「組曲・三つの黒ミサ曲」組曲の主題より組み立てた、たわいもない遊戯曲 ムール貝の密葬
1.
ある日、男は酒場で
やばい娘に惚れちまった
まるで骨と皮だけの
みすぼらしい黒衣のグリンゴに
その女は嵐の晩に、
死者のバンドネオンの音色に合わせ、
ボカの墓場でイタリア人の骨と踊る
女に罪深い恋の呪いをかけられ、
男は日に日に痩せ衰えていく
おお、お優しい神の忠告など
届きゃしない
***********************
ルンファンドと死んだ言葉で愛を交わし
男は棺桶にまで埋葬される!!
ああ、男と女はいつだって呪いあう
何がお望みなのかすら
もうわからないクセに
ああ、なんてことだ!!
光もささないこんな場所には
主の祈りも届きはしない!!
魔術と酔いどれと葉巻の煙が、
おぞましい甲虫とタンゴを踊る場所なのだ
***********************
2.
男と女の呪いにかけられ、
女に貢ぎ続け
男はついにある日、力つき死んだ
女は楽し気に笑い、
墓場でタンゴを踊る
昔、自分が誰かに微笑んでいた事なんて、
もう忘れた
ああ、誰もが悲しいものだ!!
男も、男の母親も、
呪いと邪悪しか知らないグリンゴの女でさえも!!
***********************
さぁ、踊ろう!!
囚人のジレンマのタンゴ
その女は、その骨すら魅力的!!
ある意味では誰もが情熱のやり場がなく
大人気ない夜の寂しがり屋
女よ、本当はわかっていたのだろう?
おまえですら愛を探し求めていたのだ!!
神と人の愛し方を、
誰もおまえに教えてくれなかっただけで
***********************
***********************
会計士達はムール貝を密葬する
秘密裏に、そして厳粛に
なんて稚拙な!!
結局は墓穴で虫に喰いつくされるだけだ
それでも、なんてことだ!!
魔女も聖者も侠客も子供も
結局の所、それを見つけられぬのだ
つまり、埋葬された虚しさだけが
真理なのだ
憎悪も善意も効かぬ真理なのだ
***********************
***********************
だが、我々はそれでもいいと夢見る
だってここは、よごれた俗世だから
俗にまみれた愚か者どもの演劇だから
やがて誰もが主の前に倒れ
土の中で虫共に喰いつくされ
体は朽ち果て、髪は抜け落ち、
本当の美しさを手に入れるのだろう
***********************