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打開策

いや、もう、本当に…お待たせし過ぎですね。更新滞っていて本当に申し訳ありません。



「ていうかさ、ホント不思議にゃんだけど。俺達の体ってどうにゃってるんだろうにゃ?」


 魔法学校に入るまでの長期休み期間中、ある日涼が自分の体を見下ろしながら唐突に切り出した。


「転生してからのこの体の事?」


「おう。この体って、俺達の小さい頃の写真にそっくりやんな?って事は、女になった俺はともかく、お姉は神が時間を巻き戻したりしてこの体にされたって事じゃねーの?」


「そうねー。もしあのままこの世界で育っていたらこんにゃ感じだったのかも。私達は地球に来た時に、神に異世界の能力を封じられたのよ。だから地球では魔法が使えなかった。まだこの世界にいた時、私達が地球に来る直前に私は少しだけ魔法が使えるようににゃっていた事は覚えてるの。」


 その頃の涼は一歳だったからまだ本当の赤ちゃんで、ようやくママ、パパ、ワンワン程度の一語文を話すようになったくらいの時だった。


「まじで!?魔法使いとか小さい時憧れてたのに!…でもさ、小学校に入った時からお姉言ってたよな?体動かす時は加減してやれって。あれはどういう事だったんだ?」


「異世界の能力は封じられたけど、転移者としてのチート能力を貰っていた父さんと、異世界人の母さんの遺伝まではどうする事も出来なかったの。だから、私達が本気を出したら運動会や体力テスト、体育の授業でさえ大変な騒ぎになってしまうかもしれにゃかったのよ。」


 実際、加減して手を抜いてやっても私も涼も自然と体育はオール5だったし。運動会でもマラソン大会でも負け無しだった。


「にゃるほど…えっ?じゃあもしかして俺、何かの競技の有名選手とかににゃれたかもしれんの?」


 そんな風に今さらながら驚く涼に、からかうように笑いながら軽く事実を告げてみる。


「努力すればウサ○ン・ボルトくらいにはにゃれたんじゃない?」


「ええーっ!?黙ってるにゃんて酷いぜ!」


「でも有名ににゃって取材とかで嗅ぎつけられたら困るでしょ?ウチは色々と抱えてるんだからさ。異世界人と転移者のハーフとか、そういう情報は神が必死になって消すだろうけど、母さんがアメリカ国籍を持ってる移民って事になってるのとか、公文書偽造になると思うわ。」


「そりゃスキャンダルだにゃ。そんなら仕方無いか。」


 あっさりと理解した様子なので、さすがに本気では無かったんだろう。その後は二人とも明日に備えて早々に寝た。



 翌日、二人で二度目のプレミーア辺境伯の屋敷に来ていた。孤児院での生活も慣れてきた所だろうし、初等学校も卒業したからという事で、辺境伯に呼び出されたのだ。


「卒業おめでとう。どうかな?孤児院での生活は?」


「はい、おかげ様で。魔法学校にまで行かせて貰える事になって感謝しています。」


「俺も元気でやってます!」


「うむ。それは何よりじゃ。何か困っている事などは無いかな?」


 辺境伯は相変わらず穏やかな雰囲気の優しげなおじさまで、私達の元気そうな様子を見て安心したように頷いて、そう聞いて来た。


「……いえ、今の所大丈夫です。お気遣いありがとうございます。」


 私は一瞬だけ逡巡してからやっぱりやめて、愛想笑いで返した。


「では魔法学校に上がっても勉学に励みなさい。応援しておるからな。」


 辺境伯に帰り際に肩をポンポン押して励まされて、頭を下げてから二人で孤児院への帰り道を行く。



「にゃー、何で相談せんかったん?偉い奴に言ったら一発で解決するんじゃにゃいん?」


 今日も今日とてお腹を空かせた涼の言う事ももっともだ。私もお腹は空いているし、このままで良いとも思っていない。とはいえ…


「横領ってどこまでの人間が関わっているか分からにゃいでしょ?少にゃくとも教会では周知の事実にゃんだし。もし私達が領主様に密告したのがバレたら確実に面倒な事ににゃるでしょうよ。」


「じゃあ俺のこの空腹はどうすりゃいいん…?」


 涼がお腹を抱えてしょんぼりとしている。私にもどうしようもない……わけではない。


「まあまあ、ちょっと試したい事があるから半年ほど待って。」


「半年って…何するつもりだよ?」


「ここ、良いと思わにゃい?」


 そう言って、戻って来た孤児院の裏の空き地の地面にしゃがみこんで触れる。周りは低い塀に囲まれていて、孤児院の敷地の一番奥の端っこに当たる。ここなら普段は誰も来ないし、人目にもつかない。


「良いって何が?日当たりは良さそうだし、土も柔らかそうだから日向ぼっこには良さそうだけど…」


「日向ぼっこって、何それ可愛いっ!でも違うよ。畑にするのに良さそうだと思うんだけど、どう思う?」


「畑か…確かに良さそうだけど、自給自足すんの?農業バイトきつかったじゃん!」


 確かに農業バイトはなかなかきつかった。私達は生きていく為に小学生の時から近所で店番とか子守とか色んなお手伝いをしてお小遣いを貰っていた。


 農業バイトに関しては中学に入ってからは最低時給以上貰っていた。労働基準法はこの際放っておこう。田舎だから他の子もやっていない事は無かったし。


「大丈夫。家庭菜園程度の物だから。さつまいもとじゃがいもときゅうりとなすびととうもろこしとかぼちゃとトマトとスイカと瓜といちごは家で作ってたじゃにゃい。」


 小学校の帰り道で近所のおばさんからさやがついたままの枝豆を貰ったり、玄関の前に誰からのか分からない野菜が置いてあったりする田舎だから。


「ああ。それならほとんどほっとくだけで育つよな。イモ類とかお腹膨れるから最高じゃね?」


「ただ、地球と比べたら肥料の調達が大変よね。家じゃ市販のぼかしとか使ってたけど、土壌も違うだろうし。まあやってる内に何とかにゃるか。」


「早く食いたいぜ!でも種とか買う金どうすんだ?もう探険者ギルドで貰った金も残って無いだろ?」


 そうなのだ。涼の言う通り、今の私達は服を購入した事でまた無一文に戻っている。だから考えた手が…


「外に魔物を倒しに行こうと思います。賛成の人?」


 折角探検者ギルドに登録料を払って入ったんだから、利用しない手は無いだろう。と言う事で多数決を取ってみた。二人しか居ないからあんまり意味ないけど。


「反対!危にゃいだろ?」


「じゃあ涼は留守番で良いのね。」


 思った通りすぐに涼に反対されたから、涼が一番嫌がる事を出して説得する。


「そうは言ってにゃいだろ!」


「せっかく探険者ににゃったんだから、探険してみたくにゃい?」


「えー!それはそうだけどさ。じゃあまずは薬草採取的な物からにしようぜ?」


「その手があったか!テンプレね。よし、そうしよっか!」


 という事で一応満場一致で、今から私達にも受けられそうな依頼が無いか見に行く事になった。



農業関係の話は実はほとんど実話です(^_^;)

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