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竜殺しのガブゼット 序章6
竜とて大人しくする道理もなく
背中の羽虫を振り落とそうと
大暴れする始末。
振り払われて地に落ちれば
剣士と餌の区別なし。
野次馬たちはどよめきながら
剣士を囃したてる有様。
剣士は刺さらぬ剣の柄に
渾身の力を込めた。
顔を真っ赤に紅潮させ
全身を小刻みに震わせ
両の眼が飛び出し
血管が沸騰せんばかりに膨らみ
ブババババッ……っと
激しい音の屁を放った。
尻の灼けるような屁を放った。
野次馬たちが笑い転げる中
一人が声を裏返らせた。
……通った……
と、声は言った。
剣士の刃は放屁とともに
固い鱗を突き破り
竜の背骨を砕いていた。
竜は呻き声も立てず
大木の倒れるように
轟音を立てて横たわった。