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討伐騎士マリーちゃん  作者: 緒丹治矩
早朝の決闘
126/221

126話


 人間の手って二本しかない筈なのに、コレって一体どー言うコトなんだってーの!


 叫び出したい衝動を抑えて、ワタシは目を瞑ると、目を閉じて魔法の影をた。


 さっきの高速10発もそうだったけど、こんなの目で見てたら対処なんか絶対に出来っこ無い。


「所詮は口だけか」


 目を瞑ったワタシの耳に、勝ち誇った様な女の声が聞こえて来てガックリ。


 ま、そりゃそうだわ。


 こっちが向こうに合わせて跳んだ所を全力で狙い撃ちなんて、モロに相手の術中にハマってるんだもんな。


 あーもうっ、ホントにワタシってばバカバカバカって感じ。


 でもこんな程度のコトで、このマリーちゃんをれると思うなよ?


 ワタシは一瞬の風系魔法で直角に軌道を変えて地面に突っ込むと、勢いのままで走りながら、それでも襲って来る幾つかの高速スラッシュを鉄棒君で叩き潰した。


「!!」


 目を瞑ったままでも判るほど、女の驚いた気配が伝わってきて、思わずニヤッとなる。


 空中にいたままならあんなのどうにもならないけど、地面に降りちゃえばスラッシュ程度、どんだけ数があったって楽勝なんだよ。


 そりゃ空中で即座に向きを変える事なんて、普通はムリムリだから、向こうが驚いたのはそっちなんだろうけどさ。


「お前、一体何者だ!?」


 女のアセった声に更に顔がニヤけちゃう。


 にゅっふふふ。


 普通はムリムリな動きでも、一見何も無い空中を「蹴る事が出来る」ワタシになら簡単だ。


 ピーちゃんを実体化させられるって事は、風精を実体化させられるって事だからねっ。


 連続してやる事はムリだからソレで飛び続ける事は不可能だけど、方向転換程度なら造作も無い。


「おしおきターイムッ!」


 ワタシは大きな声を出して笑った。


 今度はこっちの番だよ。


 もうとっくに道を通り越して、河川敷の様な草っ原を突っ走りながら、さっきからの数秒で運動エネルギーが乗った5発の鉄礫を女に突っ込ませる。


 さて、コイツをどう料理するね。


 こっちのは魔法誘導の実弾だから、無効化レジストなんか出来無いぞ?


「バカなっ!」


 走りながら目を開けると、驚きに絶句して目を見張った女に、各個に無茶苦茶な軌道を描く5発の鉄礫が突っ込むのが見えた。


「グブッ! こ、これはっ」


 一発でも当たれば儲けと思ったのに、全弾をモロに食らった女がよろめく。


 バッカだなぁ。何も律儀に全弾食らわなくってもイイのに。


「ズバババァーン」


 しかし、一瞬勝ちを確信したワタシをあざ笑うかの様に間延びした爆発音が響くと、女の姿は同時に広がった黒煙の中に隠れた。


 ちっ。やっぱあの程度じゃ掠り傷ってコトかよっ。


 凄まじい勢いで黒煙を噴出しながら、猛ダッシュで後退し始めた女を全力で追う。


 まあでも、勝機である事は間違い無いんだから、もう手札を晒したってイイよね。


 ワタシは風系支援魔法を次々に展開して、例の如く憤進弾の様に自分の身体をフッ飛ばした。


「貰った!」


 文字通りの全力疾走が功を奏して、面白い様に女との間合いが詰まると、鉄棒君で渾身の突きを繰り出しながら叫ぶ。


 魔法力がえるワタシにとって、煙幕なんて無いも同然。


 当たらない方がオカシイ。


「浅いわっ、素人め!」


 鉄棒君が女の脇腹を抉った手応えに、今度こそ勝ちを確信したものの、直後に地面から燃え上がったかの様な熱が襲って来て、二の手に繋げなくなったワタシは蹈鞴を踏んだ。


 すっげ! この一瞬で地面に熱系魔法陣を想写しやがったのかよっ。


 やっぱ本物の魔法系人外サンって強いわー。


「戦いはまだまだこれからよっ」


 肋一寸あばらいっすんって感じで繰り出したんだろう、多分必殺の熱系ワザをカウンターしてる間に、一瞬で30フィート(約9.1m)位の高さまで逃れた女が大きな声で憎まれ口を叩いた。


 ワタシは思わず片手でやってられないポーズを決めて、それに応える。


 まーね。確かに戦いはこれからだもんな。


 もっとも、ソレはアンタ独りの戦いだけどさっ。


「な、なんだ、コレわっ」


 黒煙も止まって無防備な感じになった女が空中でフラついたのを見てほくそ笑む。

 

「ソイツを無効化レジスト出来るもんならやってみなっ」


 ワタシの言葉が終わるか終わらないかの内に、ゆっくりとしたスピードで苦しげに宙を舞う女が火達磨になった。


 どうよっ。自分の魔法力が生み出す炎の味は?


 あれはロベールさんの体内にあった例のブツからヒントを得て作った、文字通り魔導師殺しの魔法陣だ。


 強制的な自己発火を引き起こした上に、自身の魔法力が続く限りソレを炎に変えちゃうって言う極悪ワザだから、そうそう簡単に無効化レジストなんか出来無いぞ。


「ガハッ! ば、化け物かっ」


 火達磨になった女が、それでも苦し紛れの声を上げた。


 オヒオヒ。そんな状態で口が利ける、そっちが化け物だろ?


 ま、言わんとする所は判るけどね。


 ワタシは草っ原の只中で動きを止めると、改めて燃える女を見ながら、そっと溜め息を吐いた。


 ワタシが女に魔法陣を書き込んだやり方は想写の魔法なんかじゃ無い。


 だって生きてるヤツに魔法陣を想写する事なんて不可能に近いんですよ。


 それが人間だろうと魔物だろうと、魔法力を持つ者ならば、想写の魔法なんて言う複雑な魔法は無意識に無効化レジストしちゃうからだね。


 だからワタシは、あらかじめ鉄棒君の先端に魔法陣を逆さに刻んで、烙印を押す様に、魔法陣ソレ自体を無理矢理体内にブチ込んでやったってワケ。


 ぶっちゃけて言えば力ワザだ。


 こんなのは、相手の魔法力を凌駕する膨大な魔法力を持っているからこそ出来る事なので、ほぼ緑級の魔法力を持つあの女が、それを軽々と凌駕して見せたワタシを化け物呼ばわりするのも仕方が無いんだよなー。


「ブハァァァッ!」


 ちょっとダウナーな気持ちになりながらも見ていると、もはや口を効く事も出来なくなったのか、女が妙な叫び声と共に全身から凄まじい熱量の炎を吹き出し、爆発的に燃えながら墜落した。


 にゅうん。こりゃり損なっちゃったクサいわ。


 あの女、アレを食らいながらも自分の軌道をコントロールして、小川に墜落しやがったよ。


 燃えるって現象は空気が無いと続かないから、流石の必殺魔法陣も水の中じゃお手上げだもんな。



今宵もこの辺までに致しとう御座います。

読んで頂いた方、有難う御座いました。


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