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娘よ、大志を抱け  作者: 匿名社員
束の間の平穏。又の名を、嵐の前の静けさ
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第18話 ようこそ、ブラック企業へ

お久し振りです。

投稿したはいいものの、まだ完結まで書き終わってないので、取り敢えず出来てる分だけ投稿。

な、なんとか書き終える……コフッ

私立総合学校。

それは、学術都市という、一種の国━━厳密には国では無いが━━に存在する。


広大な敷地にそびえ立つ、城と見間違う程に大きな校舎。だが、中は魔術によって見た目以上に広く拡張されている。

敷地内には緑が溢れ、泉や迷宮、馬舎や竜舎、家畜小屋なども存在する。


青く澄み渡った空の下、敷地内の大きな広野に、千を超える生徒が集まっていた。


「皆さん、今日から新学期が始まります。後期からは本格的な授業が始まる事を、皆さんは知っていますよね? 」


壇上で、頼り無さそうな若い男性が話している。

夏が過ぎ、秋に入ったが暑い事に変わりはなく、外に立たされ、長い事話を聞かされていた生徒達はグンナリとしている。


「そこで、外部から特別講師をお呼びしました」


だが、特別講師という単語で、生徒達に活気が出てきた。


「新しい先生か……誰だろ?」

「女の先生がいいなぁ……」

「鞭と蝋と三角木馬の三点セットが似合うお姉様系がいいな」

「ここに同志が居たか!」

「俺もだぜ!」

『集え! 同志達よ!』

「おぉ!」


やはり、男子生徒はアホのようだ。


「ねぇねぇ、女の先生だったらどうする?」

「わ、私は……優しい先生が、いいです」

「もしかしたら……弱みにつけ込まれて強制的に教師をやる事になった先生だったりして」

「え⁉︎ 何それ事情が黒過ぎでしょ」

「……凌辱……されてたりして……」

「そんな……可哀想……」

「なにそれ燃える」

「……え?」

「強引な殿方って、いいわよね」

「そ、そうね……」

「壁ドンからの顎クイ、ディープからの認識阻害をかけた野外プレイ」

「……ジュルル」

「どうしよ……男の先生だったら、私、用意しとかないと」

「……は⁉︎ まさか、超絶イケメン⁉︎」

「玉の輿⁉︎」

「乗るしか無いわ! この、ビッグウェーブに!」


残念。女子生徒もアホだった。


「みなさーん! 静かにしてくださーい!」


生徒達の反応が良く、いや、良過ぎたせいで、壇上から発された声が生徒達に届く事はなく、喧噪に揉み消されてしまった。


「すみませんね、カグネ先生。煩くて」


壇上で話していた先生が、腰を低くしながらそう言った。


「いえ、大丈夫です。それより……」

カグネの口が、ニィっと釣り上がる。


「少し、生徒達を驚かしても宜しいでしょうか」


「ええ、どうぞ。ぶちかまして下さい」

先生の目が笑っていた。

好きなだけやれ……と、言っているのだろう。


「では、カグネ先生……どうぞ。壇上にお上りください」


カグネが、影から壇上に上がる。


「さて……私が、少しばかり驚かせてあげましょう」


カグネが、懐から木製の手裏剣を取り出した。


「ちょっとした絵を描きましょうか」


手裏剣を、空めがけて幾つも投げる。


放たれたそれは宙で弧を描きながら、青い煙を撒き散らしていく。


「さてさて、ここからが見せ場」


今度は、懐から鉄製の針を取り出し、煙の中心地めがけて放った。


『避雷針』


針が煙の中に入った時、突如として、轟音が校庭に響いた。


「な、なんだ⁉︎」

「お、おい⁉︎ あれ見てみろよ!」

「煙が集まって……⁉︎」


ふと、1人が溢した。


「りゅ、龍だ……」

「東の大陸に住んでると言われてる、ドラゴンだ……」

