183話
新年の挨拶が無かった事に気が付きましたので、まだ松の内である事を良い事にご挨拶させて頂きます。
開けましておめでとう御座います。今年も宜しくお願い致します。
さて本題ですが、実は今回を含めて後二話で終わらせようと思っておりました過去編がとても長くなってしまいまして、もしかしたら更に一話追加になってしまうかも知れません。
本当は早く次の話に行きたいのですが、もしそうなってしまいましたらゴメンなさいと今の内に謝らせて頂きたく思います。
「それではアン、僕はちょっと行ってくるよ」
「吉報をお持ちしております、フィル兄さま」
卒業式も無事終了し、そのまま学院の食堂でお茶や軽食を楽しむ流れになった参加者達と別れ、フィル兄さまは数人の卒業生達と別方向へ離れて行った。
いやー、ウマく行ってくれるとイイんだけど、幾らフィル兄さまでも男女の仲ってのは何が原因でこじれるか判らんって聞くし、ちょっと心配だ。
(自分だって女だけど、そう言うのってまだピンと来ないのですよ)
そうかと言ってワタシがしゃしゃり出ちゃったら余計に話がこじれちゃうのが確定なので、こっちはただ待っているしかないんだよね。
うーむ。
こう言う時に気のおけない友達の一人でもいれば様子を見てきてもらえると思うのに、残念ながらこっちは丸っきりの「ぼっち」だから、そんなの夢のまた夢だもんなぁ。
「姫様、お一人になられてお寂しいのですか?」
「あ、いえいえ。少し考えごとなどしておりましたもので……」
卒業式が終わって外に出たらすぐ、スパッと周りを囲んだ四名のお姉さま方の一人に話し掛けられて笑顔で答える。
この方々は本日の卒業生の方々で、同じく今日卒業されるフィル兄さまお取り巻きの連中がワタシに案内役として付けてくれたんだよね。
「まあ。やはり王宮は色々なお約束事が多くてお悩みも尽きないのでしょうねぇ」
「畏れ多い事を仰いますわね貴女。姫様も王族の御一人なのですから、宮廷儀礼などで煩わされることはありませんよ」
「そうですわ。あのブロイ様の一の姫様なのですもの、わたくし達の様な者とはそもそも住む世界が違う方なのですよ?」
「あら、わたくしは王太子妃となられる御準備は大変だろうと思って口にしたまでの事でしてよ」
「まあまあ。ここでわたくし達が諍いを起こしては姫様にご迷惑ですよ」
お、おおう。
ひと言口にしただけで、それが何十倍にもなって返って来るこのかしましさは苦手な人はダメなんだろうけれど、ワタシのようなぼっちの人間にとっては逆に羨ましいと言うか憧れと言うかって感じで、思わず溜め息が出そうになっちゃう。
イイよなぁ、こう言うの。
自分もフィル兄さまの婚約者にならなければ九月から高等学院に通う予定だったし、そうなってたらこんな風に友達とか出来たのかな。
(実を言えば入学許可はすでに貰っているのだ)
「ところでお姉さま方はご家族の方々とご一緒されなくてよろしいのですか?」
最初の自己紹介で聞いた通りならば、一人一人にコワそうな護衛が数人ずつ付いてるこの四名のお姉さま方は皆それぞれが高位貴族家のご令嬢サマだ。
案内役とは言われたものの、栄えあるご卒業の日にそんな人達を従者のように使っちゃってイイのだろうか。
ご家族の方々だって学院にいらっしゃってると思うんだけど……。
「わたくし達、誰に頼まれなくても本日はこのように過ごす予定でしたので、姫様にはお気になされないでくださいませ」
「実はわたくし達、昨日に姫様が来られると聞いてから、今日はこの様に過ごそうと心に決めておりましたのです」
「王太子殿下がいらっしゃって近来稀に見る華やかさと言われておりましたけれど、わたくし達女性陣には信奉する方が居られず、この三年間ずっと寂しい思いをして来たのですものねぇ」
「全くですわね。最後の卒業式くらいは姫様の様な御方と過ごさせて頂かないと鬱憤が溜まってしまいますわ」
はぁ。そんな理由があったんですか。
それぞれが口にする理由にちょっと疑問符が沸くけれど、何となく気持ちは通じてきた気がして肯く。
うーむ。こっちはてっきり将来の王妃に近付こうと狙ってたのかと思ったよ。
でもお姉さま方の口調からはそう言う雰囲気も感じないし、不思議だ。
大体、王太子でんかであられるフィル兄さまが通ってらしたと言うのに、高位貴族の子女である彼女達がそれを信奉しなかったというのはどう言うことなんだろう?
