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159話

土曜日に更新出来なくて申し訳ありませんでした。

GW絡みもあって、今週はそれなりになんとかなりそうですので、期待されている奇特なお方には何卒宜しくお願いしますと言った心持ちであります。



 ラウロ君とホールに戻ると、既に戻って来てた三人組やロベールさんも含めて、みんなで簡単な昼食をとった。

 最初は遠慮がちだった子供達も、ワタシが「気にせず食い捲くれ」と言ったらバンバン食べだして、当初用意した分じゃ足りなくて追加でレティに肉を焼かせたって言うオチまでつきましたよ。

 流石に食べ盛りの連中は違うわと思ったら、どうも食料が残り僅かで、彼らはかなり窮乏してたらしい。

 考えて見れば、一人暮らしの住処に食べ盛りの子供が五人も転がり込んだんだから、食料なんてあっと言う間に尽きちゃうのが当たり前なんだよね。聞けばデボラさんとやらが短期間でランスへの往復を言い出したのも、その辺が第一の理由だったそうだしさ。


 しかし……。


 声には出さず、心の中のみで呟きながら、ワタシは子供達の不遇を思った。

 だってこんな状況で食料まで無かったなんて、この子達がどんだけ追い詰められてたかってのは想像に難くないもんな。

 なんたってそもそも彼らは奴隷売買組織から逃げてるワケだから、食べ物が無いからって迂闊に外に出るわけにもいかないし、例えその恐怖を振り切って出たとしても、子供だから何処に助けを求めて良いのかも判らないんだよね。

 しかも奴隷にされた経緯(親に売られてるって事ね)を思えば、基本的に大多数の大人は頼りにならないどころか、敵だと考えるのが当たり前だから尚更だ。


 仮成人すら遠い年齢の子供達が、そんな状況で精神的に追い込まれない方がおかしいわ。


 年少三人組が治療の時に言ってた話を信じるなら、あの襲撃も本当はラウロ君がワタシ達と色々な交渉をする積りで、イザと言う時の為に隠れてたのに、ワタシ達の迫力(?)にビビった彼らが緊張感に負けて撃っちゃったって事らしいしさ。


 ヘタにマジな対応をしなくて、本当に良かったと思いました!(アンジェには色々やっちゃったけど)

 食後のお茶を飲みながら、イヤな事を頭の中から吐き出す様に溜め息を吐いて、隣に座るエレナちゃんの頭を撫でる。


「エヘヘ」って感じで撫でられるエレナちゃんが可愛いっ。


 思わず反対側に座るラウロ君の頭も撫でてニンマリ。

 この二人はほぼ間違い無く貴族だし、マジなお子様でもあるので、年少三人組とは別にして、基本的にワタシが担当する事にしたんだよね。

 なので、食事や睡眠時などの油断や隙が出来易い時は側に居る様に言ってあるから、今も両隣に座っているのですよ。

 決して可愛いモノを独り占めしたいからって事じゃないよ?


「しかしこうなりますと、デボラ殿の帰還が遅れている理由も察しはつきますね。現状のランスの行政機構はとてもこの様な事件に首を突っ込んでいる状況では無いでしょうし、討伐士協会に至ってはそれどころの騒ぎではありませんから」


 食事で使った食器を片付けに行ったレティが戻って来ると、座ったと同時に早速「大人の話」が始まった。

 まあ子供達の話も大方出揃ったし、そろそろ纏めに入ってイイ頃だよね。

 何しろ相手はお子様なんだから、連絡や報告なんて概念は無いし、とてもじゃないけど要点を纏めた話なんか出来るわけがない。無能役人がする報告の様に、後から新事実がホイホイ出て来るのが当たり前だ。