「ドラゴン……」


『グォォォォォォォ!』


空のように青い龍は一鳴きすると、そのまま空の彼方へと消えていった。


状況の変化に追いつけず、場が礼拝中の教会のように静まり返る。


「皆さん、お楽しみ頂けましたでしょうか?」


無音の世界に、音が生まれた。

放心していた生徒達が、ふと我に帰る。


「……び、びっくりしたぁ」

「あぁ、心臓に悪かった」

「本物かと思っちゃったよ」

「凄い幻術だったねぇ」


静まり返っていた空気が、先程の幻術の話題で持ちきりになる。


そんな中で、ニヤリと笑ったカグネ。


「いやぁカグネ先生。凄い幻術でしたねぇ。本職にも負けず劣らずでしたよ」


「いえいえ、ありがとうございます」


不敵な笑みを浮かべまま返すが━━


━━やっべ、滑ったかと思った〜。本当に焦った〜。ポーカーフェイスって、やっぱり大事だわ。


カグネの内心は、それで埋め尽くされていた。


「はーい、皆さん静かにしてくださーい。皆さんはこれから教室に戻って、担任の先生から後期の予定を聞いて下さ〜い。はい! 解散!」


生徒達の興奮は冷めること無く、より一層騒ぎは大きくなる。移動中も、先程の光景が話題になり、静まることは無かった。


「それではカグネ先生。一度、職員室へ戻りますか」


「そうですね」


提案に乗り、一度そこへ引き返す。


「にしてもあの幻術、どうやったんですか?」


帰り道、彼は急にそんな事を聞いて来た。


「……仕事に関わるから、秘密」


「ですよねー。」


その場は、お互い笑って終わらせた。


ただ……なんだか、嫌な予感がする。




▼▼▼




『迷宮案内人』

それが、私の仕事だ。

でも、それは表向きの身分。

本当の目的は違う。


「ここが、大図書館……」


日の当たらない地下にある大図書館。風通しは良く、湿気は少ない。匂いは外と大差無く、温度も丁度いい。

この場には、その名に違わず見渡す限り書物しか見当たらない。

羊皮紙、紙、パピルス、石板。

ありとあらゆる情報の詰まった書物達。


そして……


「ここが、第一の審議の門……」


大図書館内の特定のタイルを捲り、螺旋状の階段を伝って下へ降り、石で周囲が固められた道を進んで行くと、この巨大な門が現れる。


恐らく、なんらかの金属で出来た門の両端の柱には、獅子の顔が埋め込まれている。

宝石で出来た獅子の瞳に手を触れ、魔力を流し込む。


『汝、問いに答えよ。汝は魔法使いであるか?』


頭の中に、低く威厳のある声が響いた。

これが審議。間違えれば、門の向こうには行くことが出来ない。


「いいえ」


『汝、第二の問いに応えよ。汝は何者か』


「見習い錬金術士だ」


『証明してみせよ』


うーん……どうするか。

作り変えるのなら、慣れてて簡単かな。


水銀を地面に垂らし、陣を描いていく。


「ハァァァイ!」


テキトーな掛け声と共に、水銀が水に変わる。


ぶっちゃけ、法則とかが分かっちゃえば詠唱とか要らないし。

魔術陣だけで出来るし。

演算とかしないといけないのは面倒だけど。


『よろしい。通れ』


魔法使いはここを通る事が出来ない。何故なら、魔法使いは神の力を借りているだけなのだから。

通れるのは魔術師以上の者だけだ。


音を立てながら、門がゆっくりと開いた。


私の目的の情報は、一体何処に有るのか分からない。

行けるところまで行くしかないだろう。


門が、音を立てながらゆっくりと閉まっていく。

それを後にし、歩みを進める。


『汝、道を危むるべからず……』


ふと、頭に声が木霊した。


「道を危むるべからず、か……」


もう、危ない道を歩んできたんだけどね。




『ほいほーいカグネちゃん。聞こえてるかーい?』


「はぁ……もうそんな時間?」


頭に、校長の声が響いた。


