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出会い

国を出て一週間たった。おそらくは、もうも出たはずだ…。はずというのは私は地図を持っていなく、ついでに言えばどの方角にどの国があるのかもわからない。アイランが大陸の北寄りにあるということを、かろうじて知っているでけで、本当に適当に歩いて来た為、いつ国を出たかどうかも分からないし、そもそも今どこの国にいるのかも分からない。


「どの種族の国でもいいがエアルタだけは勘弁してほしいな…」つぶやきながら耳を済ませた。水の音が聞こえてくる。川でも流れているのだろうか。音の方に向かって歩き出した。


数メートル歩いたところで足を止める。今向かっている、おそらくは川の方から血の匂いがする。面倒だ、と引き返そうとしたところで叫び声が耳についた。


思わず舌打ちする。もし生きているかどうか分からなければ、かかわらずにいるのが普通だ(あくまでも私にとってだが)、生きているのが分かった今、見捨てると後悔するのは自分だ。迷わず声の方へ身体を向ける。


すると、前方から誰かが走ってくるのが見えた。獣の耳。犬か狐か。どちらでもいいが獣人という事は、ここはエアルタか。反対の方へ行けば良かったと後悔しながらも、その子の方へ走っていく。


「助けて!」走って来た男の子にしがみつかれる。私が人間である事に気づいてないのか?そう思いながらも「どうした?」と尋ねる。「川で魔物に襲われたんだ!ママとおじちゃんぼくだけにがして残ったの。お願い、助けて!ママ達が死んじゃうよ‼」


必死にしがみつく男の子を引き剥がして私は「分かった、助けてくる。だからお前はここにいろ」そう言って子どもが走ってきた方、つまりは川の方へ駆ける。


川へ着いたとき、ちょうど女の人が倒れその上に魔物がのしかかろうとしている状態だった。私は背中から二本の剣を引き抜いて魔物と女性の間に滑り込む。そのまま右の腕を水平に薙ぐ。


まさか邪魔されるとは思っていなかったのだろう。固まっていた魔物の首を跳ね飛ばし、倒れていた女性を引きずり立たせる。こちらも唖然としていたが放っておいてそのまま次の敵へと向かう。


斬りかかる剣を右の剣で抑え、左の剣で突き刺す。そして引き抜きながら後ろから斬りかかってきた新たな敵を、背面へまわした剣で真っ二つに切り裂いた。


これで終わりだろう。剣についた血を払いおとし鞘におさめる。私が倒した三体の他に二体倒れているのはおそらくこの女性か少し離れたところで、尻もちをついているおじさんが殺ったのだろう。


「あの…貴方は?」女性の方に声をかけられる。「人間です」反発されるのを承知で答える。「え?あ、いや…そうじゃなくて名前を教えていただきたいんですが。あ、その前に助けていただきありがとうございます」反発どころか丁寧に頭を下げられる。


頭が酷く混乱している。だって私は人間だぞ?今戦争するかもしれない、とか言ってる相手に対する接し方じゃないだろ?…っと、その前に。


「そんな事より向こうに子供いるんだけど…知り合いだよな?」と自分が来た道を指差す。「あ、リトは無事なんですね?良かった…」そう言ってしゃがみ込んだ獣人の女性。ふむ、これは、連れて来た方が良さそうだな。そう考え動きだそうとしたときには、既にこちらに向かって走って来ている子供が目に入った。





「ママ〜!」ぼくはしゃがみ込んでいるママに向かって走り、そして抱きつく。「良かった…リト、無事で良かった…」そう言ってママはぼくをぎゅっとしてくれる。「うん、ぼくは大丈夫だよ」そう笑いかけた後、ずっと後ろで静かに立っている女の人を振り返った。


とても綺麗な人。なんでだろう。怖く見えるのに優しそうな人にも見える。ぼくは思い切ってその人に声をかけてみたんだ。

「お姉さん、ありがとう!」にっこり笑って言ったのにそのお姉さんは驚いた顔して、「あ、ああ」と答えるだけだった。ぼくは首を傾げた。


するとママも「ありがとうございました」と頭を下げた。そしたら急にずっと座り込んでたおじちゃんがこちらにきてお姉さんを睨みつけて怒鳴りつけた。「人間がなんでこの国にいるんだ‼︎」と。ぼくはようやくお姉さんが驚いた顔している理由が分かった。人間は昔、獣人に酷い事いっぱいしたって話をママに聞いたことがあった。


でも、「この人は助けてくれたよ?」ぼくはそう言った。「それ以前に人間がここにいる事がおかしいんだ!おい、人間がなんでこの国にいるんだ⁈」もう一度おじちゃんが言った。するとお姉さんは「道に迷った」と、そう答える。「嘘だ!獣人を捕まえて国へ連れ帰るつもりだろう⁈」おじちゃんは声をあげて叫ぶ。


こんなおじちゃんは見たことがなかった。ただ驚いていると、お姉さんは「国は捨てたし、獣人を捕らえる気もない。そもそもこの国へこようという気もなかったんだ。この国へ来たのは偶然だ」そう、たんたんと言い、肩を竦める。ママの顔を見たら困った顔してた。


おじちゃんは「国を捨てた…だって?なんの為に…?」と、探るようにお姉さんを見ながら問いかけている。「鬱陶しかったから」お姉さんは、特になんとも思ってないように息を吐き出す。「信じると思ってるのか?」というおじちゃんの問いかけに、お姉さんが答える前にママが「そんな事どうでもいいでしょ?助けてくれたのは事実だし。国を捨てたというのも嘘じゃなさそう。お礼と言ってはなんだけど家へこない?なんにもないところだけど、行くところがないなら家へいらっしゃいな」とお姉さんに言った。お姉さんが絶対断ると思ったぼくはすぐに、「ぼくの家に来てよ!」と叫んだ。まだ困った顔してるお姉さんに「お願い!」と見つめる。「分かった。お邪魔させてもらおうかな」ようやくお姉さんはそう答えた。


家へ帰る途中、おじちゃんは嫌そうな顔してたけど、ぼくはすごく嬉しかった。お姉さんと手を繋ぎながらぼくは質問する。「ねぇ、お姉さん名前なんて言うの?」「セレネだ」一言そう言う。なんか、にてる。よく分からない。名前はそんなににてない。ママから聞いたその人の性格とも一緒じゃない。そもそもぼくは、その人のことはほとんど覚えてない。けど。外見がにてるかもしれない。そう思いながら、「ふぅん。じゃセル姉って呼んでい?」そう聞いた。お姉さんは首を驚いた後に淡く笑って「あぁ」と頷く。笑ってもらった事に嬉しくなりながら、ぼくも自分の名前をおしえた。「ぼくはねぇ、リトっていうんだよ。今はもう死んじゃっていないけどパパがつけてくれたんだ」そう言いながら笑ったら、「そうか、いい名だな。大事にしろよ」そう笑いながら頭を撫でてくれた。人間は嫌なやつだってみんな言ってるけどこの人は、セル姉は嫌なやつじゃない。そう思いながらセル姉の手を握った。















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