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辺境伯とロリ姉妹

「・・・はじめまして。

 突然の訪問にも関わらず

 迎え入れてくださってありがとうございます。

 私の名前は、雨宮あまみや 凛香りか

 この子は、()りょうです。」


五歳くらいに見える見た目とは反した完璧な笑みを浮かべる凛香に、辺境伯は驚いたような声を上げる。


「・・・ほう・・・・・・!

 なるほど、賢そうな娘だな。

 うむ。大体の話しは先に来た者(門番)に聞いた。

 ひとまず座ってから

 詳しい話しを聞かせてもらおう。」


そして、辺境伯はそう言ってソファーに座るように促す。


「はい。失礼します。」


凛香がそう言って座り、涼も続いてソファーに座ったのを確認すると、辺境伯はうむ と、一度頷いてから話しだす。


「お嬢さん達は、ニホンという国に住んでいたんだね?

 そして、昨日気付いたらこの町の近くにいたと。」


「はい。そうです。」


「うむ。それで、一先ず町を目指して歩き、

 夜は森のそばで過ごしたと。」


「はい。」


「その時に魔物に襲われ、それらを全て倒した。

 それで、間違いないかい?」


「はい。間違いありません。

 もっとも、その時はその獣達が

 魔物だとは知りませんでしたが。」


「ふむ。そうか。

 それは大変だったな。

 ニホンという国は遠いと聞いたが、

 この国や近隣の国に頼れる人はいるのかい?」


「・・・いえ。

 ディヴァインヘルツ王国にならあるいは・・・

 とも、思いますが、確実ではありません。」


「なるほど。

 ディヴァインヘルツ王国は君たちの

 母君の出身国だと聞いたが、

 君たちは行った事はないんだね?」


「ええ。

 私が二歳の時に日本へ移り住むまでは

 ディヴァインヘルツ王国に住んでいたそうなのですが

 幼い時の話ですのであまり記憶がありません。

 ですので、行った事がないのと同然かと思います。」


「・・・そうか。

 しかし、それではどうしようもないの。

 なにせ、ディヴァインヘルツ王国は

 この国とは国交が無い上に

 この国とは離れすぎておる。」


それを聞いた凛香は、残念そうに目を伏せる。


「・・・そうですか。

 ・・・・・・そうですよね。

 ちなみに、どのくらい離れているのですか?」


「・・・それがな、この国の

 ほぼ真裏に位置する場所にあるのじゃ。

 この星が丸い事は知っているじゃろう?」


「・・・!」


「・・・!

 えっ!それってまさか、

 日本とブラジルくらい離れてるって事?」


涼が驚いて叫ぶように聞く。


「はて?ブラジルとは何ですかな?

 聞いた事がありませぬが・・・」


涼の言葉に訳が分からず、困惑した様子の辺境伯に


「辺境伯様、気にしないでください。」


と、凛香はそう言って簡単にいなす。


「涼、それくらい離れてるみたいね。」


「そんなに、離れてたらどうすんだよ!

 この世界にも飛行機とかあるの?」


「さあ?分からないけど無いかもね?

 とりあえず、しばらく黙って聞いてなさい。」


「・・・分かった。」


「という事で、話は戻りますが

 もし、ディヴァインヘルツ王国に行くとしたら

 時間とお金はどのくらいかかりますか?」


「・・・・・・さあな〜?

 その様に遠くまでは行った事も無いし

 周りにその様な者もおらんのでな。

 だが、相当の金と時間がかかる事は

 間違い無いだろうな。」


「・・・そうですか。

 では、今の所は諦めるしかない様ですね。」


「・・・ああ。そうだな。

 申し訳ないがこちらもそこまではしてやれん。」


「いえ。こちらもそこまでして頂くつもりはありませんし、

 町へ入れて頂き、こうして話しを

 聞いて頂けているだけで有りがたいですから。」


「そう言ってくれると助かる。

 今後の事だが、こちらも出来るだけ配慮はしよう。

 何か、希望はあるか?」


「はい。

 大変心苦しいのですが、

 衣食住を確保したいので出来れば

 お金を少し貸して頂きたいのです。

 もしくは、どこか住み込みで

 働ける所でもあればいいのですが・・・

 こちらは贅沢を言える立場でも無いので

 とりあえず、この町での滞在を

 許して頂ければ幸いです。」


「なんと、それだけか?

 もしや、たった二人で生きて行こうと

 思っているのではあるまいな?」


「はい。出来ればそうしたいと思っています。

 人様に迷惑をかける訳にはいきませんので。」


「なんと・・・!

 子どもの身でその様な事は考えなくてもいい!

 親がいないのであれば、孤児院を頼ればいいのだ。

 子どもが無理に働く必要は無い。

 それに、すでにこの町での滞在許可は

 この町に入った時点で出ている。

 そこまで、遠慮しなくてもよいのじゃ。」


「滞在許可はありがとうございます。

 しかし、それ以上を頼るのは

 心苦しいといいますか・・・」


「しかし、身よりの無い

 子どもを放って置く訳にはいかん。

 それに、まだ五歳の子どもを

 雇ってくれる所はないだろう。

 というより、その様な悪質な場所は

 私が厳しく取り締まっているから無い。

 だから、孤児院に入ったほうがいい。

 孤児院でなら、衣食住も整っているし

 心配は無いのだから。」


「・・・そうですね。

 ここは、私達のいた国では無いのだし、

 それに、日本でも前はお父さんが遺してくれた

 家と土地があったからなんとかやっていけただけで

 多分それが無かったら

 施設に入る事になっていたのでしょうし・・・」


「そうじゃな。

 この国には、君たちの知り合いはいないのだろう?

 日本という国とは違うのだ。

 その辺りも考えた方がいい。」


「・・・・・・そうですね。

 では、孤児院に入れて頂こうと思います。」


「そうか!

 入ってくれるか。

 それでは、さっそく手配させる。

 今日は疲れただろう。

 部屋を用意させるから

 今日はここに泊まっていきなさい。

 孤児院には明日の昼ごろに連れて行こう。」


「はい。

 何から何まで、ありがとうございます。

 よろしくお願いいたします。」


そう言って、深く頭を下げる凛香に『子どもらしくない、かといって大人でもない不思議な子じゃな。』と辺境伯は心の中で首を傾げたのだった。



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