラガラガラと音を起てながらキャリーバッグを路上で引く和也はスマートフォンを片手にビルに囲まれた街を歩いていた。

 大きな道路はいろいろな車種の車が走り、その脇の歩道には和也の地元では考えられないくらいの歩行者がいる。

 安元から後日送らてきた資料の中の下宿先の寮?の住所をスマートフォンのマップアプリに登録し、それを頼りに人波の中を慣れない足取りで歩いている。


「も、もう近くまでは来てると思うんだけどな」


 ボソッと独り言を呟き、スマートフォンの画面を見る。


 〜〜♪

 和也が画面を見て間も無く着信音が鳴り響き、画面には知らない番号が表示されていた。

 通話をタップしてからスマホを耳に当てる。


「あ、もしもし、(ワタクシ)株式会社 エイジプロダクションの立花と申します」


 受話器越しから流れてくる若い女性の声。

 和也は「株式会社 エイジプロダクション」という名前に聞き覚えはなかったし間違い電話か無作為に掛けられた訪問販売の電話かと思ったが間違い電話の可能性の方が高いだろうと電話の相手に間違い電話ではないかと伝えることにした。


「あの〜、電話を掛ける相手を間違っていませんか?」


「えっ?こちらの御電話番号は進藤和也様の番号ではありませんでしたか?」


「……はい。間違いありません。確かに僕が進藤和也ですけど」


 間違い電話ではないらしいが、でも和也にはやはり電話の相手が誰なのか?なぜ自分の名前と携帯番号を知っているのか?が分からなかった。

 和也がいろいろと考えて黙っていると電話の向こうの相手の立花さんが「あ、良かった。進藤くん。今、どの辺りかな?」とホッとした声音になると同時に話し方が少し近くなる。

 その発言がより和也を混乱させた。電話の向こうにいる立花さんも受話器越しから和也の戸惑いを感じたのか。


「あの、もしかしたらなんだけど、進藤くん。あなた何も聞いてないの?」


「あ、えっと、はい?正直、これがなんの電話なのかも分からないんです」


 混乱している和也は立花さんから切り出してもらい、正直に彼女に聞くことが出来た。

「そうだったんだね。」と言うと小さなため息が和也の耳に流れてきた。


「進藤くん。説明は会った時に話します。とりあえず現在地を教えてくれるかな?」


「げ、現在地ですか?現在地現在地」


 和也はこの街に土地勘がなく現在地を教えてくれと急に言われても何処にいると言いきれなかった。

 立花さんはすぐに「ごめんなさい。まだ街に慣れてないもんね。まわりを見て目に付いた建物とか、お店はないかな?」と聞き方を変える。


 和也はまわりをザーッと見渡して、オシャレなカフェを見つける。


「凄くオシャレなカフェがあります」


 立花さんにお店の特徴と名前を教えると「わかったわ。少しだけそこで待っていてくれる?」と言い通話を切られる。

 和也は言われた通りに目印として伝えたカフェの前で待つことにする。


「それにしても、人が多いなぁ。」


 目を閉じて数時間前までいた地元の風景を思い出した。

 凄く自然が多い場所という訳ではない地元だったが今いる場所から比べれば、落ち着いた場所であったと間違いなく言えるだろう。


「普通に入試を受けてもし合格してれば、タケちゃんと一緒に学校に通っていたんだろうな」


 あったかもしれないそんなもしもの光景を脳内で思い浮かべていると


「進藤くん。……進藤くん!!」


 パッと目を開けるとスーツを着た美人が目の前に立っていた。

「大丈夫?」とどこか心配した表情をしていた。

 和也はすぐに目の前に立つのが立花さんだと気がついた。


「はい。大丈夫です」


 和也は思わずピシッと直立になり立花さんと向き合う。

 そんな和也を見て一度目を丸くしたがすぐに笑みを作ると「お待たせしちゃって、ごめんなさいね。ここから車で目的地まで行きましょう」と言い、和也の持っていたキャリーバッグを代わりに持つと目の前に停車するアルファードの後部座席にキャリーバッグを入れてから和也に向かって声をかける。


「進藤くん。早く乗って」


 和也は「はい!!」と短く返事をしてから急いで助手席に乗り込むとそれを確認した立花さんは運転席へと乗り込む。


 それから立花さんの運転する車で十分くらい走った先にある雑居ビルの地下駐車場に入り、アルファードを駐車した。

「到着」と言いながらシートベルトを外して立花さんは運転席を降りたのを和也は確認してから自分も車を降りる。


 立花さんが後部座席に入れた和也の荷物を取り出していたので「すいません。ありがとうございました」と言い和也は降ろしてくれた荷物を受け取る。

 立花さんは首を横に振ると「じゃあ、行きましょうか」と言って、地下駐車場を歩き出す。

車を止めた近くにビルに上がるためのエレベーターが備え付けられており、二人はそれに乗り込む。

 エレベーターで向かう先の階のボタンを押し、エレベーターが動き出す。


そんなエレベーターに乗りながら和也はなぜ自分がここにいる意味を考えていた。


 寮に向かっていたはずの自分はどこにいるのか?

 これから向かう先が学校から指定された寮なのか?

 それと目の前に立つキッチリしたやり手の美人キャリアウーマンは何者なのか?

 


 いろいろな考えが頭の中をグルグルと回り、急に恐くなって膝が少しだけ揺れるのを感じた。


 ひょっとして、騙されてしまったんではないのか?


「あ、あの〜。どこにむかっ」


「着いたよ」


 和也が立花に言いかけた時、動いていたエレベーターは止まり扉が開いた。


 エレベーターの扉の先には「株式会社 エイジプロダクション」と壁に会社ロゴが描かれていた。

 どうやら本当の会社のようだが、和也は依然として不安が消えてはいなかった。

 エレベーターを降りて、会社ロゴ入りの壁を横切り奥に進んでいく。

 奥に進むといかにも会社のオフィスという感じに机とパソコンが並べられていた。

 そんなオフィスの脇に扉があり、立花さんはそちらの部屋にむかう。


「進藤くん。こちらへ、どうぞ」


 立花さんに言われ、和也は部屋に入る。

 部屋にはソファーの間にテーブルが設けられた部屋。

 和也はチラッと見た時、「応接室」と扉に書かれていた。


「楽にしてて」


 立花さんは和也にそう告げると部屋を一度出た。

 和也は彼女が去った部屋のソファーに端に座っていた。


「どうして、俺はこんなところに……」


 さっきまで頭の中で考えていた自分が置かれている状況とそれに伴う不安が一人になったことでつい口から溢れた。


 なんかさっきは場の空気とか流れで車に乗り込んでしまい。

 こんな場所までホイホイとついて来てしまったが本来は知らない人にはついて行かないようにするって小さい頃に教えられたじゃないか!?

 もし危ない組織に拉致されたのだとしたら今なら一人になったことだし逃げられる。


 でもあの女の人はそんなに悪い人には見えなかったし、いや、でも悪い人が最初から悪い感じで会いに来るはずが……。


「やっぱり、逃げっ」


  ガチャッ‼︎

 その部屋から逃げ出そうと立ち上がると部屋の出入り口の扉が開いた。



「……君は」


冒頭投稿から数ヶ月も掛かってしまいました。

読んでくれている人はまだいないと思いますがひっそりと頑張っていきます。

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