あわよくば王太子妃を狙おうとまでは考えなくとも、何かしらお近付きになろうとか思わなかったのかな。
少し疑問は残るものの、別に嫌な予感がするワケでもないので、取り敢えずこの場はこのままお世話になることにした。
改めて考えてみれば、将来の王太子妃とお近付きになるチャンスを貴族の家族が反対するワケも無いしね。
そんなことを考えながらきゃわきゃわとかしましいお姉さま達とお喋りしていると、すぐに目的の建物に着いた。
でも中に入ってビックリ。
高等学院の食堂ってどんなところかと思ってたら、そこは本の挿絵で見た高級かふぇっぽいところを大きくしたような感じで、自分が知ってる騎士達の食堂なんかとは全くの別世界だった。
見回せば大勢の人々でにぎわう大きな室内は明り取りの高窓以外にも沢山の証明に彩られ、王城内の小ホールもビックリって雰囲気だ。
さすがは貴族子弟が中心と言われる高等学院なだけはあるわ。
いやー、こんなところで毎回ご飯を食べるなんて、出自によっては気後れしちゃう人もいるんじゃないのかな。
何気無くそんなことを口にすると、お姉さま方のきゃわきゃわに火が付いた。
「こちらは貴族子弟専用ですので士族の方はいらっしゃらないのですよ」
「さすがに従者に当たる者達とお食事を御一緒には出来ませんものねぇ」
「士族の方々は別棟で学院の職員達などと同じ場所で食事をされますの」
「もっとも魔法課程の方々はまた別の場所なのですけれど」
「あちらは本物のエリートの方々ですものね」
「わたくし一応は魔法課程ですけれど、大きな違いはありませんわ。それに魔法が上手いと言うだけで、大した出自でもない有象無象と一緒にされる位ならこちらに居る方がずっと気が楽と言う物です」
「まあ。幾らギリギリの御成績だったとしても御学友の方々を悪く言う物ではありませんわ」
「貴女、良く他人の事が言えますわね?」
「まあまあ、皆様既に婚約者がいらっしゃるのですから宜しいではありませんか。賢しらな女など嫁に来られても旦那様が迷惑されるだけですわ」
ううーむ。
きゃわきゃわ度数が一気に跳ね上がったお姉さま方のお話を聞いてみれば、どうやら彼女達はみなご結婚が決まっているらしい。
学院での成績がちょっとアレっぽい雰囲気のお姉さまもいるみたいだけど、別に就職したり大学院に進んだりするワケじゃないから、そんなのどうだってイイんだろうね。
嫁ぎ先にとっては良い飾りになると言われる高等学院の卒業証書も過ぎたるはなんとやらって感じで、実情はそう言うことなんだろうなぁと思いつつ、サーブされたお茶を飲む。
「ところで姫様、随分と供物が集まってしまっているようですけれど、どうなさるお積りですか?」
へ!?
お互い将来の決まっている者同士と判ったことで、それっぽくもたわいの無い会話を弾ませていると一人のお姉さまが妙なことを言って来た。
言われて周囲を見回せば、何時の間にかワタシ達のテーブルの周りは色々なお菓子を持った人達で溢れてて、こっちの護衛を含めた十人を超える騎士さんや護衛の人達も対応に苦慮してる感じだ。
こ、これってなんなのでしょうか!?
