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娘よ、大志を抱け  作者: 匿名社員
冒険その2
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第15話 ちゃんと冒険者始めました

冒険者って、誰でもなれるからスパイの仮身分として使えるよね(白目

「はい、よく頑張りました。カグネちゃんは無事にCCCランクになりました」


「どうも」


渡されたギルドカードを眺めるが、特に変わったような様子は見られない。


「これで、Bランクに一歩近づいたわね」


「うん……まぁ」


「あら、どうしたの? 浮かない顔して」


「ランク上げたら、なんかいい事あるのかなぁ……って」


「色々あるじゃない。ランクが上がったら、宿屋が無料になったり、屋台のご飯とか色々と値引きされたり……信用度が上がったり、それで貴族と繋がりが出来て国の犬に成り下が……ゲフンゲフン」


「ちょっと! 最後に不穏な言葉が聞こえたんだけど!」


「ま、まぁ、色々といい事があるわよ! 領地貰って安定した生活したりとか! ね!」


「う、うーん……旅したいんだけれど……」


「旅、ねぇ……旅も色々と問題が……」


「え? あるの?」


ちょっと、困るんだけど。


「いやー……あれなんだよね。冒険者って誰でも簡単に成れるから、スパイとして使いやすい身分なんだよね。だから、冒険者ギルドを取り壊したりして、冒険者が立ち入れないようにしてる国もあるんだよねぇ」


「えー……面倒臭い」


「だから冒険者ギルドもそこの所に注意して、貴族とか国の人間は、依頼で国外に出られないように規制してるの」


「……メンドくさ」


「そうなのよねぇ……冒険者ギルドはあくまで中立だけど、冒険者が中立かどうかは分からないのよねぇ」


「なんて、面倒な……」


思わず頭を抱えてしまう。


「まぁ、Aランクぐらいになれば最早人外の域に片足突っ込んでるし、強行突破も可能になるんじゃない? 『強行突破される』と『大人しく街に入れてあげる』の、どちらを選ぶかと聞かれたら、私は即座に『大人しく街に入れてあげる』方を選ぶわ」


「まぁ、被害を考えたら街に入れてあげた方がいいけど……後で闇討ちされたりするんじゃ」


「いや、それは無いわ。冒険者ギルドは中立だけど、組織は世界規模の大きさ。冒険者ギルドの一員に手を出したとなれば、全力でその国その組織を潰しにいくわ。冒険者ギルドは、国境も土地も無い国。でも、世界を制覇し、覇権を握った国。そんなギルドに喧嘩吹っかけても、いい事なんて何も無いわよ」


「でも、証拠が無ければ……」


「それは……その……」


目が泳いでる。


「と、とにかく! ランクが高くなれば大抵の国に出入り出来るようになるわ! 旅するにはいいでしょ!」


「そう、なのかもしれない……」


「かもしれないじゃなくて、そう!」


「そ、そうなのか⁉︎」


「そうなのよ! さぁ! 今日も元気に依頼を受けなさい! ほら、これとかどう⁉︎ よさそうでしょ⁉︎」


「そ、そうだね! 報酬沢山!」


「商人の護衛をするだけでこんなに貰えるのよ!凄いでしょ!」


「凄い! 簡単そう!」


「なんと! 護衛する日数は驚異のたった3日! 険しい道を行く代わりに、高速で街へと移動できるのよ!」


「おぉ!」


「他にも受ける人が居るけど受ける? 勿論受けるわよね!」


「勿論!」


「ハイありがとうございました! 明日の明け方ギルドに集合して下さい」


「分かった! じゃあね!」


「カグネちゃんバイバーイ」


手を振ってギルドから出て行く。

今日はリリアちゃんと遊ぼう!



