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104話


 しかしジュリアンさんって、将来どんな騎士になるのかなぁ。


 少し線が細い感じだし、上品な雰囲気だし、あんまり騎士って感じじゃないヒトだから、想像が付かない感じだよ。


 フェリクスおっさんみたいな人外は外しても、ワタシが今まで付き合いのあった討伐騎士って、良くも悪くも骨太って感じの威丈夫が多い。


 違うのはぶっちゃけ、アレのしぶちょーとマチアスおじ様くらいだ。


 とは言え、しぶちょーの場合はちょっと例外臭いし、おじ様の場合は元々貴族家の出で魔法力が大きいから、身体より魔法方面を鍛えた方が強く成り易かったって事だと思うので、ちょっと設定が合わない感じがする。


 敢えて言うなら、アレの町でお世話になったドニさんが近い感じなのかなぁ。


 色々と崩してはいるものの、ドニさんは生まれ育ちの良さが垣間見えるヒトだったし、骨太なヒトながらも結構繊細な所が多かったもんね。


「ぷっふふふ」


 でもジュリアンさんも将来はあんな風に、奥さんや娘さんに頭が上がらない様になるのかなー、なんて思うとちょっと笑っちゃうよ。


 そんな事を考えて独りで妙な笑いを浮かべながら、ワタシは玄関口で立哨してる部隊の人達に挨拶をして、代官屋敷の建物内に入った。


 すると、侍女役の人もそっちのけで、たたたーって感じで廊下をアリーが走って来た。


「お姉さま!」


 おおっ! 我が麗しの義妹いもうと君よっ。


 ワタシが両手を広げて迎えると、アリーは何の挨拶も無いままに躊躇無く飛び付いて、ぺったしと抱き付いて来る。


 おおぅっ、素晴しいー! もはや打ち解けたどころの騒ぎじゃ無くて、本当の仲良し姉妹みたいっ。


 こんなに懐いてくれるなんて思わなかったよ。正しく望外の喜びって感じだよね!


 あまりの嬉しさに、ワタシもキュッと抱き締め返しちゃいますよっ。


 抱き締め返されて、ちょっとテレ気味に頬を染めたアリーが超可愛いっ。


「アリーは元気があってイイね。何かこっちまで元気になる感じがするよ」


 しかしこの喜びを君に!ってな感じで、素直な気持ちをそのまま口に出すと、アリーは何故かドヨヨンとした表情になってパッとワタシから離れた。


「ご、御免なさい、お姉さま。挨拶も無しに抱き着くなんてはしたない事を・・・」


 オー、ノー! 不味いよっ。良く考えたら今のワタシの言葉って、モロに嫌味じゃんかっ。


「こ、こっちこそ嫌味っぽくて御免ね。でも今のはそう言う積りじゃ無くて本心なんだよ。ちょっと色々あってココロが疲れちゃっててさぁ」


 速攻で言い訳を口にすると、一旦は離れたアリーがワタシのシャツの片袖をキュッと握って、顔を上げてくれた。


 今だ!


 ワタシは瞬間的にちょっとだけ膝を屈めてアリーと目線を合わせると、そのまま頬に軽いキスをしてから耳元で囁いた。


「あんな風に直接抱き付かれるなんて、何か本当の姉妹みたいで嬉しかったんだよ。ホントだよ?」


 必殺、瞬間キス&囁き攻撃である。


 学院では、これで機嫌を直してくれなかった下級生は居ないと言う、正しく奥義と言って良いワザだ。


「お、お姉さまって、お話に出て来る英雄サンみたいです・・・」


 効果は覿面てきめんで、顔を赤くしたアリーがちょっとポーッとした感じになって抱きついて来るのを、キュウッと抱き締め返してホッと一息。


 うむ。流石に奥義はキくわー。助かりましたよ。


 しかも顔が触れ合う程の間近で見るアリーはホントに可愛くって、超癒されるるるー。


 にゅふふふふふ。転んでもタダでは起きない女とはワタシの事だって感じだけど、今のアリーのセリフにはちょっと気になる所が・・・。 


 アリーさんや、「お話に出て来る英雄サン」って、ワタシがイマイチ好きになれないジゴロ野郎白騎士の事じゃないよね?


 思わず訊き返したくなっちゃうよ。


 だって御伽噺に出て来る白騎士と言えば、バカが付く程に強いんだけど、同時に凄い派手好きで女好きで有名なんだよね。


 その御活躍を要約すれば、大恋愛の末に結ばれた奥さんそっちのけで浮名を流し捲くった末に、イイ歳こいてから色々とバレた際には家族も主君グランツさんも丸ごと捨てて、行き掛けの駄賃に深窓の姫君を騙して掻っ攫い、高笑いのまま行方不明になるって感じだ。


 正しく「女の敵」ってのを地で行くヤツだよね!


