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141話

明けましておめでとう御座います。

昨年中、と言いますか、特に12月は酷い状況が続きましたが、これからは多少マシになりそうなので、最悪でも週一での更新は何とかしたいと思います。どうかよろしくお願いします。



「さってと。何か色々とあったけど、二人共、あの時良くダッシュで離れてくれたよ。助かった」


 小川沿いを軽く二マイル(約3.2km)は走ってから、ワタシは二人に合図を出して止めると、人の手の入っていない土手を歩きながら声を掛けた。

 勿論、思考加速魔法も解いて、二人にも解いて貰う。

 ロベールさんには色々聞きたい事が出来たけど、その前に二人に言っておかないといけない事が有るから、そっちは後回しだね。


「すいやせん。ホントなら盾になんきゃなんねえ所で……」


 開口一番、思った通りにロベールさんが詫び言を言って来たので、ワタシはそれを片手で制して先を続けた。


「この際だから言っとくけど、二人共戦いの場でワタシの盾になる様な事は金輪際、絶対に考えないでね。邪魔だから」

「その様に言われますと、何も言い返せませんが……」


 ストレートに言いたい事を言うと、ムッとした顔のレティが早速絡んで来た。

 ロベールさんは唖然とした表情だ。

 ま、予想通りの反応だね。

 でもこんな事、日頃は言い難いから今この流れの中で言っておくしかない。


「ワタシがレティやロベールさんに求めてる事はそう言う事じゃ無いし、そもそもワタシが全力で戦ってる時に前に出れないでしょ?」


 ついでに決定的な追い討ちまで言ってみるテスト。

 レティは勿論、さっきの発言からロベールさんも騎士っぽいって言うか、モロに戦闘人種な頭の筈だ。

 そんなヒトらにここまで舐めたコト言っちゃえば、最悪は此処でサヨナラかも知れないと思うけど、ここらで納得して貰わないと、後で面倒な事になるのが必定だから仕方ない。

 真剣な気持ちで二人を見てると、呆気にとられた顔だったロベールさんが笑い出した。


「いやぁ。何て言いやすか、姫サンはホントにスッパリハッキリとしたお人で気持ちがイイですわ! 判りやした。あっしは以降、サポート役に徹する事にさせて頂きやすっ」


 おおぅ、マジですかっ。

 ロベールさんの返事に嬉しくなっちゃって、思わずはしゃぎ出しそうになる所を何とか押さえつけ、渋い顔で肯く。

 大事な所だからね。ちゃんと聞いておかないとヤバい。


「イイの? 弱いからアテにしないって言ってる様なモンだと思うけど」

「そりゃあそうでやすが、本当に世界が違い過ぎやすからね。そんな所に出しゃ張っちまって、そのせいで姫サンが全力を出せなかったり、負けちまったりする方がヤバいってもんですぜ」


 笑いながらの降参ポーズと共に、言って欲しい事をズバッと言ってくれたロベールさんを見ながら安堵の溜め息。


 ちょっと怖かったけど、言ってみて良かった!


 さて、後はレティの方だと思ってそっちを見れば、ヤツも渋々って感じながら片手を挙げた。


「ひぃ様にはクーやピーも居りますし、わたくしも以降はその様に心掛ける事に致します」


 うむうむ。レティも判ってくれた様で一安心。


「ワタシが二人に望んでる事は、ワタシじゃ出来無い事をやって貰う事コトで、別に身代わりとかになって欲しいワケじゃないの。本音を言っちゃえば、大した役に立たなくても、一緒にやってくれるってダケでイイくらいなんだよっ」

「そりゃまた随分なお話でやすが、理由を聞いてもイイですかね?」


 ああマズい。調子に乗ってポロっと本心が出ちゃったわ。

 即座に切り返してきたロベールさんを見れば、僅かだけど眉間に皺が寄ってますよ。

 そりゃ今みたいな事を言われれば、誰だって怒るよな。


「ロベールさんも見たと思うけど、ワタシってかなりヤバい魔法使いだからね。それで逃げない従者なんてそれだけで超貴重なんだよ」


 速攻で言い訳っぽい事を言って誤魔化すものの、これも偽らざるワタシの本音だ。

 そもそも精霊魔法もどきなんてヤバい魔法を使う以上、誰かと本格的に組む事はムリだと思ってたワタシにとって、色々見せちゃっても逃げずに付いて来てくれる人が居るだけで、とっても嬉しい事なんだよね。

