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143話


「アネさーん、姫サンに何か言ってやって下さいよぉ」

「ロベール殿、ひぃ様はこう言う御方なのです。貶されればニヤリと笑い、褒められれば即座に逃げ出す、天邪鬼もびっくりな天性の捻くれ者なのですから仕方がありません」


 森の中へと走り込むと、後ろからまだブーブー言ってる二人の声が聞こえて来てゲンナリ。

 フンッだ。捻くれ者で悪かったよね。

 でもどう考えたって、あるじをネタにして騒いでるアンタらの方が悪いんじゃない?


「ま、そんな事はさておき」


 色々な事を振り切る様に一言呟いて、ワタシは探知魔法モドキに意識を寄せた。

 ここは魔物のテリトリーである森の中なんだから、何時までもどうでも良い事に構っているヒマは無い。

 なんだか魔物の気配も濃厚だし、ここは一つ、デ剣(デラージュ閣下から貰った剣)の試し斬り&ロダーヌ河東側でのデビュー戦って事で、軽く行ってみますかね。

 と、思ったのも束の間。


「こりゃ結構な御出迎えだわっ」


 探知魔法もどきで見れば、まだ朝だって言うのに森の中にはかなりの数の魔物が蠢いてる様で、しかもゴブと思しき影が三つ、すぐ目の前まで来てやがった。

 インベントリからデ剣を引き抜くと、ほぼドンピシャのタイミングでその三匹のゴブが襲い掛かって来て笑う。


「ていっ!」


 足捌きだけで剣先をコントロールして、一気に三匹同時の首刎ねを狙うと、いとも簡単に出来ちゃってビックリ。

 ぬう。思考加速を使ってない状態でこんな荒業をやったってのに、ほとんど手応えらしい手応えすら無いわ。

 この剣、ちょっとシャレになんないよ。

 白剣とイイ勝負のズルい剣なのかも知れん。


「キュッ」

「おっと」


 立ち止まってゴブの死体を処理しようかと後ろを向くと、何時の間にやら何匹も実体化したクーちゃんズがゴブ死体を担いでくれてた。


「クーちゃん有難うっ」


 お礼を言ってストレージもどきの黒穴を開けば、クーちゃんズが見事な連携でホイホイとゴブ死体を突っ込んでくれる。

 ここの所お馴染みって感じになって来たこのクーちゃんズの動きだけど、これってホントに便利だし、嬉しいサポートだ。

 魔石を渡す為にやって来た一匹の頭をグリグリと撫でくり回しちゃう。


「キュキュッ」


 撫で回されたクーちゃんだけじゃ無く、みんながとっても嬉しそうな声を上げてくれてニッコリ。

 クーちゃんやピーちゃんは分裂してても同じ存在らしく、一匹にお礼をすると全員にしたのと同じ事になるっぽいからラクだ。

 最初に大量のクーちゃんを見た時にはどうしようかと思ったけど、すぐにソレが解ってホッとしたんだよね。


「何かアッシらの出番が全く無い気がするんでやすが、あの珍妙な動物ってやっぱり精霊なんでやすかねぇ」

「あまり深くは考えない事です。ひぃ様の魔法は非常識過ぎますので、考えるだけムダと言えましょう」


 クーちゃんのモフモフした感触にニマニマしてると、追い付いて来た二人の会話が聞こえて来てドッと疲れる。

 ねえレティ、アンタがワタシの使う魔法技術に疎い理由って、まさかその思考停止が理由なんじゃないでしょうね?

 昔からその都度説明して来た積りだったのに、本当だったら小一刻くらい問い詰めたい所だよっ。


「ちょっとそこ! 何時までもグジグジ言って無いでやる事やってよねっ」


 ちょっとムッとしちゃったせいか、大きな声と共にクルッと振り向いて睨みを入れてやると、レティは何時もの事って感じで涼しい顔なものの、睨まれ慣れてないロベールさんはオロオロした様子で降参の手振りを返した。

 くっそー。やっぱりレティにはこの手は効かないか。

 その内にロベールさんもコイツみたいな反応になるのかも知れないと思うと、暗澹たる気持ちになるわ。


「いやー、そのやる事がそこの妙な……じゃなくて精霊(?)連中に取られちまって、こっちは手持ち無沙汰なんでやすよ」


 むむぅって感じに睨み続けると、ロベールさんが頭を掻きながら言い訳っぽい事を口にして来たので、ワタシはしょうがないなぁと思いつつ、折れる事にした。

「精霊」って言葉が妙に疑問系っぽい発音だったのはともかく、涼しい顔のレティを放っといてロベールさんだけに噛み付いても意味が無いしね。

 ちなみにクーちゃんが最も似ていると思われるタヌキと言う動物は、遥か東の彼方の大砂漠のその又向こうに行かないと居ない生き物で、こっちでは図鑑でしか見れない生き物だから、珍妙な云々って言うロベールさんの物言いは仕方が無い。


「ロベールさんにはさぁ、速攻でワタシに説明しなきゃイケナイ事があるんじゃないの?」


 しかし丁度良い機会だ。

 ワタシは二人から視線を外して前に向き直りながら、さっき思った事を口にしてみた。


「ロベールさんが思考加速魔法を使うなんて全然聞いて無いし、前に色々訊いた時にも話してくれなかったよね?」


 前を向きながらも後ろにビシッと指差しして、更に追い討ち。

 そもそもワタシ謹製のブツを作る時に、ロベールさんには彼の魔法についてきっちりとした聞き込みをやってるんだよね。

 初歩的な部分が重点だったから、確かに思考加速なんて超難易度魔法の事は訊いて無いけれど、それにしたって全く話が無いってのも酷いと思うよ。


「うっ、ま、まあそうなんでやすが、その件は色々と長くなっちまうんで話し難かったんでやすよ」

「だったら今こそ、その話をする所でしょ? やる事って言うのはそう言う事だよっ」


 歩きながらも振り向いてダメ押しを入れると、前に話さなかった弱みからか、ロベールさんが完全降伏状態で両手を上げた。


「そりゃまあ姫サンが聞きたいってんでしたら、かっちりと話させて頂きやすけどねぇ」


 うんうん。ちゃんと話してくれればそれで良いんだよ。

 森をぶち抜く最短コースなら、普通に歩いても目的地であるデントの村までは二刻(約二時間)位で着くから、時間的にも丁度イイ。

 込み入った話を聞くには恰好の機会だよねっ。



今宵もこの辺で終わりにさせて頂きたく思います。

読んで頂いた方、有難う御座いました。


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