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163話

取り敢えず書けましたので、連続で更新してみました。



「にゃぁーん」


 再度可愛い声で鳴いた猫さんを試しにナデナデしてみる。

 ゴロゴロと喉を鳴らしながらスリスリして応える様子は、丸っきりワタシのペットか使い魔にしか見えない。

 思わず「さん」付けで呼んじゃうほどのヤバげな強者つわものなのに、こんなに人懐っこいなんて反則だ!

 とっても可愛い上に素晴しい毛皮のモフ感も相俟って、知らないコ相手なのに、ついほっこりとした気分になっちゃう。


 ちょっと困りましたな。


「じゃ、中と外で十匹ずつ警戒についてね」


 ともかく待機してるワンちゃん達に悪いので、先ずは目下の作戦を遂行するべく、さっきの指示を出しておく。

 そして「ガフガフッ!」と言う返事と共に散って行くワンちゃんズに、密かな目配りで「このコ知ってる?」と訊いてみた。

 でも案の定、即座に首を横に振られてガックリ。

 やっぱりワンちゃんもこのコの事は知らないらしい。

 仕方が無い。こうなったら本人に直接訊いてみるか。


「キミのお名前は何て言うの?」

「にゃんっ」


 ウン、さっぱり判んない!

 猫さんは質問に答えてくれたみたいなんだけど、そもそも猫語なんて判らんから聞いても判んないよね。

 この猫さんが持ってる魔法生物としては異様なまでの魔法力を考えたら、人語を喋る奇跡もあるかと思ったのに残念だ。

 ただし、どうやらこっちの言葉は理解してるっぽい。


「猫さんはワタシの事好きなの?」

「にぃやぁーん!」


 更なる質問をすれば「そうだよー」って感じに鳴いて、ついでにウンウンと肯いて見せた猫さんの態度で納得。

 やっぱりこっちの言葉は解るらしい。

 質問の内容はともかく、これは結構ヤバい話だ。

 何故なら「人語を解する人外は極端な化け物に限られるから」なんだよね。

(使い魔や精霊がある程度人語を解するのはあるじと繋がってるお陰)


「うぅーむ……」


 唸り声を上げてしばし沈思黙考。

 そのテの化け物と言えばドラゴンや悪魔が真っ先に思い浮かぶけれど、このコは多分それらに次いで有名な「精霊獣」って言う連中の仲間だと思う。

 半魔法生物で一般的な魔法生物とはケタ違いの存在力と魔法力を併せ持つ彼らは、元々が自我を持った精霊だと言われるだけに、随意に実体化したり消えたりする事が出来る。

 しかも彼らはそう言った強者であるが故に、滅多な事では人に懐いたりなんてしないし、それどころか敵対する事だってあるんだよね。


「にゃにゃん?」


 ワタシが考え込んでるのを不思議に思うのか、猫さんが妙な鳴き声を掛けて来た。

 オヒオヒ。そもそも不思議なのはこっちの話だよ。

 大体、精霊獣なんて滅多な事じゃ人前にも出て来ない。

 普通は馬鹿みたいな規模の召喚魔法陣を使っても呼びかける程度がせいぜいで、それでも応えてくれるかどうか判んないし、例え応えてくれたとしてもまず姿は現さないって聞く。

 魔法耐性が強いから隷属魔法もほとんど効かないし、結構難物なんだよね。


「あー、もうっ。実際に目の前で懐いてくれてるんだから、細かい事とか考えなくてもイイか!」


 何だかにゃーにゃー言い出して、煩くなっちゃった猫さんに呆れ、ワタシは深く考えるのを辞めた。

 女は度胸だ。

 例えこのコが敵に回っても、人間で例えればせいぜい黄色級の魔法力だし、何とかなるだろう。


「ヨーシ、じゃあちょっとモフらせてねぇ」


 構って構ってーって感じでスリスリしながらにゃーにゃーと訴える猫さんにモフります宣言を突きつけ、我慢をかなぐり捨てて一気に抱き付く。

 うわぁー、何コレ?

