第4話 テンプレを攻略せよ
あぁ……疲れた。
追記
若干修正
『……今日から、コウヤに特訓をつける。』
『サー! イエッサー!』
街の外、森の近くの平野でやり取りをする。
『……まず、戦う上で一番大事な事は、絶対に屈しない、強固な『覚悟』を決めること。』
『……なんで覚悟?』
『……もう失うものが無い、最初から死ぬ気の者、もう助からない手負いの者は、とても強い……なぜなら、死を覚悟した上で、相手を道連れにしようとするから。』
『あぁ……確かにそうだな。』
コウヤは納得したようで、うんうんと頷いている。
『……戦う上で大事な事は他にも沢山あるけど、今は体力をつけるのが一番大事。』
『確かにそうだな。足が速くて体力があったら、生存確率が少しでも上がるからな。やっぱり逃げるのが最善の選択だな。』
『……だから、これから筋トレ頑張って。私は、依頼の薬草を探して来るから。』
『あー、分かった。で、内容は?』
『……取り敢えず。』
そう言って私は足元にある石をおもむろに拾い、森の方へ向かって投げた。
『ブモォォォォォォォォォォ!』
『……全力で逃げてね。』
『えっ!? ちょっ! 待っ!』
私は気配を消し、その場から跳び上がって森の木の上に移動する。
それと同時に、猪のような見た目の魔獣が森から飛び出し、丁度目の前に居たコウヤ目掛けて突進を始めた。
『ブモォォォォォォォォォォ!』
『死にたく無いぃぃぃぃ!』
轢き殺されたくないため、コウヤは絶対に走る事になる。
一番簡単な、体力と気力、それに根性もつく特訓だと思う。
私は、依頼の薬草を探そう。
多分、あのくらいじゃコウヤは死なないだろうし……多分。
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アカン!
マジでアカン!
『ブモォォォォォォォォォォ!』
後ろからイノシシみたいな茶色くて大きな6足歩行の生き物が、涎を撒き散らしながら猛スピードで迫ってくる。
イノシシだったらまだよかったんだろうが、口から凄く長い上向きの牙が二本見えている。
てか、涎をどうにかしろ。
もう、こいつはイノシシではない。
チーターみたいな速さと、ライオンのような強さを兼ね備えた、イノシシキングだ。うん、生き残れるか心配になってきた。
後ろを振り返ってみる。
『嘘!?』
あんなに離れていた距離が、もう残り2メートルぐらいしかない。
そのせいで、涎が背中にかかりそうだ。
『ブモォォォォォォォォォォ!』
『フッ!』
イノシシの突進を、横に飛んで回避する。
『ぜぇ……ぜぇ、マジで死ぬ。てか、涎汚すぎるんだよ。お前が通った道、涎で汚れてんだけど。本当に汚ねえ』
どうやら、闘牛みたく横に回避すればいいらしい。涎も回避出来る。
イノシシは突進の勢いを中々抑えられずに、俺から少しづつ離れていく。
『ま、対処法が分かったし、これで死ににくくなっただろう。』
ふぅ、と一息つく。
『ブモォォォォォォォ!』
『……え?』
恐る恐る後ろを振り返ると、
『『『『ブモォォォォォ!』』』』
イノシシの大群が、俺に迫ってきていた。
『チクショォォォォォォォォォ!』
俺は、イノシシとの命を賭けた、多対一での鬼ごっこを始めた。
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……よし、薬草も集まったし、邪魔な魔獣は追い払えた。
よかった。
コウヤに、もう逃げなくてもいいって教えないと。
そう思い、気配を探ると……
『あ……』
沢山のイノシシ型の魔獣に追いかけられていた。
コウヤは、なんとか生き延びているみたいだ。
良かった。
私のせいで死なれたら、良心が痛む。
よし、助けに行こう。
足元の地面を硬化させ、全力で踏み込み、大きく一歩を踏み出す。
ドン! という音と共に、一瞬で魔獣の大群の最後尾に辿り着く。
多分、売ればそれなりにお金になる筈だから、傷つけないように倒そう。
魔獣の大群の上、背中を走って最前列に移動し、コウヤを抱きかかえて離脱する。
『は、速ぇ!』