━━━━━━━━━━━━━━━━━


「……ふぅ。なんとかやり込めたかぁ」


あーあ、疲れた。私早口苦手なのよねぇ。自分でも、よく噛まずに話せたと思うわ。


「はーあ。カグネちゃんは優秀だけど、トラブルメーカーなのよねぇ。」


魔物の殲滅でとんでもない範囲を抉るは、尻を触ってきた冒険者の腕を削ぎ落とすは、屋台の品を食べ尽くすは……


「あぁ……暫くの間山の向こう側の街に居てくれないと、私の胃に穴が空きそうだわ」


思わずお腹に手を当ててしまう。


「もう、嫌ぁ……」


「何が嫌なんだい?」


「あ、ギルド長……」


振り向くと、いつもニコニコ笑顔のギルド長が居た。


「まま、話を聞くだけだからさぁ……休憩部屋行く?」


「愚痴になりますが、いいですか?」


「部下の面倒を見るのは、上司の義務みたいなもんだからねぇ。ほら、ついて来なよ。カウンター閉めちゃっていいからさ」


「……はい」



ギルド長に付いて行き、職員用通路を通って休憩部屋に入る。


「ほら、座って座って」


「……失礼します」


「礼儀なんてそんなのいいからいいから。何か飲む?」


「あ、お水をお願いします」


「分かったよ。ちょっと待ってて」


……ん? ちょっと待てよ。


「なんで私ギルド長にお水頼んでるのよ。上司に頼むって、私はアホか」


あーもー。私のバカ。


「はーいお水持ってきたよー」


「あ、どうも、ありがとうございます」


取り敢えず一口。


「……はぁ」


「……それで? 何が嫌だったの?」


もう、いいや。


「実はですね……」


仕事で忙しい上司相手にひたすら愚痴を言う部下が何処にいる。

……私の事だよ。


もう、溜まってた鬱憤全て吐き出す勢いで話してしまった。


ギルド長も「うん、うん」なんていいタイミングで相槌打つから、ドンドン話してしまったじゃない。


「……はぁ、すみません」


一通り話した癖に、今更謝っても遅いって。


「いやー……カグネちゃんって、僕には雲の上の存在だね」


「まぁ、仕方ありません。高ランクの冒険者は、半分人間辞めたような者です。伝説になった夢想旅団なんてきっと、いや、絶対に人間辞めてますね」


「ハハハ。僕も冒険者に憧れたけど、身をもって味わったよ。僕には度胸も無いし、戦いの才能も無いってね。でも、諦めきれなくてさ」


「だから冒険者ギルドの纏め役に?」


「そうだね。事務処理能力が有れば採用されるからね。僕は嬉しくて、直ぐに飛びついたさ」


頭をポリポリと掻きながらまた、ハハハと笑うギルド長。


「それで、スッキリした?」


「……まぁ、つっかえてた物が取れた感じはしますね」


「じゃあ、僕は仕事に戻るよ。調子に乗ってあんな事言ったけど、やっぱり僕にあんなクサイ台詞似合わ無いね」


部屋の外から顔だけ中に出し、「じゃあね」と言ってギルド長は去って行った。


「あーあ……2時間も話しっぱなしって、私バカでしょ」


どう考えても、仕事の迷惑だったわ。

あーあ……やっちゃった。ギルド長に迷惑かけちゃった。


「……ま、仕方ないか。スッキリしたからその分働けって事ですね。ハイハイ頑張ります……よっと」


椅子から立ち上がり、伸びをする。


「あ〜……気持ちい〜」


固まった筋肉が解れ、骨がパキポキと音を立てる。


「さて、気合入れて働きますか」


仕事場(カウンター)に向かい、歩みを進める。


「大変だ大変だ!」


「どうしたの?」


カウンターに着いたタイミングで、男が現れた。


「く、黒髪の女が! 強姦魔で指名手配された男の四肢が削ぎ落とされた状態で、引き摺りながらコッチへ向かってる!」


黒髪、男嫌い、指名手配されてる強姦魔って事は確か、元BBランクだった筈。

つまり、実力のある黒髪の女……ん?

黒髪って、この街でカグネちゃんじゃなかったっけ?


「何やってるのよ馬鹿ぁぁぁぁ!」


もうやだ。胃が痛い。晒し者としてはいいかもしれ無いけど、子供の目には刺激が強過ぎるわよ……。




━━━━━━━━━━━━━━━━━




「グモォ」


深い森の中、二足歩行をする猪のような生き物が声を上げた。

人からは、『オーク』と呼ばれる魔物である。


そのオークの足元には、身体と首がお別れしたオークの死体がある。


「グモォォォォォォォ」


口から唾を撒き散らしながら太い声を上げる。しばらくすると、辺りからゾロゾロとオークが集まってくる。


「グモォ(どけ)」


手足が人の様に発達したオークが声を発すると、周りのオークが離れて死んでしまったオークの元へと道が出来る。


「グムモォ(この傷は……)」


「グモモォ(ヒトの仕業だろう)」


奥から、似た様なオークが現れる。


「グブォ! グモォォォ!(おのれヒトめ。同胞を殺すとは許さん)」


最初に現れた、手足の発達したオークが声を荒げる。

それもそうだろう。仲間を殺されたのだから、悲しいに決まっている。


「グモォ(復讐だ)」


「グモォォォォォォォ!(復讐だぁぁぁぁぁぁ!)」


周りのオークも、同じ様に声を上げる。


悪夢は、これから始まる。




━━━━━━━━━━━━━━━━━




低い音が、断続的に続く。


「おい! なんだあれは⁉︎」


村人の1人が指を指した。


「あれは……オークだ! オークの大群だ! 逃げろ! 逃げるんだぁ!」


村人の1人が、半狂乱したように叫ぶ。


「戦えない奴は逃げろ! 戦える奴は武器を持て!」


「足を怪我して引退したが、今日限り冒険者として働いてやるよ!」


中年のおっさんが、膝を摩りながら剣を取る。いつの間にか完全装備である。


「大地神ニーナルよ、その慈愛の心と堅牢なる意志にて、我等の身をお守り下さい『ストーンウォール』」


「ジジイ! テメェ魔法使えたのか⁉︎」


「ジジイを舐めんな、この若造が!」


ジジイもチャッカリ杖を装備している。

ジジイの魔法により、オーク達が攻めて来る方向には高さ4m程の壁が立ちはだかる。


「弓を使える奴らは上から狙え!」


ジジイマジグッジョブ!

