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討伐騎士マリーちゃん  作者: 緒丹治矩
マリーランス
193/221

189話

また更新日時がずれてしまいました。申し訳ありません。

またとても長くなってしまいましたので、説明回と言ったこの話は前後編にに別けさせて頂きました。



「マルコさんってば、おっさんと一緒に聖公国に行くんじゃなかったの?」


 名前が出たので即座に訊いてみると、何故か顔が赤くなったマルコさんの態度にツピーンと閃く。

 も、もしかして、世に言う寿退職ってヤツですか!?


「実は、その、色々と上手く行ってしまいまして……」

「それって例の告白が成功したって事!?」

「いやお前ら、俺の前でそう言う話をするなよ」

「だったらおっさんは黙っててよ。今女子トークの真っ最中なんだからさ!」

「オイオイ」


 身を乗り出して押し捲り、チャチャをいれて来たおっさんを退ける。

 あのお堅いマルコさんが勇気を出して恋を成就させた話となれば、是非とも聞いてみたいもんね。

 多少の惚気なら黙って聞いてあげるから、マルコさん、さっさとお話プリーズ!


「バルリエ卿は色々ありまして暫くは協会を離れなくなってしまったのです。そこで私も部隊に残ろうとは思ったのですが、リーゼロッテ様が仰るには今の内


に協会を離れて別の実績を作れば将来的に騎士爵位もあり、更に彼の側にも居られると言われまして……」


 ぬう?

 折角期待したのに、赤い顔で話すマルコさんの話は内容が大分違ってガックリ。

 ちょっと溜め息。

 まあマルコさんは衆人環視の中でコイバナとか出来るタイプじゃないから仕方が無いのかな。

 恋愛絡みは後のお楽しみと言う事で、取り敢えずは納得しておくか。


「と言う事はサラと会ったんだね。ところでその別の実績って何?」

 

 仕方が無いので、頭を切り替えて別の事を訊いてみる。

 マルコさんの話振りだと既にサラ本人と会ってるみたいだし、言ってる事も腹黒さんなアイツの言いそうな話だ。

 これはひょっとするとサラのヤツ、ランスまで来たんじゃないのかな?


「今のマリーランスの軍権を持たせるなら、実質旅団を指揮してたマルコに優るヤツはいねえ。既にギャロワと組んで同盟の軍事に関する枠組み作りもやってるしな。だからお前の騎士紋が必要なんだよ」

「同盟の軍務卿補佐って所? 大出世だねぇ」


 サラの居所の件はともかくとして、マルコさんの代わりに答えたおっさんの言葉に納得。

 直接繋がりを持ったマルコさんがランスの軍権を持つトップになれば、サラの仕事はマジで捗る。

 どうせアイツの推挙なんだろうし、相変わらずお腹の中がお黒い様で何よりだ。


「ま、コイツの言い訳だけどな。実際は協会を抜けられなくなった俺の代わりって所さ。ついでにそう言う立場なら、何時も一緒にいられるだろう?」


 うわっ、おっさんのヤツ惚気かよ!

 城塞都市軍務のトップが、駐留する討伐士協会の支局長と一心同体なのは喜ばしい事だとは言え、それを堂々と口にするか?

 マルコさんは真っ赤になってキョドってるし、リア充宣言ならワタシの居ない所でやって欲しいわ、全く!


「で、おっさんが協会を抜けられなくなった理由ってナニ?」

「ああ。ランスで南部連合関係者の秘密会議があった後、アクス-マルスに向かったグランツのじい様が行方不明になっちまってな」

「え、何ソレ……?」


 しかしジト目で睨んで話題を差し替えてやると、おっさんの口から驚愕するお話が!


