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157話

切りどころが難しくて、実質二話分の量を三話にしてしまった形なので、今回も少し短いです。



「ハイハイ、終わったら次の子ね」


 レティは無視する事にして、見た目ほど酷くはヤられて無かった子供達を治療系の魔法で歩ける様にしながら色々と話を聞く。

 レティもロベールさんも流石に子供を甚振いたぶる趣味は無かったようで、重症な怪我を負ってないから結構楽勝って感じで良かった。

 ちなみに可愛い男の子の名前はラウロ君と言うそうだ。

 他はまあ、どうでも良いから頭には入って来ない。


 しかしそのラウロ君達の話の内容には参った。


 何しろ話に寄れば、彼らは何処ぞの要塞めいた場所に連れて来られた魔法力持ち奴隷で、ランスに向けて移送されてる時に、件の古砦に住む討伐騎士のお姉さん(と言うよりお母さんって年齢らしい)に助けられたってコトだからね。


 もうこれ以上無いって位にヤバい話ですよ。


 隠し砦どころか要塞かいなって話でもあれば、ランスでの人身売買組織に繋がる話でもあるし、更にその元締めがどうやら西聖王国の正規軍らしいって話でもあるんだから、ホントにシャレにならないわ。

 普通ならこんな話を簡単に信じたりしないけれど、それぞれの首に隷属強制と思われる首輪の痕がある彼らの話にはとっても説得力があるので頭が痛い。


「僕らは今デボラさんの住んでる小さな砦に匿われてるんですけど、そのデボラさんは僕らの件でランスに話を付けに行ってて、まだ帰ってないんです。二日あれば帰って来ると言ってたのに、もう丸四日経ちますし、そんな時に砦周辺の仕掛けに反応があったので……」

「まあそのヒトがヤられちゃった可能性はまだ低いと思うし、ワタシ達も居てあげるから、もう暫く待ってみたら?」


 二人目も取り敢えず歩ける様にしてから立ち上がると、ワタシはラウロ君を安心させる様にまた頭を撫でた。

 そりゃそのデボラさんとやらが帰って来たと思ったら、革鎧姿のヤバげな三人連れが妙な迫力出しながら(警戒してたからね)やって来たんだもんね。

 追い詰められてる子供達からすれば、相当コワかったんだろうな。


『要塞となりゃ千人規模の兵隊が居やすし、相当ヤバいっすね。もっともコイツらが言ってる事が本当ならって話でやすが』

『先ずはその古砦に行って見る事が先決だよ。状況証拠から見てもこの子達の言ってる事は基本的に嘘じゃ無いし、もし丸ごと真実なら、フェリクスおっさんに応援を頼んででも殲滅しないと、マチアスおじ様やデラージュ閣下がランスを洗った事が元の木阿弥になっちゃう』


 間が空いたのでヒソヒソ声でロベールさんと今後の事を話し合う。


 例えデント村より規模が小さかったとしても、要塞が拠点として使われてるって事は、多分そこが連中の本当の本拠の筈だ。

 と言う事は結局、ランスの拠点を潰しても人身売買組織自体は根絶やしどころか、未だにほとんど健在だって事になるから、様々なファクターを考えれば潰しておかないとマズいし、ソレが西聖王国の闇に直結する話なら尚更だよね。

 勿論、国軍が絡んでいる以上は西聖王国の役人なんて頼れないので、討伐士協会のランス代表者であるおっさんに応援を頼むのは必然って所だ。


『取り敢えずの所は下調べで御座いますね。暫くその古砦とやらに逗留して詳細を探りましょう』


 何時の間にやら復活してたレティが参加して、ワタシとロベールさんが肯く事で今後の予定は決まった。

 ヨシヨシ。今此処で西聖王国の闇とやらの一大拠点を潰しちゃえば、ロダーヌ以東における連中のプレゼンスは絶対的に下がる筈だから、今後の安全を考えてもやれる事はやっといた方がイイもんな。

 オーガ討伐なんて二の次でイイわ。


「ホラ、次はアンジェの番だよ」


 うんうんと肯いてると、実働部隊(?)三人の内、最後のヤツが目の前にやって来たので、地面にうつ伏せにさせて早速治療を開始する。

 おっと最後はコイツか。

 ラウロ君に言われてヨロヨロとうつ伏せになったヤツを見れば、ソイツはワタシが何度も蹴り飛ばしたヤツだった。

 治療に入りながら密かに身体を調べれば、思った通りコイツは他の二人より頭一つ抜けてる感じで、年齢の割りには結構使える感じだ。

 でもコイツってば、名前からも判る通りに女の子じゃんか。

 幾ら脅す為とは言え、バンバン蹴り飛ばしちゃったのはマズかったカモ。


「アンジェ。悪かったのは僕らなんだから、まず謝るなりお礼を言うなりした方が良いよ?」


 ホイホイと治療をやってると、無言のままブスッとした顔で治療を受けるアンジェとやらに対して、申し訳無さそうにラウロ君が文句を付けた。

 まあ前の二人は一応謝ってから治療を受けてたからラウロ君がそう言うのも判るけど、このテの治療ってかなり痛いし、ついでにあれだけやっちゃったワタシを嫌ってるだろうから、そりゃ無言でも仕方無いよなーと思ってると、言われたソイツが突然ガバッと頭を上げたので、ちょっとビックリ。