『迷宮に行きたいって生徒達の申請書がある程度溜まっててね。今日の放課後には案内してくれると嬉しいんだけど』


「はぁ……分かった」


たしか、各階層に司書が居るはず。

そこで手続きを済ませれば、次から直ぐに其処に行けるとかなんとか……言ってた気がする。


手続きしてからでも問題ないよね。うん。




▼▼▼


校舎の、とある教室が迷宮探索の相談室である。


『お願いします!』


4人の声が綺麗に揃った挨拶だ。


「はいよろしく。で、難易度はどうするの?」


「えぇと……オススメはありますか?」


は? オススメ? 舐めてんのかこいつら。いっそのことここでぶっ殺してやろうか。


って、ダメダメ。怒っちゃいけない。怒ったら虐殺しちゃう。


「そうねぇ……みんなは初等部の1年生かな?」


見た感じ6〜8歳ぐらいだし、まぁ勧めるとしたら初級かな。


「はい……えっと、俺が3年生で、みんなが1年生です」


へー。ヒョロイから3年生には見えなかったな。背も低いし童顔だし。


「それじゃ、自己紹介をしようか。得意な事とか、苦手な事を言ってね」


「はい。僕が3年生のルーマです。村にいた時に剣を習ってたので、少しだけ得意です。後、火の魔法以外出来ません。よろしくお願いします」


へぇ珍しい。髪も真っ赤だ。火の精霊に好かれてるのかな。

愛称はレッドでいいや。


「俺! 1年のガルヴァ! 爺ちゃんに喧嘩習ってた! なんか、難しい事は分かんね!」


たしかに筋肉の付きかたが違う。髪はありふれた焦げた茶髪。

愛称は脳筋で。


「エリルです。えぇと……喧嘩は苦手です。支援系の魔法が出来ます」


軟弱系男子。ありふれた茶髪。

愛称はヒモ野郎で。


「フィニルです。攻撃魔法が得意です。でも、防御とかはちょっと……」


固定砲台系女子。

明るい茶髪。

愛称は……逆ハーでいいか。


「うーん……まぁ、やっぱりオススメは初級かな」


「えー! 俺だったら上級ぐらい楽しょぶぇぇ!」


「おっとっと。手が滑ってしまった」


手が滑った勢いで頭を掴み、地面に埋め込んでしまうとは、やっぱり私はまだまだ修行が足りないな。


「え、えぇと……その……」


「大丈夫。気にしないで。手が滑っただけだから、死にはしてないわ」


「いや、そういう問題じゃ……」


うるせぇぞレッド。

引き抜いて安全が確認できりゃいいんだろ?

それで文句ねぇだろ?


「あぶぉ……」


ズポッ、という音がこれ程に似合う光景は、中々見つからないだろう。


「えへへ……ベロニーグルゥ……」


あ……ダメだこれ。異常をきたしちゃってる。


「……ゴメン。何言ってんのか分かんない」


「どうせなら脳筋が治れば良かったのに、悪化しちゃったね」


「だ、大丈夫じゃなかった頭が更に悪化しちゃったよぉぉ……」


あ、コイツやっぱり人望無かったんだ。


……いや、そういう事か。

肉壁役か。脳筋だし。


肉壁が敵を受け付け、支援をしながら剣が敵を撹乱。

肉壁に敵が集まったところで、肉壁諸共最大火力で粉微塵にする。


……うん。悪くない。


レッド、ヒモ、逆ハーを集めてそれを話すと、いい作戦だと共感してくれた。


「それじゃ、行ってらっしゃい」


「はい! 行ってきます!」


「ありがとうございました!」


「ヒャッハー! 俺の武勇伝を見せつけてやるぜー!」


「ありがとうございました! 肉壁って大事ですね!」


「うんうん。みんな頑張ってね!」


よし。一仕事仕事終えたし帰るか。


「カグネせんせー! 次のグループお願いしまーす!」


……は?


ここまでお読み頂きありがとうございました

誤字脱字指摘、アドバイス、評価感想等

お待ちしております。

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