横に移動した私達を無視して、魔獣達はそのまま走り過ぎる。
『た、助かったぁ……。』
コウヤは、安堵と共に、大きく息を吐く。
『……まだ、これから。』
『え? 何やんの?』
『ほら、前見て。』
そう言って前方を指差し、それにつられてコウヤも指の先を見る。
『え? マジで?』
『『『『ブモォォォォォ!』』』』
イノシシみたいな魔獣の大群が、こちらへ舞い戻って来ていた。
『よく見ててね。』
暗い表情のコウヤを背にし、イノシシのような見た目の魔獣達を前方に見据える。
『大地拘束』
詠唱を省略し、魔法を発動させる。
まず、大地を操りロープのような紐状に変形させ、イノシシ達の足を拘束し、足を地面に沈める。
次に魔術を発動させ、生きるために必要な酸素を減らして殺す。
これで終了。
後はアイテムポーチに入れるだけ。
『はー、スゲー手際良いな。』
『……そう。』
褒められて、ちょっと嬉しい。
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「……依頼完了、です。」
ギルドのすぐ横にある、依頼報告受付専門の建物の中で、薬草と依頼表、ギルドカードを渡す。
「はい、確認しました。依頼完了です。」
そう言って、受付嬢さんが私達にギルドカードを返す。
「……それと、素材の買い取り、お願いします。」
「畏まりました。」
そう言って、受付嬢さんが受付台を広げる。
「……量が多いので、どこか他の場所はありませんか?」
「……では、ついてきてください。」
そう言われたので、ついていく。
〜〜〜
ついていった先には、そこそこの大きさの広間があった。
「では、どうぞ。」
そう言われたので、アイテムポーチから大量のイノシシを出す。
「ワイルドボアが1匹2匹……え?」
何か言っているが、気にせず続ける事にする。
沢山入ってるんだ。ギルドの人も暇じゃないんだから、あまり手間取らせてはいけない。
「あ……あれ? なんでFランクの2人がこんなに大量のワイルドボアを狩れるのかなぁ……ハハハ、確か、キングワイルドボアがいる群れはCランク冒険者のパーティーで対処するんじゃなかったのかなぁ……あははははは……。」
『なぁ……狂ったように笑ってるけど、なんかしたか?』
『……分からない。気にしちゃいけないと思う。』
『そうだなぁ。』
『……とにかく、早く全部出す事の方が大事。』
『……結構いたもんなぁ。』
〜〜〜
正気を取り戻した受付嬢さんはどこかへ行き、しばらく待っていると袋を手に持って帰ってきた。
「えー……ワイルドボアが32体、ハイワイルドボアが13体、キングワイルドボアが1体、合計金貨1枚、角銀貨5枚、銀貨8枚、角銅貨6枚、銅貨9枚、合計15869ミルになります。」
「……ん。」
お金の入った袋を貰い、アイテムポーチにいれる。
「条件を満たした為、Dランクへの昇級審査が受けられるようになりました。受ける際は、ご連絡ください。」
「……分かりました。」
「では、これにて。」
そう言って、広間のような場所から外に出された。受付嬢さんは、終始青い顔をして無理やり笑顔を作っていたから、多分残業とかで忙く、あまり寝れていないのだろう。可哀想に。
もうギルドに用は無いので、腹ごしらついでに街の散策をする事にする。宿屋から貰ったお弁当は、チョット少なかった。
『なぁ、なんて言ってたんだ?』
ギルドを出て直ぐ、コウヤが聞いてきた。
『……昇級審査を受けられるって。』
『へー……でも、俺は何もしてないし弱いからまだ上がれないなぁ。』
そう言ってコウヤは手の平を見て、握って開いてを繰り返す。
『……なら、明日からは特訓をもう少し厳しめにする。その方が、早く強くなる。』
『げ……確かに回復魔法で身体の傷は消えるけど、そりゃ精神的にキツイぜ。』
『……大丈夫、もしも何かあったら忘れればいいだけの事。』
『どうしよう……物理で、と言う言葉が後ろに付きそうだ。』
『……な、なぜ分かった……!』
も、もしかしてこれが、読心……と言う奴ではないのだろうか……!