「総裁殿下が行方不明って、それじゃ今の討伐士協会はどうなってるの!?」

「副総裁のデュバルが総裁代行を宣言しましたが、それを認めない総本部や第二軍と対立する形になっております。第三は第一に追従、第四は様子見ですな」

「総裁殿下の勅命でリプロン以外の南部連合地域の纏め役にされちまってた俺なんか、今じゃ事実上の第五軍司令サマだぞ。やんなっちまう」

「後見役が突然消えた今の南部連合はオストマークの独壇場ですよ」


 うはぁ。

 ビックリして訊いてみれば、御三方がそれぞれ頭の痛い話をし始めてゲッソリ。

 これが今日の話の本題なんだろうなとは思いつつ、流石にこれじゃ収拾が付かない。


「えっと、先ずは討伐士協会の話を聞きたいんだけど……」

「本当だったら正式な総裁の代理権を持ってたハイマン卿が纏めりゃイイんだが、お前にヤられちまって謹慎中だから余計に混乱しててな」

「同じく謹慎中のシュペングラー様は、総裁殿下のお墨付きが出されたひぃ様を担ぎ出したい御意向の様ですよ?」

「しかしデュバルは姫様を総裁殿下殺害の重要参考人として指名手配しましたから、混乱に拍車が掛かっておりまして」

「お姉さまの首に掛かった賞金は二百万ジュール(約一億円)だそうです。魔龍より安いなんて馬鹿にしてますよね!」

「西聖王国王宮も姫様の官位官職を凍結し、デュバル同様に身柄の引渡しを要求しております。先ずは突っ撥ねておきましたが」


 でも一旦話を止めようと声を出したら、さっきおっさんが「自由に話そう」とか言ってたせいか、逆にレティやアリーまで参加して来ちゃって更に収拾が付かない状態に!

 なんだかなー。

 南部連合運動が混乱しちゃったせいで、皆ストレスが溜まってるのかな?


「はい全員ちょっと黙って!」


 仕方無くバンバンと机を叩いて一旦全員を黙らせ、グルッと首を回して参加者全員を睨み付ける。


「今までの話で大体の事は判ったよ。でも一辺に話されても困るから、こっちから個別に質問させて貰う形で良い?」


 全員が肯いたのを見ながら頭の中を整理する。

 デュバルとやらがこうもダッシュで動いてると言う事は、どうやら総裁殿下の件はソイツの仕込みで、御本人の復活はもう望み薄なんだろう。

 あのとんでもない人外サンをどうやって葬り去ったのかは判らねど、ソレはもう決定事項として考えざるを得ないようだ。

 そしてデュバルと三バカ公爵は誘いを蹴ったワタシにその罪を擦り付けて来やがったと言う事だね。


「はぁ」


 どうしてこうも世は腹黒な連中ばかりなんだろうと溜め息。

 こう言う背景があるのなら、サラが用意してくれた新しい名前の件は正しく納得の一言だ。

 シルバニアの貴族なら、各国政府と配下の貴族共は当然として、討伐士協会も手が出し難いからね。

(シルバニアには討伐士協会の支部がほぼ無いから影響力は無いに等しい)

 となると最初の話は……。


「おじ様。もしかして都市同盟を組んだ最大の理由って外国勢力の軍事的な圧力のせい?」

「流石は姫様。確かに言われる通りですな。例の死神騎士の一件が世に暴露された結果、シルバニアと公国と東聖王国が連名で国交断絶を宣言しまして、三国から調査団と言う名の軍隊が事件の震源地であるランスに派遣される予定となっております」


 浮かんだ疑問をマチアスおじ様に振ると、ドンピシャな答えが返って来て肯く。

 例えそれがサラの手配りであっても、ワタシがシルバニアの国籍を使う事を女王陛下が知らない筈は無い。

 ならばコレを使わせる具体的な理由は「ワタシを獲った」と言う示威か、もしくは「直接的に護る必要が出て来た」かのどちらかだろうと思ったんだけど、どうやら後者の方だったみたいだ。

 それならもうただ肯く事しか出来無いわ。

 ただ単に討伐士協会の指名手配から護ると言うだけなら、もっと簡単な方法が幾らでもある。

 でも国際的な政治環境がそこまで激変した以上、ある程度安定するまでは何処でも様々な意味で秩序が崩れちゃうからね。

 特にほぼ当事者である都市連合域内に於いてはそうなるだろう。

 そんな状況の中を自由に動けば、こちらに手を出そうとする奴らはかなり大胆になるし、その方法も手段を問わない形に成り易い。

 ベアトリス陛下がワタシを守ろうとする理由は未だに判らないけれど、免罪符どころか玉璽まで貸与した経過を考えれば、サラの案に同意した事は肯ける。


「遂に各国は西聖王国から実力で南部を切り離そうとして来たワケだね」

「左様ですな。それに今の三国に都市連合の霊峰騎士団が加わる多国籍軍の戦力は、筆頭となるシルバニアの銀光騎士団二個連隊を含めておよそ五個騎士連隊となりますから、何時でも西聖王国中部に斬り込める兵力とも言えましょう」

