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畑をつくる



 孤児院に戻って来て、自分達の服を手洗いしてから、夜ご飯の支度を手伝っている最中にワーヒドに声をかける。


「ワーヒド、突然ですけど、畑のお手伝いをさせてくれる農家ってありますか?」


「ん?本当に突然だな。どうした?」


「畑の開墾の仕方とこの辺りの土壌に合った肥料とかを教えて貰いたいんです。」


 日本では畑は既に耕してあったし、土壌も野菜が育てられるようになっていた。父さんが両親から受け継いだ先祖代々の土地だ。全くの更地から、この辺りの気候にあった作物が育てられるようになるまで、自力では何年かかるか分からない。ここはプロの手を借りるべきだ。


「畑って、農家に嫁ぐつもりなのか?まあ紹介だけならできるが、受け入れて貰えるかは別だぞ。農家は忙しいからな」


「はい!分かってます。よろしくお願いします」


「よろしくお願いしますっ!」


 涼と一緒に頭を下げて、二人で笑う。これでスタートラインに立てた。翌朝早くにワーヒドに案内されて城壁近くの畑にやって来た。農家の朝は早いから、もう既にいろいろな人が働いている。


 その中の一人、少し気難しそうな老人にワーヒドは深く頭を下げて私達を紹介してくれた。


「ヘイズさん。お久しぶりです。突然すみません。孤児院の新入りが農業を習いたいと言うので連れてきました。まだ小さいのでお役には立てないと思いますが、お手伝いさせてやってくれませんか?」


「ふんっ……本当に役に立たなそうじゃ。だが腹を空かせてまた盗みでもしてはかなわん。面倒を見てやろう」


「ありがとうございます!」


「よろしくお願いします!」


「ヘイズさんは俺が昔畑で野菜泥棒をした時に捕まえた人なんだ。ヘイズさんが面倒がって見てみぬふりをしたり、叩きのめして追い返したりしないで孤児院に連れて行ってくれたから今の俺がある。あまり迷惑かけるなよ」


 ワーヒドはそう言って中等学校へ行ってしまった。なるほど、ヘイズさんとはそういう繋がりがあって、私達に紹介してくれたのか。ワーヒドにとっては恩人みたいなひとなんだね。こりゃあなおさら頑張らなきゃな。


 その日一日は見学に徹した。日本では見た事の無い野菜もあったけど、見た所それほど日本とやり方は変わりなさそうだ。


 二日目からはお手伝いをさせてもらった。ヘイズさんは帰りに見た目が悪かったりで売れない野菜をくれて、その日の孤児院のスープに入った。


 三日目はお手伝いをしながら畑の開梱の仕方を聞いた。肥料は手伝っている内に何を使えばいいか分かった。大体の手順が分かったので、お手伝いを続けながら自分達も開梱を始めることにした。


 ワーヒドは呆れながらも孤児院の周りの土地を耕す許可をくれた。まずはクワを買いに二人で市場へ行く。クワは高かったけど、木製の物ならギリギリ買えた。5000マネ使って残りは340マネ。また薬草採取に行かないといけない。


 ちなみにこうして毎日畑の事にだけ時間を費やしてるのは、今が春休みだからだ。魔法学校の入学式はまだ少し先だ。


 金属製の農機具と違って木製の物は効率が悪い。ヘイズさんのお手伝いをした後、日が暮れるまでの時間ではなかなか進まない。


 ヘイズさんの所へ行き始めてから十日目、開梱から七日目。お手伝いをお休みして、薬草採取で得たお金で肥料を買った。


 少しずつ畑も形になってきて、ヘイズさんが毎回くれる野菜で孤児院の食卓も多少は賑やかになった。


 入学式の前の日。最後のお手伝いに行った。ヘイズさんは途中で音を上げずよく頑張った。うちの孫よりも働いてくれたぞ。と、ご褒美にヘイズさんの奥さんが編んだ麦わら帽子を被せてくれた。これで農作業でも日焼けせずに済む。






気が向いたので書けましたが、投稿再開というわけではないので次回の投稿がいつになるかは分かりません!すみません。

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