 まぁ戦場での武勇伝の方が遥かに多いし、逃亡後はそれ迄の活躍に免じてグランツさんも追わない選択をするんだけど、ワタシだったら叩き斬ってるよなぁ。


 特に、世間の事など何も知らない深窓の美少女姫(グランツさんの娘だ)を騙くらかして連れ去ると言う所が許せんのに、これが作り話じゃなくって事実だって言うんだから言わずもがなだよ。


 そんなタラシ野郎なんぞと一緒にされたく無いわ!


 色々と裏もあるんだろうとは思うものの、良くグランツさんも許したよな。


 ししょーも何時ぞや嫌そうな顔で「ハデ」とか言ってた位なんだから、スッパリ斬り捨てちゃえば良かったのに、煮え切らないヒトだよね、全く。


「精神的にお疲れなら、これからお風呂なんてどうですか?」


 稀代のタラシ野郎にムカついてると、アリーから素敵な提案が降って来て、思わず肯く。


 イイですなー、お風呂ですかぁ。


 白騎士なんかの事を考えてる場合じゃ無いですよっ。


 可愛いアリーと背中の流し合いっことかしちゃったりして、また一時の至福を味わうチャンス到来じゃないですか!


「イイねっ。アリーさえ良かったら一緒にどう?」


「ハイ、勿論ご一緒します!」


 平静さを装いつつも、何気なく切り込む様に誘うと、アリーから即答でOKが出て、ワタシは思わず踊りだしたくなった。


 やったー! 今日は何か色々と精神的に疲れてたけど、こんな御褒美があるんなら救われた気持ちになるよねっ。








 そんなワケで、ワタシ達は代官邸の大きなお風呂で背中の流し合いっこをしてから、湯船に入ってまったりタイムに入った。


 いやー、癒されるわぁ。お湯の温度も低めだし、まったりするには絶好の環境ですよ。


 隣に座るアリーもそれは同様な様で、二人の間にほーっとした空気が流れてて、何かとても心地が良い。


 イイよねぇ、こう言うのって。


 これでレティがどっかで覗いてるかも知れないって心配さえ無ければ、本当にリラックス出来るんだけどねぇ。


 ってまあ、普通に考えれば「護衛が居るからリラックス出来る」んであって、本来なら逆なんだけどさ。


 アイツにああ言う趣味さえなければなぁ。


 ボーっとしながらそんな事を考えてると、何時の間にかワタシの向かいに移動してたアリーが話し掛けて来た。


「お姉さま、私、実は銀章討伐士に成る事を諦めようと思うんです」


 見ればアリーは何かを決意した様な顔になってて、ワタシみたいなボーッとした雰囲気じゃ無くなってる。


 うーむ。これは何かの決意表明でも聞いて欲しいのかな。


「ふうん。でもソレって、他に『目指すべき目標』が出来たって事だよね?」


 将来の進路を決心した義妹いもうとの言葉を聞くのは義姉あねの義務だと思うので、まずはアリーが話し易い様に水を向けてみる。


 うむうむ。出来た義姉あねだよね。


「ハイッ。私はとことん戦いに向かないって事が、お姉さまの活躍を知って良く解りましたから、もっと自分の才能を生かす方向、つまり魔法士の世界に全力で向かうべきだと思うのですっ」


 おおっ、イイですねぇ。正に理想的な展開ですよ。


 ググッとおててを握り締めた可愛い決意表明に拍手で応じると、アリーが嬉しそうにはにかんだ。


 にゅうん、可愛い!


 しかしアリーの可愛らしさに溶けそうになりながらも、例の野生のカンが囁いて来たワタシは、気を引き締めて頭を動かす事に注力した。


 改めて考えるまでも無く、アリーはその魔法力と凝り性な所を生かせば、魔法士として大成する事は間違い無いと思うんだけど、どうもこのの決意表明にはまだ続きがあるっぽい上に、何か難問っぽい雰囲気なんですよ。


 しかも野生のカンは「不味いよー」って囁いてるんだよね。


 そんな時は大抵ならマジでゲロヤバい時に限られるってのに、こんなハッピーっぽい情況で、何がどうなるって言うのかなぁ。


 疑問符が顔に浮かぶ程に考え込んでると、満を持した感じのアリーが口を開いた。


「お姉さま、私の目標はお姉さまのお側に使える事ですっ。もし私が魔法士として世に認められたら、臣下に迎えてくれますか?」


 へっ!?


 考えた事も無かった言葉に、思わず目が点になって見つめ返せば、恥ずかしそうにしながらも、アリーの目はガチで本気の目だった。


 マ、マジですか。こりゃ確かにゲロヤバいかも知れない。


 一体全体、どうしてこうなったんだってーの!


今宵も此処までに致しとう御座います。

読んで頂いた方、有難う御座いました。


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