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「ただの経費削減ですが?」〜銀河最弱の補給艦隊が、俺の「在庫管理」で最強になったようです〜  作者: 空木 架
転移と勘違いと不本意な出世

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第8話 宇宙船の節約とお米60キロ

 先日のドナドナ騒ぎの一件で、エライアの正体が姫だということが公然の事実(みんな知っていたが)になり、エライアはもうエヴァと名乗るのをやめていた。


「えっと……離してもらってもいいかな? エライア?」


 エライアが、俺の頭を愛おしそうに撫で回している。頭とはいっても、その外側――そう、ヘルメットだ。


「なぜですの? 大切なヘルメットのメンテナンスですわ」


 俺が、「やめろ!」と言いながら頭を振り、エライアの手からヌルンッと、抜け出した。


「『メンテナンスですわ』じゃない! 素手で廃オイルを塗りたくるな! ベタベタになるじゃないか!」


「ベタベタのどこがいけないんですの? オイルは愛の証ですわよ!」


 エライアは廃オイルまみれのテカテカな顔で、〝心底わからない〟という顔をしている。隙あらば頬ずりしようとしやがって! くそっ、この変態オイル姫め。


 俺は、ベタベタになったヘルメットを雑巾で拭き取りながら、帝国の帳簿を開いた。


「……ちょっと待て。なんなんだこの帳簿は!」


 俺は思わず叫び声を上げた。

 倉庫の物品リストがアレだったのは、百歩譲って許そう。だが、帳簿は許せん!


 その帳簿は、あろうことか横配置で入力されていた。つまり縦は、日付、科目、貸し方、借り方、金額、摘要の6行のみ。横は10万列をゆうに超えていた。


「普通は縦にするんだよ! 横スクロールは見づらいんだ! スーパーマ◯オか!」


 俺は、すぐに全選択をして、新しいシートに行列を入れ替えて貼り付けた。

 その光景を見ていたエライアが、ふるふると震えながら叫ぶ。


「アストラ様! 凄いですわ! 一瞬でこんなに見やすい表に変換してしまうなんて! さすが知将ですわ!」


「あ、あぁ。そうだな……」


 いや、これが普通なんだよ! なんなんだこの星の事務能力の低さは……。

 俺は、クロス・ヴァーン帝国の技術力と事務処理能力のギャップに、呆れながら次の作業に移った。

 目の前に損益計算書が投影される。


「完っ全に赤字だな……。早期にテコ入れしないと手遅れになる」


 俺はそう言いながらBSバランスシートのある部分に注目した。異様に多い資産の項目だ。


 なんで、赤字なのにこんなに小型機を沢山買ってるんだよ……。帝国軍の人数よりも多いじゃないか! 一人一機でも多すぎるっていうのに! こんなもん即削減だ!


「あれ? 待てよ? ……これって?」


 高級小型機。その摘要欄に俺の目が釘付けになった。


『フェイス様 専用機(プライベート用)』


「プライベート用を経費で買うんじゃない! しかも、毎年買い足しているだと? なんで買い足す必要があるんだよ!」


 自分が金持ちだと思っている権力者ほどたちの悪いものはない。毎年赤字なんだぞ! 自分たちの生活が国民からの借金で成り立っていることを忘れるな!


 俺は決断した。


「よし! 一番古い機体だけ残して、あとの15機は全て売却だ!」


 早速、皇帝へメールを打つことにした。相手は第一皇子だ。下っ端じゃ話にならない。

 〝経費削減〟という言葉を使用しないで、売りたくなるように説明するのがコツだ。


「えーっと……。『フェイス様の高級小型機についての進言がございます。プレミアが付いていて一番価値のある古い小型機のみを残して、全て売却したいと考えています。新しいものは量産品で陳腐であり、フェイス様にふさわしくありません。国民へフェイス様の威光を示すために、どうかご決断を』っと。こんなもんでいいかな」


 皇帝がどのように判断するかわからないが、これが実現すれば50億円の削減だ。

 次は、ヘルディナンドへのメールに手を付けた。

 こちらは戦術顧問としての連絡なので簡単だ。


「こちらも同じように、〝経費削減〟とは使わないのが肝だな。『小型機の買い足しを控えてください。生産個数が少ないうちは不良率が高い状態となるので、新型機は性能が安定しているとは言えません。保有機数が一番多い機体以外を全て売却してください。そして、部品ストックの共通化を推し進め、メンテナンスのスピードを上げる事で、兵力の増強を目指しましょう!』よし。まぁこんなもんだろう」


 これで、5000機は削減できる。一兆円の削減だ。


 次に手を付けるべきは、経費だ。


「光熱費と燃料費が多すぎる……」


 俺がそう思っていたちょうどその時、ザッツがやって来た。


「よぅ、アストラ。何やってるんだ?」


「見ての通り、帳簿のチェックだ。あんたこそどうしたんだ?」


「いや、コピーミスっちまってさ。これから捨てに行く所だ」


 ザッツは、おびただしい数の紙を抱えていた。その数は100や200ではきかないだろう。


「おまっ……! ザッツ! なんだその数は! しかもカラーコピーだと! カラーコピーがいくらかかるか分かってるのか!?」


「いや、分からん」


「『分からん』とか言うなよ! そういう小さい所で差が生まれるんだ! ……あれ? その紙は、まさか……」


「あぁ。そのまさかだ。分厚い最高級上質紙だっ! 手触り最高だぞ! ワハハハ!」


(お前……日本円にしたら1枚あたり100円近くかかってるぞ! 500枚だとしたら5万円だぞ! 5万っていったら、お米が60キロは買えるんだぞ! 俺一人なら半年は食いつなげる量だ! どれだけ豪華なおかずが追加できると思ってるんだ!)


 俺は頭を抱えた。どうやら、この帝国は、全体的に節約という観念が欠落しているらしい。


「せめて、捨てないで裏紙として使えよ!」

 

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