弓を使える奴らは、親指を立てながら壁に梯子をかけて登る。


「さて、老い先も短いことじゃ。全力で行くかのぉ」


村人達は、既に死ぬ事が分かってしまっている。いくらなんでも、オークの量が多過ぎる。


「テメェら! 死ぬ気で皆殺しにしろ!」


「言わなくてもわかってらぁ!」


「ぼ、ぼくも……手伝える事がありますか?」


少年が1人、話しかけた


「坊主……テメェには風神の加護がある。その加護の力を借りて、急いで街まで走れ! この事を、衛兵とギルドに伝えるんだ! いいな!」


「でも、ぼくは役に立ちた……」


「雑魚は引っ込んでろ!」


「ひっ……」


男の剣幕に、思わず後ろに下がる。


「お前が街に行き、この事を伝える事。それが、1番役に立つ事だ。ほら、さっさと行けぇっ!」


「わ、分かったぁっ!」


少年は走る。先に逃げていた集団も追い抜き、馬よりも速い速度で走る。


「(早く、早く、伝えないと……)」




━━━━━━━━━━━━━━━━━




バタン! と、勢いを立てながら、冒険者ギルドの扉が開かれた。


「誰か、僕の村を助けて下さい! お願いします! オークが! オークの群れが攻めて来たんです!」


冒険者ギルドの戸を開けたのは、10歳ぐらいの少年だった。


「報酬金は、幾ら出せますか?」


「そんな事より! 早く助けてよ!」


受付係の問いは無慈悲だった。少年の悲痛な叫びがギルドの中を駆け抜ける。


「どうするよ」「命が惜しいからな」

「オークの群れとか、C以上じゃないと無理だぜ? 俺達じゃ無理」


ギルド内を、ざわめきが広がる。


「……俺行くわ」


騒めきの中、1人のおっさんが立ち上がった。


「あんた、まさか……その槍」


「おう、Bランク冒険者だ。二つ名は幻槍(ファントム)。多対一は得意だから、任せておけ」


おっさんは親指を立て、少年に笑いかけた。


「本当に、本当に助けてくれるの⁉︎」


「あぁ、勿論だ。」


「ありがと! 頼んだら兵士の人達も来てくれるって!」


「その選択はある意味正しいぜ。兵士は時間がかかるが、冒険者は直ぐに出れるからな。ほれ、背中に乗れ。運んでやる」


「分かった。方向教えるよ」


「……あい分かった。しっかり捕まれよ」


少年を背負ったおっさんは、ギルドに強風を残して消えてった。



〜〜〜



「坊主、ここを真っ直ぐか?」


「うん。川を飛び越え沼地を飛び越え、森を抜けたら着くんだ」


「あいよ。しっかり掴まれ。速度上げる」


「は、速っ⁉︎」


その速さと身のこなし、まさに風の如し。長い川を飛び越え、沼地も飛び越え、時には木々の枝を伝って走る。


恐ろしい速さで移動した彼らだったが、村に着いた時、彼らは暴虐の限りを目の当たりにした。


「アァァァァァァァァァァ!」


屍の山が築かれた紅い平原の中、ナニカ分からぬ者が少女を抱き抱え、ひたすら泣き叫んでいた。


「ガアァァァァァァァァァ!」


ナニカには、肥大化した右腕には竜のような鱗が。

鱗で覆われた、竜のような太い脚と尻尾。背中からは、大の大人2人が余裕で入るであろう、まるで蝙蝠のような翼。

側頭部からは捩れた角が生えている。

顔の左半分は鱗で覆われ、もう半分は血の涙で真っ赤に染まり、瞳孔は縦に長く、瞳の色は赤色に染まり、知性は感じられなかった。


こいつは……化け物だ。魔物なんて生温い(もん)じゃない。


「これはマズイな……周囲の魔力が呼応して、奴の体内へ急速に吸われている。坊主、お前は森に隠れてろ」


「わ、分かった」


「絶対に出てくるなよ!」


何故か俺は、化け物に対して既視感を覚えた。

だが、思い出すどころではなかった。


「ア、アァア、ア……」


ギョロリと、奴の瞳が此方を捉えた。奴の縦に割れた瞳孔が此方を見つめ、ピクリとも動じない。


「こいつはヤベェな……クソ。なんで俺はこんなにも厄介事に巻き込まれるんだ」


今回ばかりは、生きて帰れる自身が無い。


「あーあ……どうせなら、カグネちゃんに一杯注いでもらってから死にたかったぜ」


あーいけねぇ。1人で居る事が多いと、つい独り言が増えちまう。困った癖だ。


「ア……」


異形の者が、そっと少女を地に下ろした。


「コ……ロ、死……殺……滅……」


「人の言葉を話せるのか……一体、何者なんだ?」


「アァァァァァァァァァァ!」


化け物の声が、世界を刹那の間震わせた。


「……」


おいおいおいおい! さっきカッコつけちゃったけど、どうすんのこれ⁉︎


ここまでお読み頂きありがとうございました

誤字脱字指摘、アドバイス、評価感想等

お待ちしております。


次回更新は明日の朝8時頃の予定



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