『あんだけ濃密な時間を過ごしたら、なんとなく分かるさ!』
怒ったような声で、そう言う。
『何か……怒るような事、した?』
『う……ち、違うけど……分かるもんは、分かるんだよ。』
『そう……』
『『………………』』
街の明るい、活気のある賑やかな雰囲気、それとは真逆の重く、曇り空の様なドヨーンとした、気まずい雰囲気が漂う。
『あ、あれ美味しそうじゃないか?』
最初にその雰囲気を壊そうとしたのは、コウヤの方だった。
『……うん、そうだね。』
会話が続かない。
『……か、買ったら、食べる?』
『い、いや、カグネが食べたいなら買えばいいさ。お、俺はいいよ。』
そう言ってコウヤは、私から一歩引いたような、遠慮気味の反応をする。
「……すみません、その串焼き……下さい。」
「あいよ、まいどどうも。」
串焼きを貰い、コウヤの居る場所へ戻る。
『……ん。』
『……あ、ありがと。』
串焼きをコウヤに渡し、食べ始める。
『……辛い。』
『……そうだな。』
その後、無言で食べ進める。
一度崩れた物を築き直すのは、とても難しい……お母さんが言っていた。
〜〜〜
延長した宿屋の部屋に戻り、ベッドに腰掛ける。
「……はぁ。」
どうしよう……気まずい。
……そう言えば、
「確か……」
アイテムポーチの中に腕を入れ、ある物を探す。
「……あった!」
『冒険の書』
気紛れに力を貸す、手紙にはそう書いてあった。
膝の上に乗せて本を開き、願いを言う。
「……仲直りの方法を……知りたい。」
藁にもすがる様な思いで、叶えたい願いを本に向かって呟く。
すると、文字が浮かんできた。
『討伐依頼を一緒に受けろ』
討伐依頼……か。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
『『……。』』
本の通り、《モグラビット》と言うモンスターの討伐依頼を受けて、平野に来た。
《モグラビット》と言うモンスターは、毛並みは茶色でとても臆病である。
土の中に住んでいるのに暗闇が怖く、穴を開けて陽の光を取り込んでいる為、簡単に見つけられるらしい。
そして、爪がとても鋭利なのが特徴だと、ギルドの情報室にある図鑑に書いてあった。
人に対して直接の害は無いが、地中の虫を食べるために手当たり次第に穴を掘る為、偶に地面が陥没して、農家の人たちや、行商人たちを間接的に困らせるモンスターである。
……偶に、自分も落盤に巻き込まれて死んでしまうらしい。
……なんだか、すごく哀れ。
冒険者に狙われて死んじゃうか、落盤に巻き込まれて死んじゃうか……。
……いや、考えるのは止めよう。
『……穴を見つけたら、中に居るか確認して、これで突いて。』
昨日の内に削っておいた、木の棒を渡す。
『……了解。』
『……太陽が真上になった頃、あそこの大きな岩に集合で。』
『……了解』
ここからは、二手に別れて探す。
本当に、仲直り出来るのかな……。
〜〜〜
「クキュイーーーッ!」
これで、多分殆ど倒した。多分、コウヤの方も終わったと思う。
太陽も丁度真上にある。
集合場所に向かおう。
〜〜〜
『ごめん……人質にされた。』
喉元に剣を突きつけられたコウヤが、困ったように苦笑いでそう言う。
「ギャハハハハ! まさかこんな所にいい人質になる奴が居るとは思わなかったぜ!」
「あぁそうだな!」
「こんなバカを仲間にしてる奴が居るとは思わなかったぜ!」
「……何が望みだ。」
盗賊と思わしき男たちの人数は、12名。コウヤはうつ伏せになり、剣で首を上げられている。
コウヤの拘束に一人、近くに四人、見える範囲で十人、陰に隠れているのが二人、合計十二人。
……どうやって、コウヤを無傷で助けよう。
コウヤの上に座って拘束してるから、殺した後が大変だし、殺し辛いし。
動けば、あの手練れが動くだろうし。
あぁ……これは難しい。
あぁもう、助けても気まずいし……
「おっと、動くなー。もしも動いたらどうなるか、分かってるよなぁ?」
そう言って男は、コウヤの下顎を少し切る。
『いっ……』
コウヤの傷ついた下顎から、鮮血が流れる。
……どうすればいい?
