第23話 不服なヘルディナンドと敵の作戦
俺達は、低画質のホログラムディスプレイで、ブリーフィングを始めた。
ヘルディナンドはどこか不服そうだが、気にしないことにしよう。万年赤字のクロス・ヴァーン帝国においては、経費削減が最優先なのだ。
引き続きヘルディナンドがファシリテーターを務めている。
「えーっと……。皆さん、この残念な低画質ホログラムディスプレイをご覧ください。この、正十二面体の塊は……なんと、惑星なんですねぇ」
いや、不服感がダダ漏れなんだが? もはや全身から不満が溢れ出てるぞお前。
「で、この消しゴム……。いや、豆腐かな? これが、戦艦でーっす。で、敵の豆腐は、この辺に7隻。あ、間違えた。7丁プルついています。そんで、我らのクラウザーム・ヴァイロン――豆腐は、ここっすね。見ての通り3丁ですぅ。7対3なんでピンチっすね」
俺は、もう途中から聞いていなかった。
なっ……。豆腐だと!? クロス・ヴァーン帝国に豆腐があるのか!?
今までずっと、あのくっそ不味いプロテインブロックで我慢してきたのだ。
「なるほどな。で? その豆腐は絹か? それとも木綿?」
俺のその質問を聞いた瞬間、それまで不服に溺れていたはずのヘルディナンドが目を見開いた。
「……絹と木綿!? そうか!? そのような考え方もありますね! さすがは知将アストラ様!」
なに? なにが〝さすが〟なんだよ。早く絹か木綿か教えてくれ。俺はいま、絹ごしの冷奴を最高に食べたい気分なんだ。
「相手が絹ごしなら、その硬度を上回る木綿――すなわち数より質で対抗しろということですね!」
違うわ! そんなこと言ってない! 絹ごしに失礼だろ! 絹に謝れ!
「俺は絹ごしを食いたいんだ」
俺のその一言に、なぜか周りの奴らが沸き立った。
「おぉ! アストラ様はヤル気だ!」
「豆腐(絹ごし)装甲の敵艦など、恐るるに足らずということですね!?」
「自分の作戦で敵を食い尽くしてやると!? 恐ろしいお方だ! 味方で良かった!」
あ、ダメだこいつら……。俺がなにを言っても止まらないモードに入りやがった。
早く帰って豆腐を探したい俺は、流れに任せることにした。それが一番の近道だ。
「あぁ。まぁ、そんなところだ」
◇
一方、クラウザーム・ヴァイロン号率いるクロス・ヴァーン帝国艦隊を迎え討つ、銀河連邦艦隊の主力艦サイクロン・ドログリーのブリッジでは、司令官のムワルグが勝ち誇った声を上げていた。
ブリッジにレーダーオペレーターの叫声が響き渡る。
「ムワルグ司令! クラウザーム・ヴァイロンのブリッジに仕掛けた盗聴器によると、全員サブスクのアンドロイドのようです!」
「ほう、例の情報提供者からの報告通りだな。無知な帝国軍め! 我らが準備万端で待ち受けているとも知らずに向かって来おるわ! すぐに新兵器の発射準備だ!」
「「「アイアイサー!!」」」
「見ていろよ、アストラとやら。先日のベタベタの借りを返してやるぞ……」
ムワルグは、そう言いながら口の端を吊り上げるのであった。