「ア、アンタ、なんであんなに強えんだよっ。オレにカマした蹴り、ハンパじゃ無かった!」


 ブフォ! なんでそっちが優先なんだよ。脳筋かっての!

 普通なら蹴り捲くった事に対する恨み事でも言う様な所で、妙に脳筋クサい事を言い出したアンジェにドッと疲れて溜め息。


「あんなの超絶手加減に決まってるでしょ。ワタシが普通に蹴ってたら即死だよ、バカじゃないの?」


 そこはかとなくムッと来たので、さっさと治療を終わらせたワタシは近くにあった手頃な立ち木に近寄ると、一切の前フリ無しでそれを蹴った。

 前蹴りでは無く横から薙ぐ様に蹴ったワタシの足は、狙ったとおりに幅一フィート半(約45cm)はある立ち木を綺麗に叩き折ったのでニンマリ。

 でもその結構な大きさの木が倒れると、辺りに葉っぱやら土埃だのがもうもうと立ち込めちゃって最悪な結果に!

 ゲッホ、ゲホゲホ。ちょっと失敗って感じだわ。


「!!!」


 埃で涙目になりながらも後ろを見れば、アンジェがバカみたいな顔であんぐりと口を開けたままで固まってた。

 うむ。埃の御釣りはともかく、どうやら成功のようですな。

 例えそれが前蹴りでも、こんなデカい立ち木をへし折れば一般人ならド肝を抜かれるってのに横蹴りだもんね。そりゃあビビるわ。


「コレが討伐騎士バッツの実力だよ。こんなの騎士の間じゃ単なるお座敷芸の範疇だけどね」


 涙目になってた所をササッと取り繕い、ふふんと鼻で笑いながら胸を張って踏ん反り返る。

 あんなお手玉みたいな蹴りに驚いてる様じゃ、先は暗いぞ?

 しかし呆然としたまま声も出ない様子のアンジェに気を良くして他の連中に近くまで行くと、アンジェどころかウチの二人以外が全員呆けたままで固まってるのを発見してガックリ。

 うんみゅ。やっぱコレってやり過ぎだったみたいだね。ちょっとどころか大きく反省って感じだわ。


「いやぁ、流石にこんなのが笑いながら出来るのは、ウチのお嬢サンくらいのモンだからな。小僧共、勘違いすんなよ?」


 ちょっと、ロベールさん!


「降参」って感じの手振りをして、ヘラヘラと笑いながら妙なフォローを入れたロベールさんをジト目で睨む。

 でも、見ればお陰で子供達はそれぞれ復活してくれたみたいで、目をパチクリとさせながらもお互いに何かを話し始めたのでホッとした。

 ラウロ君も復活してくれた様で、他の二人と興奮した様子で喋り捲くってますよ。

 もっとも、何故か当のアンジェだけは相変わらず口を開けたまま、ボーっとこっちを見たままだ。


 ぬう。コイツにとってはそんなにショックな出来事だったのかな。


「凄え……身体強化とか、そんな世界の話じゃねえ。本当の魔法ワザだ……」


 にゅっ? 

 漸く口を開いて独り言の様な事を呟いたアンジェの言葉に結構驚く。


 コイツってば今のが見えたのか。ちょっとと言うか、かなり感心って感じだよ、ソレ。


 どんなに力が強くても、この身体で立ち木を蹴り折ろうとすれば質量の無さで「負ける」から、実は今ワタシがやったのは足を剣に見立てて「斬る」魔法ワザなんだよね。

 流石に足は刃物じゃ無いからホントに切断する事はムリだけど、この位の立ち木をへし折る程度なら楽勝だ。

 ワザのお陰で足首の辺りまで地面に埋まっちゃったせいか、土だらけになっちゃった軸足をペシペシと叩きながら、ワタシはアンジェをマジマジと見た。

 バリバリの討伐騎士ならともかく、素人に毛が生えた程度のヤツがこんなワザを一目で理解出来たって事になれば、それはソイツに結構な才能があるって事の証明に他ならない。


 うーん。コイツって、実は騎士としてかなりの将来性があるヤツなのかも知れないな。



今宵もこの辺までにさせて頂きとう御座います。

読んで頂いた方、有難う御座いました。


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