『俺の事はいいから殺せ ……って言うべきなんだろうけど、それは無理。俺、死ぬの怖いわ。』
「グダグダ喋ってんじゃねぇよ!」
そう言って、男がコウヤの足を切る。
『うぎっ! ぎっぐっ! がっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』
プチン……と言う音がした。
多分、アキレス腱を切りやがった。
野郎……舐めやがって。
「さぁ、先ずは背負っているその槍みたいなのを投げ棄てろ。」
「クッ……」
「こいつがどうなってもいいのか? あぁん?」
そう言って、同じところをもう一度切りつける。
『ぎっ、がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』
こいつ……楽しんでやがる。クソッ……こいつはやると言ったらやる様な奴だ。
「……分かった。」
薙刀を横へ捨てる。
「さて、今度は服を脱いで貰おうか。暗器を隠し持っているのかもしれないしなぁ……そうだろ?」
仲間に聞くように話す。
「ギャハハハハ。」
「あぁ、これは脱いで貰わないと困るよなぁ?」
こいつら……殺……いや、我慢しろ。
私がコウヤと一緒に動かなかったのが悪いんだ。
仲直りしなかった私が悪いんだ。
全部、私が悪いんだ。
嫌だが……クソッ。
戦闘服を脱ぎ、下着だけの格好になる。
「おいおい、下着も脱がないとダメだろ?」
「ああそうだ。下着の中に隠しているかもしれないんだから、下着も脱がないとダメだよなあ。」
「……そこまでする必要は……」
「なら、こいつがどうなってもいいのか?」
「クッ……」
シュルシュルと言う音を立て、サラシを解く。
白い肌、更には秘所までも姿を露わにする。
「クケケ、まさか、裏切らずに脱ぐとは思わなかったぜ。」
「いいねぇ……ボスが喜びそうだ。」
クソッ……何でこんな奴らに裸を見せなきゃいけないんだ。
あぁ……不快だ。
不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快
「武器を持っていない事も分かったし。」
「……コウヤを、解放してくれるのか?」
「バーカ。解放するなんて、最初から一言も話していないだろ?」
そう言って男は、剣を逆手に持った腕を振り上げ
『あっ……』
コウヤの心臓に、突き立てた。
「……え?」
う、そ……え?
コウヤは、糸の切れた操り人形の様に地に伏せ、草原の緑色が赤色に侵食されていく。
「あ、あ……あ……」
「ギャハハハハ! ショックがデカすぎたみたいだぜ!」
「「「「「ギャハハハハ!」」」」」
痛い
「あ……」
痛い
「あぁぁ、あ……」
頭が、張り裂けるように痛い
「あぁぁぁえぁぁぁあぁぁ?」
「蹲りやがった。」
「ククク、見ていて面白いな。」
痛い痛い痛い痛い聞こえない聞こえない考えられない痛い痛い痛い痛い痛い身体中が痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
「お、おい……アレ……なんだ?」
「か、身体がどんどん黒く……」
何を言ってるか分からない。ただ、とにかく痛い。焼けるような、貪り食われるような、自分という存在が溶けていくような、そんな痛みがする。
「ぐぎぃっ! きひッ、キッ、カカカカカカカカカぐぎギギギググギャガガ!?」
少女は、痛みで悶え苦しむ。
その身を漆黒の呪印のようなナニカが覆い尽くし、すべてを吸い込むような黒一色に染まる。
「お、おい……ヤバくねぇか?」
「あ、あぁ……そうだな。」
「ぐぎぃギャァ◆ァァぁwhぁ▼ぁ■ぁぁdeaギィィ#▽ぃ◎ぃぃ※#○n■■■◇■■■■■!!」
黒に染まった身体が溶けて液状になり、ドンドン広がっていく。
「おい……これはヤバイ。」