「あのぉ。皆様、一体どうされたのでしょうか?」
驚いて声を上げると、先のお姉さまがウンザリした様子で片手を振った。
「わたくし達だけで姫様を独占しているのが気に入らなくて有象無象がしゃしゃり出て来たのですわ」
「まあまあ。皆様も御可愛らしい姫様とお近付きになりたいのですから、そんな悲しい事は仰らない方が」
「わたくし達もそれぞれ、姫様に召し上がって頂こうとお茶請けの様な物は用意しておりますの」
「しかしこうなってしまっては、恐れながら姫様から直接御言葉を頂かないと収まりがつかないかも知れませんね」
ええー! 何ソレ?
「だってついこの前まで、ワタシなど馬鹿と脳筋の代名詞みたいに言われてて、最悪のあだなが『猿』だったのですよ? ちょっと信じられないのですが」
思わず声を大にして言いたいことをそのまま言って溜め息。
幾ら何でも、王太子妃(仮)になった途端に猿扱いからこの大人気って逆に酷いと思うんだけど、そこんとこってどうなってるの?
ちなみに、猿と言うあだなの由来はワタシが日に焼け捲くってて真っ黒だからなんだそうだ。
まあ今だってファンデ塗り捲って肌色は誤魔化してるから言い得て妙って感じではあるものの……そんなこと言うヤツにはマジで全力パンチを食らわしたい気持ちになるのはしょうがないよね。
「わたくし達とてそのお話は存じ上げておりますが、所詮はブロイ様の敵が流した御話に過ぎないのですもの」
「姫様はお小さい頃から宮廷に出入りされておられましたから、良い攻撃材料にされてしまっていたのでしょう」
「全く馬鹿馬鹿しいお話ですけれど、某公爵様のような蝙蝠の如き者達にとっては正しくそうであったと聞いております」
「わたくし達もそうなのですが、王陛下とブロイ様が仲直りされたので、今まで利害関係から近寄れなかった方々もお近付きになりやすくなったのだと思われますよ?」
なーんてこったい!
お姉さま方のお話からすれば、どうやら若い貴族達の間ではワタシはそれほど嫌われては居なかったらしい。
それどころか、なんだかちょっと人気があるっぽいですよ?
全然知らなかったわ。
「本来、あの先王陛下の唯一人の姪御様であられる姫様はわたくし達若い女性にとっては憧れなのですわっ。その上、こんなに御可愛らしいのに数々の武勇伝までお持ちでいらっしゃるなんて、正しくわたくし達の世代のヒロインと申しても過言ではありません!」
「ぶ、ぶゆうでんですか……」
何か長年の精神的な疲れがいやされたような気分になってると、今まで仲裁役だったお淑やかそうなお姉さまがいきなりとんでもないことを言って来た。
「ええ、ええ! 何でも巷の噂では姫様は言い寄ってきた男性の騎士と真剣試合をなさったものの、あっと言う間にのしてしまわれたとか!」
「そうですわ! 他にもわたくしが聞いたお話では領地にお帰りになる際に出た山賊共を一人で全員再起不能にされてしまったとか……」
「ちょっとお待ちになって! わたくしは騎士の方は複数いらしたと聞いておりますのよ!?」
「その様な瑣末な事はどうでも良いのですっ。姫様におかれては相手の騎士など一人も二人も変わらないのですわ!」
うわぁ……。
ぶゆうでんの話になったら、きゃわきゃわどころか収拾のつかない感じになっちゃったお姉さま方にビックリ。
しかもその騎士の話、おそらく例の従兄弟君の話だよね?
