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涼の決意




 魔法学校の入学式の日、俺達は孤児院のみんなに見送られて朝早くに出発した。魔法学校は中央孤児院のある街の中心部から離れた、街の端っこにあるらしい。それも、俺達が来た平野に繋がる方の端っこじゃなく、他の街への道が伸びる方の端っこだ。


 ここしばらくずっと農業で忙しくて下見に行けなかったから迷わないように二人で聞いた道順を確認しながら歩く。それにしても顔のよく似た双子は目立って仕方がない。今まで行動していた範囲を外れると、俺達を知らない人がほとんどで。物珍しそうにジロジロと見られる。


 まあ、日本でもそんなに変わらなかったけどな!大地主で町の実権を握る家と親戚で、子どもだけで暮らす俺達は常に色々な目を向けられてきた。


 父さんが残してくれた土地を貸している人からは遠慮がちに。親戚達から土地を借りたり、関連の仕事をしていたりする人からは関わりたくないと敬遠され。余所から来たそういった関わりの無い人からは親戚や公的機関の手を借りずに暮らしている事が理解されずに、意地を張るなとか割と酷い事も言われた。


 仕方ないだろ。俺達は親戚達が忌避する外国の血が混ざった混血児で、長い間行方知れずで突然帰って来た怪しい父さんの子で。お姉は異端視されるほどの秀才で。俺もお姉も、虐げられながらただ働ける年齢になるまで待つなんて出来なかった。


 児童養護施設?お姉が孤児院を避けたかったのもあるけど、施設に入ったら姉弟でも部屋は離れ離れ。おまけに親戚達が言えばすぐに引き渡される。そんな不安定な環境に身を置くわけにはいかなかった。


 そもそも奴らは、Iターンでやって来た正義感の強い一家の息子が俺と同じクラスになって事情を知って通報するまで、知ってて何もして来なかったんだ。信用できるわけ無いだろ?ちなみにその家族はその後面倒事を起こしたと親戚達の逆鱗に触れて、村八分に耐えられなくて逃げるように引越して行った。俺達は同情するような余裕も無く対応に追われて、なんとかまた二人での暮らしを取り戻した。


 それに親戚達の所へ行ったら最後。父さんはともかく母さんの物は全て処分され、一緒の墓からも出されるかもしれない。俺は高校まで行かせて、親戚の誰かがやってる事業を手伝わせる。お姉は中学を卒業したら親戚か、付き合いのある家に嫁がせる。それが温情だって平気で言うような奴らだ。


 俺と一つしか年の変わらないお姉が何もできない普通の子どもだったら、父さんが死んだ後俺達の人生は悲惨な物になっただろう。


 俺はせめて俺にできる事をしたい。照れくさいから言わないけど、お姉を守れるのは俺だけだから。ほとんど記憶に無い父さんが何度も言っていたから覚えている。お前達はこの世界にたった二人の姉弟だから、何があっても助けあって生きろ。涼は凛香を守って、凛香は涼を助けるんだ。って。


 今日から魔法を覚えて、強くなって魔物に襲われても軽々倒せるような男になる。それで早くお金を貯めて、二人で俺達も一年くらい暮らしたっていう母さんの生まれた国へ行く。


 よし、がんばるぞ!

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