 猫って犬系とは全然違うんだねぇ。

 ダッシュで逃げられちゃう為に、今の今まで猫をモフった事など無いワタシにとって、この柔らかな毛並みは想像以上だ。

 特にお腹はヤバい。

 フワフワしていながらもまったりとした感触に目が潤みそうになっちゃうっ。

 抱きついた勢いで横倒しになった猫さんは、そのまま目を細めて受け入れてくれちゃうし、こうなったらトコトン行っちゃうのが正義だよねっ。












「おっといけない」


 思わぬ天国に一心不乱にモフモフしていると、何時の間にかちょっと意識が飛んでた様で、気が付いたら猫さんのお腹の上で寝てた。

 うむ。全くもって不覚であった。

 懐中時計で確認すると、どうやら五分程度の事だったみたいだけど、何だかバカ丸出しって感じで思わず苦笑。


「にゃん?」


 起きたの? って感じで鳴き声を掛けて来る猫さんにお礼を言って頭を撫でる。

 嬉しそうに目を細める猫さんが可愛いです、ハイ。


「しかし、この有り得ない懐きようの元ってなんなんだろう?」


 このコってプライドの高い精霊獣だよね?

 細かい事はもうイイやって投げちゃったけれど、その辺りはきちんとしておかないといけない気がする。

 特にこの猫さんが人間全部が好きなのか、それともワタシだけが好きなのか、その程度はハッキリさせないと色々と不味い。


 と言うワケで、早速実験に移ってみました。


「お耳ぃー」


 先ず猫が嫌がる耳をサワサワしてみると、猫さんは「いやーん」って感じに鳴いてモジモジするだけで、別段怒り出すような気配は無い。

 むうっ、謎だ。

 猫って嫌がる様な事をされれば、速攻で怒り出す生き物じゃなかったっけ?

 こうなったら次は猫が最も嫌がる尻尾を攻撃してみるしか無いと思い、ワタシはフリフリと動く尻尾をパッと捕まえた。


「にぃやぁーん」


 調子に乗って尻尾まで握っちゃったと言うのに、猫さんは更に可愛らしく鳴いて嫌がるだけだ。

 そして当然であるかの様に全くもって怒る様子が無い。

 ああ、ちょっと罪悪感……。

 猫さんが本気で嫌がってるのが伝わって来たワタシは、そっと尻尾を離した。


「ゴメンね」


 罪悪感から詫び言を言って頭を撫でると、猫さんは「気にしてないよー」って感じの態度で許してくれた。

 とても嬉しい。

 でも、これじゃ何の実験にもなってないよな。


「そこの後輩、ちょっとこっちに来てくれる?」


 ふと見回したら視界に入った三人組に声を掛けてみる。

 彼らにワタシと同じ事をさせれば、少なくともこのコが人間全体に懐っこいのか否かが判る筈だ。


「一体何の用なんだよ?」


 猫さんの迫力に押されて、恐る恐ると言った感じながらもアンジェがやって来たので、ちょっと猫さんの尻尾を触ってくれないかと頼む。


「はぁ? まあ別にイイけどよぉ」


 近付いても変わらない雰囲気の猫さんに安心したのか、フリフリと動くその尻尾にアンジェがそおっと触れた。


「GuGaaaaa!」

「ひぃぃぃっ!」


 うむ。何故か知らんがワタシ以外が尻尾に触ると、温厚な猫さんもキレるみたいだね。

 地獄から這い出た獣の様な恐ろしい声で吼えた猫さんに、ビビッたアンジェが素晴しい勢いでザザザッと後ろ向きに滑って行く。

 あんな体勢だってのに中々のスピードですな。

 将来有望で何より!


「か、勘弁してくれよセンパイ! マジでちょっとチビッちまったぜっ」


 一挙に数ヤードを稼ぎ、砦建物の壁に凭れ掛かる様にしてゼイゼイと息を切らすアンジェに笑う。

 しかし良く見れば、どうやらコトは笑えない悲劇的な状況であるようだ。

 カーキ色の膝で切られたズボンどころか、その前の地面にまでアレな染みが広がっちゃってますよ!

 幾らアンジェでも女の子だし、可愛そうなので早い内に指摘してあげよう。


「いやアンタ、チビるどころか全部行っちゃってない?」

「ゲッ!」


 ワタシの指摘に気が付いたアンジェは短い叫び声を上げると、思考加速魔法もビックリな早業で例のたらいがある砦建物の裏側へと消え去って行った。

 いやぁ、アイツってホントに面白いわ。

 もう爆笑って感じ。



今宵もこの辺迄で終わりにさせて頂きとう御座います。

読んで頂いた方、有難う御座いました。


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