山賊の話も多分、領地の街でランニング途中に絡まれたからボコボコにして衛士に突き出した不良少年グループの話だろうし、噂の尾ひれってコワいわぁ。
でも、自分がそんな風にちょっとした英雄みたいに扱われてるなんて本当に初めて聞いた話だ。
ちょっとニマッとしちゃうよな。
「ひ、姫様、申しありませんが……」
なんだかイイ気分になって心の中でニマニマしていると、お付の騎士の隊長さんが泣きを入れてきた。
おおっと。
そう言えばそっちの方が本題だったんだよね。
「皆様! お慕いいただけるのは嬉しいのでございますが、出来れば少しずつにしていただけますか? わたくしは出来るだけ多くの方と接したいので、どうかお願い致します!」
取り敢えず立ち上がって、なんだか黒山の人だかりになっちゃった周囲の人々に声を掛ける。
なんにせよ、ここでシカトしちゃって将来の王太子妃が人々に嫌われちゃうのはマズい。
しかも、もしお姉さま方のお話が本当であればワタシは元から人気者なのだ。
ここは一つファンサービスの精神で応対しなければ。
「ああー、姫様がこう仰られておりますので、どうか皆様、一列に御並びになって下さい!」
隊長さんが大きな声でワタシの補足をすると、さすがは皆様貴族の方々って感じで、あっと言う間に列になった人々の応対をニコニコ顔で務める。
「お初に御目もじ致します○○と申します。こちらのお菓子は西聖王国から取り寄せた物で御座いまして……」
「まあ○○様、わざわざその様な物を……」
「姫様、こちらはかの聖公国から職人を呼び寄せて作らせましたショコラケーキですの」
「それはまた貴重なものをありがとうございます」
うっひょー!
突然発生したファンサービスの集い、題して「美味しそうなお菓子を貰っちゃう会」は大盛況で、もう次から次へと色々な女の人がワタシにお菓子を捧げ持ってくる。
年配の方もたまにいらっしゃるけれど、ほとんどが制服を着たこの学校の女生徒さんだから、お姉さま方のおっしゃったことはどうやら間違いでは無いらしい。
いやー、自分にこんなに人気があるなんて思いもよらなかったわ。
しかもコレ、マジで後が楽しみだ。
さすがは貴族が通われる学校の生徒さん達だけあって、持ってくるブツが凄いんだよね。
今応対してる方なんて、聖公国名物の中でも超有名なあのチョコケーキだもんな。
もうルンルン気分で超盛り上がっちゃうわ!
とは言え、勿論盛り上がりすぎて貰った方の名前を忘れないように、頂いたお菓子の容器にはそれぞれのお名前を書いた付せんを貼り付けております。
だって後でお礼を言ったりする時にお相手の名前を忘れちゃうなんて、ヒロイン様のやることじゃ無いしねっ。
「まあっ、ショコラでしたこちらも負けませんわ! 姫様、これは遥々ガルーノから職人を呼び寄せて作らせました品で御座いますの」
おやおや。密かに心の中で盛り上がってたら、今の方とお姉さまの一人が言い争いになりそうな雰囲気ですよ。
ハイハイ、順番、順番を守ってくださいねー。
お姉さま方とは後でゆっくりお話できるんですから、今は我慢して下さいませ。
そんなことを言うと、お姉さまもチョコケーキの方もささっと離れてくれたのでホッとする。
でも二人共こっちにはお詫びめいたことを言って下さる割りに、お互いにらみ合っちゃってて後を引きそうな気配だ。
「今の方はわたくし達の様に姫様と御一緒出来無くて悔しいのですよ。その上で似た様な立場であるこのエティエンヌが選ばれているので、尚更なのでしょうね」
「当たり前ではありませんかっ。わたくしなど婚約者のキルシュを拝み倒して生徒会の阿呆……失礼、方々にこの役割を捻じ込んで貰いましたのに、何もせずに親の地位だけで選ばれると思い込む方がどうかしているのですわ!」
「まあ、そうでしたの。でもそれを言ってしまったらわたくしなどは生徒会のフラン様の弱み、いえ、御弱い所を握る将来の夫が談判をして下さったのですし……」
「あら。それでしたらわたくしなど、脳無しエミ……失礼、生徒会のエミール様に婚約者と二人で直談判した次第ですわ」
「まあまあ、皆様ったらそんな御努力をなさっておられたは思いませんでしたわ。オリヴィエ様の御推薦で選ばれたわたくしは果報者だったのですね」
そこはかとなく訝しげな目になると、仲裁役のお姉さまが理由を話してくれた。
しかしその後に続く他のお姉さま方のお話が結構コワい。
むうーん。
どうやらこのお姉さま方、ワタシと一緒するためにそれぞれ陰で色々とやっていたみたいですな。
約一名、聞いたことのある男性の名前(多分だけどね)も出て来てたし、なんだか凄いなと思う。
とは言え、こんな自分と一時ご一緒する為だけにそこまで頑張って頂けてたなんて聞けば、嬉しくならないはずが無い!
