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月ちゃん頑張る その1


「ペガサス」

「何?月ちゃん」

「ここで私は一体何をすればいいわけ?」


周りは一帯砂漠地帯。

砂漠砂漠砂漠。

砂砂砂。

太陽。

暑い………。


「夢なのに……、何で暑いの?」

「ここ事態は夢じゃないのー。月ちゃんの夢から飛んだけどここは現実。異世界」

「ふぁんたじーってやつ?」


「そう、それ」と首辺りから声が聞こえる。

ただいまペガサスは首輪になってここ『異世界』にいた。

何故なら。






『ん?だって僕の姿のままだったら目立つしさ』

『だからって、何で首輪なのよ。しかも犬の首輪』

『この方が都合いいんだ。赤くて可愛いでしょ?』

『私、犬じゃないんですけど』

『月ちゃんは可愛い可愛い人間だもんね』

『………』







と言うこと。


それにしても暑い。

異世界にありがちな砂漠地帯って、現実にはこんなに暑いものなのか。

吹き出る汗を拭うのも面倒で、そのまま流れるままに垂れ流す。


「ペガサス…、暑い」

「まだここに来て10分だよ?」

「暑いよ……死んじゃう」

「だから簡単な方をすすめたのに。今からでもいいよ?僕と子作りする?」

「嫌」


暑い。

暑いしか頭の中に浮かんでこない。遠くに街も見えなければオアシスっぽいものも見えない。

周りは本当に砂砂砂の嵐。樹さえ無いって、どういうことさ。


砂漠の真ん中に一人立ち尽くす私。これがもしRPGなら、少し歩けば何かしらの看板や曲がり角、はたまた『こっちだよ』と言ってくれる案内人がいるのに。


私にあるのは首輪となったペガサスのみ。


「ペガサス、砂漠で私に何を求めてるの?」

「砂漠じゃなくて……あ、来た来た」


歩き疲れて立ち止まり、首輪なペガサスに声をかけた私の耳に、ザクザクと何かが近付いて来る音がした。その方向を見ると、そこにはラクダとラクダに乗った人。

が、3組。


砂漠地帯っぽく白いローブを着て、目深にフードを被っている。


「ペガサス、ベタな展開用意するね」

「ベタかなぁ」


きっとあれは何処ぞの王様の使いとか、何処ぞの王子の使いだとか、通りすがりの優しい旅の方だったりするのだろう。


何でもいいから、この砂漠地獄から早く助けて、と(ラクダ+人)×3の到着を静かに待っていた。



が、やっと来たと思った私に届いた第一声は「何故?」と首を傾げたくなるようなものだった。






「こんな所に獣人がいるぞ」




獣人?




「ホントだ。何でこんな所に」

「逃げてきたんじゃないすか?首輪してるし」

「奴隷か。こんな砂漠地帯で逃げ出すとは、相当頭悪いな」




獣人に奴隷。

首輪をしているので奴隷と勘違いされるのはまだ理解出来るが、獣人って何さ。

首輪のせいなの?

いやいやまさか。見た目貴方達と一緒の人間なのに。


じろじろ私を見るローブ3人集。全員男。居心地悪く、私はその視線から避けるように後ろを向く。


「ペガサス、展開がよめない」

「月ちゃん、さっきベタな展開だって」

「訂正。私が思ってたのと違う感じ。獣人って何のこと?あと、私奴隷だって勘違いされてますけど」

「月ちゃん、頭触ってみ」


何で?

と思いながら頭に手を伸ばす。そこには2つのふさふさした物体があった。


「な、何じゃこれっ!?」

「獣耳」


何故に!?


驚愕していた私の腰をガシッと誰かに掴まれて、私の足が地面から浮く。


「…っわ!!?」

「とりあえず、売りに行くか」

「ですね。逃げられた人には悪いけど、見つけたモン勝ちって事で」


ちょ、ちょっとちょっとちょっとぉ!!!


