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「ただの経費削減ですが?」〜銀河最弱の補給艦隊が、俺の「在庫管理」で最強になったようです〜  作者: 空木 架
アストラ艦長のランチェスター戦略

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第19話 フェイスのエゴサーチと落札者

 フェイスは、宮殿の自室で、起床直後の日課となっているエゴサーチを始めるため、ホログラムディスプレイを起動した。

 慣れた手つきで、ポータルサイトVaRoo!(ヴァルー)を開く。

 いつものように、検索バーに『フェイス様 最高 クール』と入力し、〝検索〟ボタンをタップしようとしたその時だった。


「な、なんだこれはぁぁ!」


 フェイスの指が凍りついた。VaRoo!(ヴァルー)の検索バーの下――トピックスに、変わり果てた自分のデザインが表示されていたのだ。


『エライア姫とフェイス殿下の合作がノヴァオクでバズる』


 フェイスは、タイトルの最初に『エライア』と書いてあることに納得がいかないまま、震える指でそのタイトルをタップした。


『フェイス殿下の絵が描いてある紙を使用し、エライア姫が作り出したアート作品がノヴァオクに3枚出品され、ネットを中心に話題が拡散しています。3枚の合計入札価格は一瞬で2368億ヌールまで吊り上がりました。なお、同時に出品されたフェイス殿下が描いた絵は今のところ1ヌールです』


「くそ! アストラめ! あの野郎、生かしておけん!」


 フェイスは、急いでパジャマから着替え、靴を踏み鳴らしながら部屋を出ていくのであった。


 ◇


 俺は、梱包用の箱を探している間に、エライアが用意した額装を見て言葉を失った。

 鉄板を溶接・リベット止めした、総重量数トンはあろうかと思われる巨大な額だ。


「エライア……。非常にお前らしいんだが、これは……」


「ザッツさんに頼んだのですわ! 素晴らしいものができましたの!」


 エライアの隣で、ザッツが手に持ったガスバーナーをつけたまま、溶接ヘルメットを上にずらした。


「よくできているだろう! 苦労したんだぞ」


「確かによくできてはいるが……。お前ら、持ち運ぶこと考えていないだろ。おい、ザッツ。こんな素材どこから持ってきたんだよ」


「ん? 素材か? あれだよ」


 ザッツが指差す方向にあったのは、機体の土手っ腹に無惨な四角い穴が空いた小型機だった。


「お前! まだ誰も乗っていない新しいやつじゃないか! その隣に、パーツ取り用のジャンク品が置いてあるだろうが!」


「ん? そうだったか? まぁ、もう終わったことだ。諦めろ」


「くそっ! もうちょっと考えろよ……」


 その時、唐突に壁が強い光を放つ。転移装置だ。

 徐々に弱まる光の中から、そのシルエットの人物の姿が明らかになった。

 皇帝だ。


「エライアちゅあ〜ん! パパ会いたかったでちゅよぉ〜!」


「あら、お父様! 今朝ぶりですわね!」


 唐突に現れた皇帝に、俺が少し困惑しながら問いかけた。


「こ、皇帝陛下ではありませんか。このような場所へどのような御用ですか?」


「やぁ。アストラ君。エライアちゅあんと仲良くやっているようだな。先程メールで連絡したのだが」


「メール……ですか?」


 俺はハッと目を見開く。メールで連絡と言ったらあれしかない。落札者だ。


「ま、まさか……。皇帝陛下が落札者? ですか?」


「ん? あれ? そう書かなかったかな? エライアちゅあんのものは何が何でも手に入れたくてなぁ!」


 書いてないわ。こんのクソ親バカがぁ! 税金のムダ遣いをするな!

 待てよ? この落札金額はどうなるんだ? エライアとフェイスに分配されるのか? ただの莫大な金額のお小遣いじゃねぇか!

 俺が、手数料の分だけノヴァオク一人勝ちの絵図に、愕然としながら脳内ツッコミをしている時。また倉庫の壁が光に包まれた。

 光の中から、ものすごい巻き舌の叫び声が聞こえる。


「アースートールゥァァァァァ!!!!!」


 この声は、間違いなくあのアホ冷酷ムダ遣いポンコツ皇子フェイス殿下だ。

 フェイスが、光の中から現れると同時に、皇帝が軽い調子で話しかけた。


「おぉ。フェイスではないか」


 フェイスは突然出現した皇帝に、一瞬で毒気を抜かれ、間の抜けた声で驚きの声を上げる。その声はところどころ裏返っていた。


「え!? ち、父上! な、なぜこのような場所に!?」


「なに、落札したエライアちゅあん3点セットを受け取りにな」


 皇帝がそう言ったとき、エライアが、皇帝の腕に自分の腕を絡ませた。


「ねぇ、お父様。お兄様の絵は買いませんの?」


「え? ……。それ、は……。で、ではそれもいただこうか! たしか1ヌールだったな」


 そう答える皇帝の顔は、まるで十年履き潰したパンツのゴムのように、完全に緩みきっていた。


(いま、一瞬断ろうとしただろ)


 俺がそう思った時、皇帝がフェイスの方をみた。


「では、フェイス。お前には1ヌールあげよう。ちょっと絵を運ぶのを手伝ってくれんか?」


「……分かりました」


 フェイスは、絵に手を掛けると、ふんふん言いながらびくともしない額を必死に動かそうと頑張るのであった。


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