 レティなら付いて来てくれるカモとは思ってたけどソレはソレ。

 ヤツの将来とか人生とかに直結しちゃう話だから、付き合わせちゃうのもマズいと思ってたしさ。

 実を言えば、ゴーレム研究に邁進してたのもソレが理由で、幼女化前のワタシだと単独行での魔物討伐に自信が無かったから、必死な思いで考えた末の結論だったんだよ。


「確かに姫サンは特殊な魔法の使い方をしてらっしゃるとは思いやしたが、ありゃそんなにヤバい話なんでやすかぁ」


 一瞬眉間に皺を寄せたものの、ヤレヤレって表情になって答えてくれたロベールさんにホッとする。


「そうだね。あれはワタシのアイデンティティそのものだけど、世に否定されてる魔法でもあるからね」


 でも反射的に答えつつ、ロベールさんの言葉には疑問が湧く。

 普通なら「見た事無い雷気魔法」とか「曲芸の様な風系魔法」とかって言う所なんじゃないの?

 そこを「特殊な使い方」だなんて、そんな事、そこらの魔法師だって気が付く様な話じゃないと思う。

 件のプレートを抜いた時、身体を流れる魔法力の感じから、荒っぽい軍人の魔法使いとは思えなかったんだけど、やっぱり何か裏があるんだろうね。

 思考加速魔法の件と言い、この件と言い、これはガッチリと聞いてみたい案件だ。


「ひぃ様は特別な御方なのですっ。いずれは世に名を轟かせる大魔導師に成られる以上、凡人には理解出来ぬ魔法を使われるのも当然で御座います!」


 ゲッホ、ゲホゲホ。

 ロベールさんのセリフに突っ込もうと思った瞬間、レティのヤツが妙な大風呂敷を広げて来やがってガックリ。

 ホント、コイツのこの異様な期待値って何処から来てるんでしょうか。


「ああ、ハイハイ。トンデモ無い誇大妄想を有難う御座いましたって感じ?」 


 何か「フンスッ」って感じで胸を逸らし、鼻息も荒いレティに疲れながらも嫌味を言って溜め息。

 でも呆れ顔だろうなーと思って見返したロベールさんまでもが、何故かレティと似た様な表情になってて二度ガックリ。

 オヒオヒ。あんたらこのワタシを一体ナンだと思ってやがるんだよっ。


「その様に言われますが、実際に凄い魔法の連続であった事は事実でありましょう。それに、ひぃ様はあの方々が何方どなたの御一行か御存知なのですか?」


 ジト目で睨んでやったってのに、そんな視線は何処吹く風のレティが呆れ顔で天を仰いだ。


 ぬうっ。


 色々と言いたいけど、あの「御前」とやらの正体にまだ確信が無い以上、ここは聞いておくしか無い所だ。


「まあ大体想像は付くけどさ、レティはあの御一行サマの正体を知ってるの?」


 やってられないポーズで何とか答え、試しにロベールさんの方を見れば、何故か当然って感じに肯かれちゃった。

 せぬ。


「先の御一行はグランツェン殿下の御一行で間違いありません!」


 どうやらロベールさんも知ってたみたいだと思ったら、レティから決定的な返事が返って来て溜め息。

 クーちゃんやピーちゃんが無条件で戦う事を止める以上、絶対に敵わない相手だとは思ったけれど、やっぱりそうだったのか。


「デストリアの胸部装甲にモロに聖公国の紋章が入ってやしたから、こっちは姫サンも最初っからお気づきだと思ってたんですがねぇ」


 ええっ、そんなの全然気が付かなかったよ!


 ロベールさんの追撃の如き呟きにガックリ。

 ソレじゃ向こうは最初っから正体晒してたってコトだよね。

 それなのにワタシってば……。

 あまりのバカさ加減に眩暈がしちゃうわ。


「うわぁー、それじゃワタシとししょーってば、子弟揃ってグランツさんに負けちゃったって事だねぇ。そりゃ参ったねぇ」


 恥ずかしさで顔真っ赤になりながら、ワタシはもうこれ以上無いって位の棒読み口調で声を上げた。

 何故だか二人共やたらと嬉しそうな感じになってるからね。

 このまま放っとくと、また妙な褒め殺し攻撃に晒されそうでイヤな予感がするのですよ。


 もっとも、実はこっちもちょっとイイ気分ではある。

 物語に出て来る本物の英雄サマに、口止め料とは言え剣まで貰っちゃった上、今度は直接試合いたいなんて言って貰えたら、嬉しく無い筈が無い。

 得体の知れない「お墨付き」なんかより、何百倍も嬉しい一言だよ!



今宵もこの辺で終わりにさせて頂きとう御座います。

読んで頂いた方、有難う御座いました。


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