 だから食事中のリラックスした雰囲気の中、ワタシ達三人が揃って更なる話を訊き捲くってたってワケなのですよ。


「だろうね。ドバリー卿にでも顔が利けば別だけど、長年引き篭もってるヤツにそんな甲斐性は無いだろうしさ」


 子供達の前でガチな話は出来無いから、レティと同様に裏側満載な言葉で答えて、ワタシはワザとらしいウインクを追加した。

 思った通りとは言え、子供達の話にはやっぱり重要事が隠れてたんだもんね。

 食糧事情の話はそれだけ大きい事だし、しかもデボラさんとやらが出立に際してそれを理由の一つにしたって話は、聞き捨てならない要件と言ってイイ。

 何故なら、食糧事情の逼迫から急いでる筈の彼女が、近場のデントでは無く遠いランスに向かったって事だけで、その目的や背後関係ってのが浮かんで来ちゃうからだ。

 恐らくデボラさんとやらは、何処かの誰かが置いてる西聖王国の隠し要塞に対する消極的な監視役なのだろうと思う。

 本人の資質ってのもあるだろうけれど、幾ら元軍人とは言え、妙に戦場生活臭い毎日を送ってる理由もそれなら簡単に理解出来るもんな。

 ところが情けか同情か知らんけど、ついつい「見てるだけ」って立場を放棄しちゃって、子供達を助けちゃうなんて暴挙に出ちゃったから、さあ大変。デボラさんとやらはその対策の為、即座に誰かさんに御報告に行かなきゃならなくなったってのが、今までの密かなやり取りで確認し合ったワタシ達の見解なのですよ。

 ちなみにさっきのレティのセリフはその最終確認と「ランス代官筋が怪しい」って意味で、ワタシのマチアスおじ様云々ってのは「ワタシは討伐士協会上層部がクサいと思う」って意味だ。


「アッシがひとっ走りして探しに出てもイイんでやすが、何処で連中とぶつかるか予想がつきやせんからねぇ」

「解って言ってるんだと思うけど、ソレは悪手だよ。当面はデボラさんとやらを待ちながら、向こうの出方を探るって所じゃ無いかな」


 とまあ、推測はともかく、ロベールさんが「アッシは全く知りやせんが確認に走りやすか?」って意味の話で答えたので、期待通りに否定してから、もう一つの「向こうの出方を待ちやしょう」って意味の言葉に答える。

 デボラさんとやらが「やらかしちゃった」以上、敵は例え彼女の存在理由を知らなくても、必ず何らかの手を打って来る筈だからね。

 ワタシの態度にうんうんと肯くロベールさんにレティが同調したのを見て、これで具体的な対応は決定だ。

 後は何をしてその間を過ごすかって事だけど、どんな手を使ってくるか判らない相手に妙な罠を仕掛けるなんてのは悪手中の悪手なので、緊張感さえ失わなければ、ぶっちゃけ遊んでてもイイとは思う。


「まあ食料なんて、ワタシ一人が持ってる分だけでも計七人が十日は楽勝でイケるから気にしなくてイイよ」


 当面の対応の確認をすると、ワタシは子供達を安心させる為に食料の話をしながら、可愛い分を補給する為にラウロ君を再び撫でくり回した。


「本当ですか!?」「やったー!」「マジかよっ」


 するとそれを聞いた他の子供達も一斉に喜びの声を上げたので、うんうんと肯いてあげる。


「こんな事なら森で狩ったオークを少しは残しておくんでやしたね」

「オーク素体を捌くとか、返って面倒だからイイよ。此処でそんな事するくらいなら、ワタシが夜中にデントまでパシッた方が早いし」


 喜び余ったのか、すりすりと甘えて来たエレナちゃんも撫でながら、どうやら子供好きっぽいロベールさんが頭を掻きながら言った言葉を制して笑う。

 確かに森で大量に狩った戦利品は他も含めて、ロベールさんに頼んでG商会のデント村出店に全部卸しちゃったけど、獲物を食肉にする手間と時間を考えたら、全開で走れば多分二時間くらいでデントに着く、ワタシが走った方が早いんだから当たり前だよね。

 

「よ、夜中に走るって、本気で言ってるんですか?」


「まあお嬢サンの言う通りでやすね」って言いながら再度頭を掻いたロベールさんを見ながら笑ってると、ビックリした様な顔でラウロ君がこっちを見た。


「そりゃ本気だよ。夜なら道なんて誰も居ないから、ワタシが全開で突っ走っても誰にも迷惑掛けないでしょ?」

「信じらんない」「正気の沙汰じゃ無い」「すっげぇぇぇ!」


 アレ、なんでしょね、この反応は?