にゅっふふふ。
人気者は困っちゃうなぁって感じだ。
「お姉さま方はそのようなことまでされてこの場にいらっしゃるのですね。有難うございます」
「姫様はお気になさらないで下さい」
「所詮は学院生徒同士の駆引きで御座いますからね」
「単なる個人的な我がままなのですし……」
「でも皆様、姫様にこの様に仰って頂くと嬉しさもひとしおなのでは?」
並んでいる方々のお相手をする傍らで感謝っぽいことを言うと、お姉さま方がまた口々に色々な事を言い出して盛り上がり始めた。
ああ。何だかこう言うのって楽しいな。
女の子同士できゃわきゃわ言って盛り上がるのって、ワタシみたいなぼっちには有り得ない展開だし、まるで夢を見てるみたいだ。
しかしこう言った楽しい時間と言う物はえてして簡単に崩れ去るものらしい。
「アン、お前はなんと言う事をしてくれたのだ!」
突然入り口に現れて大声を上げたフィル兄さまに何事かと立ち上がれば、ワタシの側に居た騎士の隊長さんが慌ててそちらに向かった。
でもフィル兄さまは隊長さんを手で乱暴に追い払い、更に大きな声で怒鳴り上げてくる。
「お前が渡した菓子を毒見したエヴリーヌの侍女が倒れた! 幾らお前でも私達に毒を仕込むなど許される事では無いぞ!」
へっ?
何が起こっているのか全く判らずに固まっていると、大量の騎士っぽい人達が入り口からドッと入って来た。
ついでにフィル兄さまの後ろにぴったりと貼り付いてる美人系のお姉さんも見えたので、この女性が例のエヴリーヌさんかと思う。
でもそんなことはどうでも良い。
おそらく何かの誤解が原因なはずの、このフィル兄さまのお怒りを解く方が先だ。
「そ、そんな! 何かの間違いです!」
生まれて初めてフィル兄さまに怒気をぶつけられたせいか、めまいがして頭がフラフラする中で何とか口を開く。
すると即座にさっきの隊長さんがフォローに入ってくれた。
「お、お待ち下さい! 姫様も斯様に仰っておられますし、何かの御間違いでは!?」
「黙れ下郎!」
しかし怒髪天を突くと言った雰囲気のフィル兄さまは大声を上げて隊長さんを蹴り飛ばし、そのままズカズカと近づいて来た。
「間違いで人が死ぬ事など有り得ぬ! お前はやってはならぬ事をやったのだ!」
周囲の人達を蹴散らす様に三フィート(約0.9m)くらいまで近寄り、こちらを指差して怒鳴るフィル兄さまの怒気に当てられたワタシは目の前が真っ暗になった。
お姉さまの一人に何とか支えてもらったものの、そのお姉さまも何時の間にか近付いてた騎士のような人達に引っ張られ、ワタシから離されてしまう。
しかも、もう自分の足で立つことすら難しくなったところに思いっきり頬が引っ叩かれ、目の前を星が散って意識が遠のいた。
「王代理の我が名を持って仮の婚約は今この場で破棄し、お前を告訴する! 騎士達よ、この娘を捕らえよ!」
崩れ落ちて倒れるワタシの耳に、重大な宣告をするフィル兄さまの怒声だけが響いた。
本日もこの辺で終わりにさせて頂きとう御座います。
読んで頂いた方、有難う御座いました。