第37話
もうしばらくすると、ほのぼのが消えていきます。
本格的な異世界ファンタジーが始まる予定です。
あれから1週間経った。
大体の生活スタイルは分かった。
そして、娘のために新しく家を建てた。
寝殿造りに似た家だ。
理由としては、黒髪黒目だし、似合うだろうと言う理由だ。
檜皮葺の屋根なども、完全に再現した。
あぁ、愛しの畳。
座布団。
ちゃぶ台。
作った甲斐があった。
ベビーベッドは撤去。
娘は、布団を敷いて寝かす。
まぁ、今日は会議が有るから、一緒に連れて行くのだが。
大事な娘を家に置き去りにするなんて、到底私には出来ない。
さて、行くか。
愛娘を背中に背負い、転移する。
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ふぅ、会議場に着いたか。
会場は、国会議事堂の本会議場を参考に作られており、その席に魔法陣が刻まれている。
会議に、出入り口は無い。
ここへ入るには転移する他ならないため、情報が漏れる事も無い。
会議場に魔力を注ぎ、魔法陣を発動させる。
カッ
一瞬、青白い光が会議場を包み込むと共に、老若男女、人種問わずに沢山の人が現れた。全員、冒険者ギルドのギルドマスターだ。
ガヤガヤガヤガヤ
あー、恒例の、年1回の会議だ。
面倒いな。
〜〜〜〜〜
「おぎゃー、おぎゃー。」
もうそんな時間か。
「よし、よし。」
ギルドマスター達から背を向け、母乳を飲ませてやる。
「なっ⁉︎ そんな⁉︎」
「ふぁっ⁉︎ 子供⁉︎」
「そんな⁉︎ いつの間に子供が⁉︎」
「マスター⁉︎ いつの間に⁉︎」
ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ
「こら‼︎ 見るな変態ども‼︎ それとマスター、子供が居たんですか⁉︎」
「うるさい。」
殺気を出し、アホどもを黙らせる。
「ひっ⁉︎」
まったく、愛娘が不快に思ったらどうするんだ。
お食事タイムの邪魔をするな。
「んあ。」
お、食事終了か。
肩に背負い、背中を叩く。
「けぷ、けぷ。」
「よし、いい子だ。」
「………。」
「で、なんの用だ?」
アホ共に聞く。
「け、結婚したんですか?」
女性が聞く。
「拾った。生贄にされていたから、ドラゴン討伐をした。」
「「「はあっ⁉︎」」」
「な、何簡単にドラゴン討伐してるんですか……今からご飯食べに行くぐらいの、軽い感じで言わないで下さい。」
「マスター……単独でドラゴン討伐が出来る人が、どれだけ少ないか分かってるんですか?」
「私には出来る、それだけだ。」
「「「………。」」」
「で、会議は終わったのか?」
「はい、終わりました。」
「そうか……席に着け!」
そう言うと、皆自分の席に着く。
会議室に魔力を注ぎ、転移魔法を発動させる。
一瞬、青白い光が会議場を包み込むと、後には誰も座っていない席のみが残った。
「さて、帰ろうか。」
そう言い、私も家に帰る事にした。
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「今日は暁月か……」
この世界の月は、幾つか色の種類がある。
地球でも見る紅と金、銀。
それに蒼色の4種類だ。
暁月は年に1度、蒼月は1ヶ月間見れる。
因みに、週7日の1ヶ月5週なので、35日間蒼月を見る事が出来る。
綺麗で、月見酒には最高だ。
なので、
「……どうだ?」
酒瓶を持ち上げ、鬼人族の友人に見せる。
「んなっ⁉︎ それはまさか⁉︎」
「『量産型弐号』だ。」
『量産型弐号』……それは、私が昔に作った日本酒『量産型壱号』の改良型である。
鬼人族の始祖のなら誰でも知っている、
『楽園戦争』の発端となった酒だ。
鬼人族は、ほぼ全員が酒好きで酒豪なため、酒のために戦争を起こした。酒で戦争はアホすぎるので、流石に止めたが。
「呑みたいか?」
「頼む! 呑ませてくれ!」
「私も呑ませてくれ!」
「3人で呑むために来たんだ。」
「そうか! ありがたい!」
「んぅあー。」
「「っ⁉︎」」
「そうか、時間か。」
「「おま(あんた)……子供……。」」
2人が驚きながら、そう言う。
その反応は飽きた。
「拾ったんだ。」
「名前は?」