「に、逃げるぞ!」
そう言って男たちが逃げようとした瞬間……既に、準備は終わっていた。
「■■■■■■■■■■■■■!」
声にならない声を発する。
それは最早、ただの音の衝撃波である。
「ぐっ……」
「うぉっ!」
盗賊の何名かが、衝撃で体勢を崩す。
元少女であった液状のナニカは、形を変えていく。
「な、なんだアレは!?」
誰が見てもそう言ったであろう。
三次元的に、意味の分からない軌跡を描き、形を変えてアーチや屋根を作っていく。
「な……!?」
黒色のナニカがドーム状に形を変えた時、変化が訪れた。
黒色のナニカは、一箇所に急速に集まっていく。
やはり、生きているのであろう。
ロープ状に変化した黒色のナニカは、心臓のように鼓動を繰り返している。
ロープ状に変化したナニカはお互いに絡まり合い、吸着し合い、結び合い、とある生き物へと変化して行く。
生涯を魔術の研究に費やした、実力のある魔術師なら、こう考えただろう。
ーーー錬金術……と
「なっ!? ……マジかよ……」
「■■■■■■■■■■■■■!」
男たちは絶望に浸る。
それもそうだろう。
目の前に現れたのは、
『災禍の化身』『絶対強者』
『天空の覇者』
と名高い、ドラゴンであった。
ドラゴン……その爪は鋼鉄を切り裂き、その長い尾は岩を叩き割り、その鱗は傷一つつかず、その羽は羽ばたき1つで樹々を薙ぎ倒し、その息吹は全てを焼き尽くす。
故に『絶対強者』
更に、ドラゴンは総じて知能が高く竜言語魔法と呼ばれる、ドラゴンのみが扱える強力な魔法を扱える存在である。
ドラゴンに出会った時の対処法は、ただ一つ。
「あ、あぁ……助けてくれぇ……」
死なぬよう、祈るのみ。
「■■■■■■■■■■■!」
魔術が発動し、世界に歪みが生じる。
「あ、あぁぁぁ……」
「ぎ、ぎぃぃぃ……」
一瞬で男たちが一箇所に吸い寄せられ、強引に圧縮されていき、しばらくすると拳大の肉塊となり、宙に浮遊する。
「□□□□□□□□□……」
竜は、その禍々しい見た目から、人型へと姿を変えていく。
先ほどの禍々しい見た目とは逆の、神々しい姿に変わる。
見た目はカグネと同じだが、目に色は無く、背中には6枚の翼が生えていた。
裸の状態を気にせず、宙に浮かんでいる肉塊の下まで浮遊して移動し、手に掴む。
そのままフワフワと漂い、今度はコウヤの下へと移動していく。
「□□……□□□□……」
何かを呟くと、出血して体外に出た血液が、まるで時が戻ったように体内に入っていく。
そして、手に持った肉塊を、ポッカリと空いた胸の穴に詰め込む。
「□□□……□……□□□□」
何かを呟いた瞬間、辺りが真っ白な光で埋め尽くされる。
光が消えると、コウヤの傷は無くなっており、確かに命の鼓動を感じられるようになった。
それと同時にカグネの翼は消え去り、力尽きたようにコウヤに倒れかかった。
辺りには、何も残らなかった。
ここまでお読み頂きありがとうございました
誤字脱字指摘、アドバイス、評価感想等
お待ちしております。
ドラゴン+マジック(magic )→ドラゴマギ
わぁ……なんの捻りもない。
さて、カグネ無双でしたが、変身系ってロマンだと思います。
強い力には必ず原因がある訳で、頭痛がしちゃうって事は、使いこなせていないと言う訳ですね。
鍛えられた癖に人質を獲られ、あれよあれよと事態が進展して行くというミスをするカグネさん。
人間関係でギクシャクしたことがない人が、こういう事態で正常に判断出来ないんじゃない? と、私は思ってます。
ま、修正するかもしれませんね。
コウヤはここで退場(仮)して貰おうかと思いましたが、ここでツッコミが居なくなるとキツイので、まだ消えません。
カグネの変身シーンは、スパイダーマ○3の黒い奴に取り憑かれる時を想像していただければ。




