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「ただの経費削減ですが?」〜銀河最弱の補給艦隊が、俺の「在庫管理」で最強になったようです〜  作者: 空木 架
アストラ艦長のランチェスター戦略

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第20話 重すぎる額と宇宙のお菓子

「ふん! はぁ、はぁ……。ふんぬ!」


 フェイスが、真っ赤な顔でピクリとも動かない超重量級の額と格闘しているのを、俺達は黙って見ていた。俺達が手伝ったとしても、あんなものを運べるはずがない。腰をやって労災認定されるのが関の山だ。

 そんな中、ザッツが何かを思い出したように、左の手のひらを右の拳でポンッと叩いた。


「そうだ。ハイパー・ゼロ・グラビティトロリーを使おう」


「なんだそれ? 名前からして凄そうだな」


 ザッツは、「ちょっと待ってろ」と言いながら、倉庫の奥へと消えていった。

 エライアと、皇帝エグゼウスは呑気にケーキを食べながらお茶を飲んでいる――と、思いきや。


(な、なんだあの妙な楕円形の塊は……。毒物か?)


 エライアと皇帝が美味しそうに食べているものは、謎のツノのようなものがついた、ブルーに紫色の水玉模様の塊。簡単に言うと、見た目は派手なウミウシだ。

 俺の視線に気付いたエライアが、その〝ウミウシ〟を俺に差し出した。


「アストラ様も、このお菓子食べませんか?」


「え……。お菓子? この見た目で? 新種の生物ではなく?」


「プロテインブロックを使ったお菓子ですわ。甘くて美味しいですわよ!」


「いただきものなら、無駄にするわけにはいかないな。じゃあ、ちょっと味見だけ……うぐ!」


 俺はその〝ウミウシ〟を、フォークで取って口いっぱいに頬張った。

 口の中に広がる、トイレの芳香剤の強烈な香り。そして食感は固まりかけの木工用接着剤そのものだ。


(こんなもん食えるか!)


 しかし、「食べ物を粗末にするな」と教育を受けて育った俺は、涙目になりながら強引にお茶で流し込んだ。

 胃の中でトイレに流されたウミウシが暴れている気がする。


「な、なるほど。なかなか奥深い味だな。も、もう大丈夫だ」

 

 涙目の俺がお茶を啜っていると、ザッツが何やら宙に浮いている巨大な板を引っ張って戻ってきた。


「これだ。これに乗せよう」


「なるほど。浮く台車か。これなら期待できそうだ」


 俺達は、まだ「ふんふん」唸っているフェイスの所へ、浮く台車を引っ張っていくと、額の隣にそれを設置した。


「フェイス殿下。これの上に倒して乗せましょう」


「はぁはぁ。お、お前の手を借りるのは癪だが、この際仕方がない……!」


 俺達は3人で、一斉に力を込めて額を押した、3人で協力すれば、額を倒すくらいはできるだろう。


「「「せーのっ!」」」


 額が少しずつ傾き、重力に従って台車に向かって倒れ込んだ。


 ズドガァァァァン!


 額がハイパー・ゼロ・グラ――浮く台車に乗ったと思った途端、浮く台車がバランスを崩し、お好み焼きのようにひっくり返った。

 台車は錐揉みしながら遥か彼方に飛んで行き、俺達が見守る中、そのままの勢いで、20メートル程上にある天井に突き刺さった。

 パラパラと天井の破片が落ちてくる。

 額は地面に巨大な凹みを作っていた。


「あーあ……。あれ全然使えないじゃないか、ザッツ。天井の修理代どうするんだよ」


「うーむ。おかしいな? 最大積載量50キログラムのはずなんだが?」


「全っ然足りてないだろ! あんなデカいのに俺一人乗れないじゃないか! ……さてと、事態は悪化したぞ。何か他に方法はないか……」


「仕方ない。最終手段だ。オムニ・トランスポーターを使おう」


「トランスポーター? 転送装置か。便利そうなのがあるじゃないか。何でもっと早く出さないんだ? 電気代がすごくかかるとか?」


「いや、指定した座標の半径5メートル以内にある物質は、全て強制的に転移させられるんだ」


「……。床は?」


「もちろん床もだが?」


 おい。何でこの星の技術力はいつもどこか致命的なんだ。誰かの体の一部が球状に切り取られて、床ごと転送される地獄の未来しか見えん。

 えぐり取られた床の修理代は誰が出すんだよ。俺は出さんぞ!


「よし! やめよう」


「そうか……。便利なんだがな」


 仕方ない。こうなったら電気代がかからないで一番コストが安い確実な方法――人海戦術だ。

 俺は、ヘルディナンドに無線を入れた。


『おい、ヘルディナンド。いま司令室か? 緊急招集だ! 全員至急倉庫に来てくれ! 残業代は出ないと言っておけよ!』


 ヘルディナンドが連れてきた兵士は、皆痩せ細っていた。重力の影響を受けず、筋肉を使わない宇宙では、当たり前ということか。

 

(こいつら役に立つのか?)


 俺達は、ヘルディナンドが引き連れてきた50名の痩せ細った兵士達と一緒に、必死で巨大な額を運ぶのであった。



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