「西聖王国の崩壊を睨んでの長逗留って所かぁ。それなら都市同盟を作ったのも肯けるわ」


 更に訊けば、多国籍軍とやらの凄い兵力にゲンナリ。

 そんなのが駐留するのなら、そりゃ足元はガッチリと固めないと不味いわな。

 だって各国軍隊が騎士連隊規模で駐留して各個に地場固めをしちゃったら、今の政治的に不安定な南部では軍事的に何もしなくても勝手にテリトリーが出来てしまうからね。

 各町村が「寄らば大樹の影」とばかりに庇護を求めて走り出せば、それこそあっと言う間に南部連合域内は各国の飛び地だらけになっちゃう。

 でも今の自分が最もが気にしなきゃいけないのはそんな話じゃない。


「都市連合が後から多国籍軍に参加するのは状況をコントロールする為?」

「仰る通りです。秘密会議の席上で突然に都市連合と南部連合を合併して新たな国家を創りたいと宣言し、デクスとロワトフェルドがそれに追従した事で一気にイニシアティブを握ったカスパー・オストマークはその場で様々な要求を各国に飲ませました。その内の一つが多国籍軍の総合指揮権です」


 うわぁ。

 今の南部連合がオストマークの独壇場と言った、さっきの閣下の言葉の裏はソレかぁ。

 そんな中で総裁殿下が消えたら、そりゃ独壇場と言うより独裁に近い事だって出来ちゃうかも知れないわ。

 そっと心の中だけで溜め息。

 アーベルさんから印章指輪を貰ってるワタシが最も気になるのはこのオストマークの動きだと言うのに、この状態はちょっとキツい。

 もし公式な呼び出しでもされたら、ししょーへの義理もあるから顔くらいは出さないと不味いしね。

 しかもこんな状況なら、それは今すぐにでも有り得そうな事だ。


「カスパーさんは思った以上に走ってるんだねぇ。でもそうなるとワタシが不在なのは不味くない?」

「それが……何故かカスパーは会議で姫様を散々持ち上げた挙句に『討伐従騎士なら修行で各地を放浪するのは当たり前であり、常時不在は当然である』と言い放ち、年少である事も理由にデラージュ殿を事実上の『同盟』の代表としてしまったのです」

「ほえ? それはワタシを放置するって事?」

「はい。しかも『マリア殿がランスを魔龍から救った英雄的行為を称えてマリーランスと改名し、連合国家の象徴としたい』とまで言った上に、多国籍軍の駐留も理由にしてランス城塞の拡大事業まで提案し、全て承認させました」

「マ、マリーランスとか言う謎な名前の理由はソレですか……」


 超ゲッソリしておじ様を見ると、向こうも両掌を上に向けてお手上げムードだ。

 何だか本当に一気に疲れちゃった気がするわ。

 とは言え、カスパー・オストマークの真意は何なのだろう?

 呼び出す積りも取り込む積りも無い様だし、かなりの謎だと思う。


「失礼。恐らくですが、カスパーは私達が姫様を傀儡の長とした事を逆手に取って、南部地域における総責任者に祭り上げる魂胆だと思われます。さすればあ奴の計画が失敗に終わっても責任を擦り付けられますからな」

「そうだろうねぇ。まあもう実在しない人物なんだからどうでもイイけどさ。閣下もマリア・コーニスを上手く使ってよ」


 疑問と共に腕を組んだら、手を上げた閣下の話に取り敢えず納得。

 もっと深い何かがある様な気はするものの、ここはその辺が落とし所と考えて、閣下にも自由にしてくれと許可を出しておく。

 どっちにしろ、これからのワタシはマリア・ヘドストレムなんだから関係無いしねっ。



本日もこの辺で終わりにさせて頂きとう御座います。

読んで頂いた方、ありがとう御座いました。


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