 ワタシが当然って感じで答えると、ラウロ君どころか、エレナちゃんまで含めた子供達が一斉にどよめいちゃって、ちょっとビックリ。

 見回せば何故か頭を抱えるウチの二人とは対照的に、呆気にとられた顔でこっちを凝視してる子供達の視線がとっても痛い。


 ううみゅ、解せぬ。


「お嬢様、通常であれば如何に歴戦の討伐騎士でも、単独で夜中に山道を走るなど自殺行為に等しいと思われるのですが」


 あっ! そう言えばそうだった!


 やれやれって感じの手振りで口を開いたレティにガックリ。

 なんだかなー。そんな常識、何時の間にか頭に無かったよ。ちょっとどころか大きな失敗だわ。


「ああ、うん。まあなんて言うか、例え話、例え話だよ! 討伐士ってこう言う場面で良くデカい事言ったりするでしょ?」


 速攻で頭をポリポリ掻きながら言い訳すると、しかし年少三人組が御丁寧にも揃ってお手上げポーズを返して来やがった。


「今更何を言ってるんだろ」「全然誤魔化せて無いよ」「ウ、ウソくせぇ・・・」


 ちっ。この三人組、一々アレな反応を返して来やがって、ちょっとムカッと来るんですけど。

 特に三番目に発言してるアンジェ! アンタは一体このワタシをナンだと思ってるんだってのっ。


「マリーお姉ちゃんはまものが怖くないの? 夜はまものがいっぱい出るんだよ?」


 しかしっ、エレナちゃんが服の裾を掴みながら、ちょっと涙目で訴えて来たのでワタシはダッシュで前言を翻した。


「こう見えても剣は得意だからねっ。オーガくらいなら行き掛けの駄賃って感じで倒せるから平気なんだよ!」


 もうどうにでもなれやって感じで、胸を逸らして大威張りで自慢っぽく言い放つ。

 だって可愛い女の子がワタシのせいで涙目になってるんだよ?

 そんなの耐えられないし、もうしょうがないよね!


「マリーお姉ちゃん凄ーい!」


 一転してキラキラとした目で抱き付いて来たエレナちゃんをキュッと抱き締めて、うんうんと肯きながら頭をナデナデする。


 はっはっはーっ、どうだ!?


 これでワタシに対する子供達の評価は人外魔境のヒトで確定だねっ。

 何か自分で掘った墓穴に自分から中に入って、更に土まで被せちゃった様な気がするんだけど、気にしない!


「マリーさんって、本当に凄いヒトなんですね」

「やっぱりそうなんだ」「ホント凄い豪傑だよね」「流石だぜ、センパイ!」


 でも早速隣で何やら溜め息を吐いてくれたラウロ君の「ヒト発言」に地味に落ち込むと、更に三人組が追い討ちを掛けて来てガックリ。


 って言うか、アンジェは一体何を根拠にワタシを先輩呼ばわりしてるのかな?


 ぶっちゃけた話、もしワタシみたいになりたいって思ってるんだったら、マジで考え直した方がイイと思うぞ。

 世の中何事も程々がイイに決まってる。さもなきゃ憧れの騎士様を道っ端でボロ雑巾にして、高笑いしちゃう様な馬鹿女への道をまっしぐらだ。

 いやホント、笑えない話だよね。



今朝(笑)もこの辺までにさせて頂きとう御座います。

読んで頂いた方、有難う御座いました。


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