腰を掴まれたまま運ばれる。


「あ、あのっ、私奴隷じゃないんですけどっ!!」


逃げようと、必死に腰を掴んでる腕を外そうともがくが、びくともしない。私より20cmぐらい背の高い、がっしりした体つきの男に敵うはずがなかった。


「奴隷じゃないって…、じゃあその首輪は何だ?」

「これはペガサスです!」

「ペガサス?何だそれ」

「馬に翼が生えてる奴です!」


腰を掴んでる男は興味無さそうだったが、あとの二人は若干の興味を示してくれた。


「馬に翼って……」

「ありえないでしょ」


異世界ふぁんたじーのくせにペガサスいないのかよっ!!


「とにかくっ、そのペガサスが首輪にばけ…って、わぁっ!!!」


腰を掴んでいた男が、ぐんっと私を持ち上げラクダの背に乗せる。


「た、高いっ。意外に高いよ、コレッ!!」

「この子、獣人のくせに高い所苦手なのかな」

「この分なら縛らなくても大丈夫そうだな」


私の腰を掴んでいた男がひょいっと私の前に座る。


「行くぞ、お前ら」


ラクダがゆっくりと動き始める。私はひしっと前に座る男のローブを掴む。


「こ、怖いっ!揺れるっ、落ちるっ!」

「凄いビビりだね」

「ただの馬鹿だろ。砂漠地帯で逃げたしたのがその証拠」

「売れるかなぁ」

「中はアレだが、外は良いから大丈夫だろ」


このままだと売られる!

けど、このラクダの上から一人で降りるのは無理っ!!!


私は必死に何とかしようと、ローブ3人集に話しかける。



「あ、あのっ、私奴隷でも獣人でもないんですけどっ」

「その耳、獣人の証拠じゃないか。首輪も奴隷の証拠だろ」

「だから、この首輪はペガサスで」

「この子、大丈夫か…」

「分かった。首輪に名前つけてるんだよ」

「なるほどな。奴隷だから友達も出来ないもんな。そうやって自分を慰めてるのか」


哀れむように、左隣を歩くラクダに乗ったローブ男に見つめられる。


「違いますってば!!ペガサス、あんたも何か言いなさいよっ!!!」

「………」

「無視っ!?」


首輪なペガサスからは何の返事も無かった。

酷すぎる。


左隣からの哀れみの視線が強くなる。

右隣を歩くラクダに乗った男から、小さく「砂漠の暑さで頭がイカれたか」と、これまた酷い言いがかりをつけられる。

ぼそっと言うなら、できれば私に聞こえないように言って下さいよ。


「…ペガサス、あんた捨てて行くわよ」

「…喋ってもいいんだが」


ペガサスが漸く口を開く。


「ほらっ!今、喋った!聞こえましたよねっ!!!」


私は首輪を指差しながら右隣と左隣を見る。だが、二人はふいっと顔を反らす。


「月ちゃん、僕の声は実は月ちゃんにしか届きません」

「えっ!?どういう事!?」

「しょうゆ(醤油)うこと」

「ボケんな」

「……言ったまんまの意味だよ。その説明はまた今度したげる」

「…ちょっと待ってよ。ということは」


ペガサスの声は第三者には聞こえない。という事は、今、私は一人で喋ってる痛い人っ!


「………」


喋る気力も失い、がくりと頭を下げる。

その頭に、パサリと布が被せられた。


「………?」

「日除け。暑いだろ」


右隣の男がそう言った。

優しい。


「ねぇ、君。名前は?」


左隣の男がそう聞いてくる。一番小柄で人懐っこそうな男だ。


「……月」

「ツキ?変わった名前だね。俺はカル。で、君の前にいるさっきから口を開かないのがカロ」

「俺はカナ」


カルカロカナ。

似たような名前。


「兄弟ですか?」

「違うよ。でも似たようなもんかな」


にっこりと笑うカル。

義兄弟的な何かだろうか、と思う。気にはなったが聞くことは無かった。





それから暫く。

私の前に座るカロ意外の二人と色々喋っていたら、気が付いたら街のすぐそばまで来ていた。




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