「まだだ。」
「まだ授乳期なんだから酒は駄目だな、楽しく呑ませて貰うよ。」
「そうだね、私はとっくに子育ても終わってるからね、私1人で楽しませて貰うよ。」
「お、俺「ハハハハハ!」……。」
「……。」
ゴン
手から酒瓶が零れ落ちる。
「お、おい……。」
「おーい、大丈夫かー?」
私は、しばらくの間呆然とし、立ち尽くしていた。
「……勝手に呑んじまうか?」
「このバカ旦那! なにアホな事言ってんの! 待ってやりなさい!」
〜〜〜
「2人は……結婚してから今も、上手くいってるのか?」
縁側に座り、月見酒をする。
2人がは楽しく酒を飲んでいる。
ちくしょう……酒が呑めないじゃないか。
「上手「当たり前だろ! ははは!」えぇー。」
嫁の方が、旦那の肩をバシバシ叩く。
どうやら、旦那の方は尻に敷かれてるようだ。
鬼人族は基本、肝っ玉母ちゃんである。
男尊女卑とかも無く、みんな仲良く豪快である。
鬼人族の街並みは、江戸時代の日本を想像してくれればいい。
もろ日本である。
刀鍛冶大好きである。
風呂も大好きである。
お米大好きである。
角は特定の条件下でしか生えないので、人と特に変わりないのである。
それと、大陸から遠いので、全然交易はやっていない。
海人族という、海に住んでる種族としか交易はしていないのである。
ジパングなのである。
「……で、その娘の名前はどうするんだい?」
「そうだな、どうするんだ?」
「名前は、苦楽を一生共にするんだ。適当に名付けるなんて真似、私には出来ない。」
「それもそうだよな。」
「だから、名付けを手伝ってくれ。」
「……え?」
「……は?」
2人が惚けた顔をする。
鳩に豆鉄砲とは、こういう事を言うのだろう。
「な、なんで俺らに頼んだんだ?」
「そ、そうだ、他にも居るだろ!」
「鬼人族は、名付けが上手いからな。」
「「……。」」
おい、照れるな。
「「ぜ、全力で名付けるぞ!」」
いや、手伝いだけでいいんだが。
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名付けは、苛烈を極めた。
「違う違う、女の子なんだ! もっと可愛く!」
「いや、女だからこそ私みたく強く!」
夫婦で真逆の意見。
「果物から取るってのはどうだ?」
「花もいいんじゃないかい?」
一時期まとまったかと思われたが
「桃だろ!」
「いや、山茶花だね!」
やはり、まとまらなかった。
だが、苦難は続く。
「ぎゃー⁉︎」
「さ、酒のツマミが切れた!」
酒のツマミが切れる。
これは、私が取り出す事でなんとかなったが。
「あー、浮かばねー。」
「どーするよー。」
ついに、2人がダウンした。
縁側に寝転がる。
そして、モゾモゾ動き出し。
「耳掃除頼む。」
「あいあい。」
なんか、イチャイチャし始めた。
「……はぁ。」
人目を考えてくれ。
「んぅあ。」
さて、こっちもこっちでイチャイチャしますか。
〜〜〜
「「うだー」」
「……はぁ。」
3人で夜空を見上げる。
夜空には、血のような紅い月と沢山の星が光っている。
「なぁ、おたくの娘さんは何が好きなんだ?」
不意に、そう聞かれる。
「……花だ。」
「そうか……。」
「カグネってのはどうだい?」
カグネか……
「いい名だな。」
「花吹雪って意味になるね。花は咲いてても、散ってても綺麗だしな。」
そうだよな。
漢字にしたら『花颶音』だろうか。
『華』でもいいかもな。
「花は散っても新たな命を作るし、悪い意味じゃないだろう?」
「そうだな……気に入ったか? カグネ。」
「……。」
「寝てる子に聞いても意味ないでしょ。」
「ハハハハハ! アホらしいな!」
「……それもそうだな。いい名を付けてくれてありがとう。」
「いいって事よ。」
「お安い御用さ。」
「今日がお前の誕生日だ。カグネ。」
暁月の夜、カグネは生まれた。
「誕生日、おめでとう。」
そう言い赤子を腕に抱いている様子は、血は繋がっていないが、母親そのものだった。
「「うっ……うっ。」」
2人が、嗚咽を漏らしている。
「……どうした?」
「「な、なんでも無い!」」
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