僕らの旅立ちと共犯者
コンコン
プレイルームの扉がノックされた。
「お早う。」
レイス王女だ。
白のワンピースにサングラスをかけている。
「おはようございます。」
「朝食は終わっているのか?」
「えぇ、今はカードゲームで遊んでいた所です。」
僕の手札を切らせようとする妖精から身を守るゲーム。
「よし、では焦らすようで悪いが行こう。」
「そうですね。留まる理由もありませんし。リシア行こう。」
「えぇ。」
これは拝借してこうか。とトランプを一組貰っていく。
「王女様、トランプ貰いますね?」
「トランプ?あぁ、それの事か。いいぞ。」
「ありがとうございます。」
僕らはレイス王女を先頭に歩いていく。
「王女様というのは止めないか?」
「しかし、そんな訳には・・・・」
「よい、元よりお主はこの国の者ではない。この世界の者でもない。王女というよりも、一人の人間として接して欲しいと思っている。」
「わかりました。ではレイスさんとお呼びしても?」
「レイスでいい。」
「では、レイス。これからよろしくお願いします。」
「まだ、硬いが、畏まる必要は無い事だけは覚えておいてくれ?」
「分かったよ、レイス。」
僕らは廊下の曲がり角で立ち止まり
レイスが何かしているのを待つ。
これはもしかして?
『道よ開け』
急に目の前に通路が現れた。
「魔法で隠していたのね。」
「ここから出るぞ。行こう。」
「レイス、城を出る前に最後、ルイーゼさんやアルベルトさんに挨拶をしたいんだけど。」
「すまないが、二人は忙しくてな。見送りは出来ないと言われたしまったのだ。」
あの二人が?特にルイーゼさんがそんな事を言うとは思えない。もしかしたら、僕を呼び出した事で諍いでも起きて気まずいんじゃないだろうか?
どうせ帰ってくるしな。ゴブリンなんてどれだけいようと相手にならない。ぱっと行きぱっと帰ってこよう。
「じゃあ、行こうか。」
僕らはその細くて暗い道を通り、外を目指す。
僕らの後ろで扉が音もなく閉まった。
「まだ、見つからないのですか!」
「王女も少年も妖精も見つかりません!」
下がりなさい。と命じて兵士を下げるルイーゼ姫。
「ルイーゼちゃん、少しは落ち着いて。」
「おじ様・・・そうですね。少しお見苦しい姿をお見せしてしまいました。」
「レイスちゃん様子はどうだったんだい?」
「私が取り乱したのは、それが原因です。お姉様は自分の事ばかりか私の事も分からず、ご自身王女という事もお分かりではありませんでした。」
「それは!本当かい?!」
「えぇ、なので、私はついらしくもなく・・・」
「なら、追い掛けるか?」
「いえ、おじ様。今はゴブリン軍との戦争の真っ只中です。お姉様という我が国の切り札がなくなった以上、これ以上札を捨てることはできません。」
「しかし、いや、そうだね。君の言う通りだ。」
「お姉様の武器防具を身に着けて行ったのがせめてもの救いですが・・・」
「本当は、混乱をしておらず、意識があるという可能性は?」
「もしかしたらもしかしたらですがそうかもしれません。ですが、私はお姉様疑うことなど・・・出来ません!」
「そうだったな。・・・それに今更か。」
せめて、何事もなく帰ってくれるといいが・・・
「外は、こんなに広いのか?!」
「青い空!」
「白い雲!」
「この野原!」
「凄いな!お伽話の中の出来事みたいだ!」
洞窟から出た僕らは森に出て
しばらく歩いて草原に出た。
リシア曰く、大草原「ステファニア」という場所らしい。
そこで、レイスは子供のようにはしゃぎまわっている。
・・・いくら王様でも空と雲は見たことあるんじゃ?
「レイスは、自然が好きなの?」
「えぇ、好きよ。こんなにも美しいだなんて。」
無邪気に笑う姿は、冷血でも冷酷でも、王女様のようでもなかった。
「まるで知らないように言うんだね。」
「え?いえ、知らないわ。私は吸血者の中でも強い力を持っていて、日の光の中では歩くことも出来なかったから。」
今は晴天。
真っ白な陽の光が降り注ぐ大草原ど真ん中だ。
「でも、今君は、陽の光の下で、そんなに楽しそうに・・・」
「私は、女神と契約をした。」
「そんな・・・?望みは?!対価は?!!」
「望みは・・・分からない。ただ、陽の光の下で歩けているから、これが望みかな?」
「対価は・・・?」
「『記憶』」
「自分自身構成する多くのものと、強い思いを捧げた。」
それはまるで、僕のような対価。
しかし、僕ほどの強制力は無いようだ。
「君の名前は?」
「レイス、でしょ?私の妹さんが言っていたわ。」
「ただ、本当はよく知らないの。私は私が誰か。分からない。」
「リシア」
「え、なに?ここにいるわよ?」
「彼女を城へ送り届けてくれないか?」
「嫌です。」
答えたのはレイス。
「レイス、君は今混乱をしている」
「いえ、そんな事はありません。私は私が望んだままに生きています。混乱などしていません。」
「口調はしっかりしているが、今の君は僕があった君とは違うように感じるよ?」
「それは、、猫を被っていたのです。」
なんにしろ、女神の司令を叶えるためには、彼女を連れて行かなければいけないんだけど・・・
この人は本当に、僕を喚んだあの王女なのか?
口調も身に纏う雰囲気も何もかも違う。
「わかった。言う事は聞いてもらう。それが条件だ。まず君は身分を隠さなければいけない。わかるね?」
「・・・はい。」
「そうだね。ステファニア、そう、ステファニアと名乗るのはどうだろう?」
「えぇ、わかりました。だから、私をどうか城に返すなどと言わないでください。」
彼女は、ステファニアは蒼い目を潤ませて、僕に訴えかけてきた。
「わかった、ステファニア。一緒に行こう。」
「いいの?この王女様、変よ?少なくとも精神的に不安定だわ。」
「そうかもね。でも、必要なんだ。」
「ふーん?あなたも女神様と契約して、それで必要なの?」
「さぁ、どうだろう?」
「どうやってあなたはオベロン様の元に来たの?」
「それも言えないんだ。」
「もう!そればっかり!妖精の好奇心を嘗めないでよね!」
プンプン言いながら、飛び去っていくリシア。
「あの・・・・すいません。私のせいで。」
謝るステファニア。
「しょうがないよ。僕達は自分の願いを叶えるために一緒にいるんだ。言えない事もある。それに彼女も何かを隠している様だしね。」
僕は、リシアのことを信用しきれていない。
「こうして君を含めて三人は集まった。成り行きで一緒にいるけど、僕らは仲間ではなく、きっと自分の願いを叶えるための協力者。いや、共犯者でしかないんだよ。」
「なぜ、それを私に?」
なんでだ・・・?
「分かりません。ただ、貴女は」
《お兄ちゃん!次はこれを教えて!》
これは、なんだ・・・?
「あの・・・・?大丈夫ですか・・・?」
「あぁ、、もう大丈夫。とにかく僕らはゴブリン軍討伐に向かうからそのつもりでいて欲しい。」
それから僕らは、特に会話もなく近くの街まで歩いた。
警戒しすぎて変なことを言っていたかもしれないと、ベットの中で眠れなかったのは言うまでもない。




