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緑竜ケツアルカトル2
『竜殺しのガブゼット』
そう名乗る剣士が現れた。
地方豪族の飼っていた
竜が三匹も殺された。
そのうちに最も重要な
七つの大国の巨竜には
魔の手は及んでいないものの
いつしか狙われるかも知れない。
七つの国はいずれも腐敗し
政治は乱れに乱れており
民草の不平不満は
一触即発の状況にある。
竜殺しの出没地域は
エライアスと程近く
竜の吐く毒の息が
人々に病を流行らせているのは
いくら隠したところでも
公に認めずとも
誰もが知る事実である。
エライアスの緑竜が
狙われるのも時間の問題。
奸臣どもは怯えに怯え
警戒を強めていた。
エライアスの王国には
有力な貴族がいた。
文にも武にも秀でている
オルレアンという若者。
腐敗した国の中で
ただ一人だけ正論を
口にし続ける好漢である。
双剣を巧みに使い
弁にも優れているがゆえ
家名だけでのさばっている
無能な他の貴族には
抑えておくのも容易でない。
涼やかな目元と高い鼻
容姿も非の打ち所がなく
たった一つの泣きどころが無ければ
豚貴族どもは片っ端から
粛正されていたかも知れぬ。