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私(妹)幽霊、姉は悪役令嬢 ~お姉さまが悪役令嬢なわけありませんわ~

掲載日:2026/01/14

読んでいただきありがとうございます。

2年前の、激しい雨と雷の音が響く、暗い夜だった。


「旦那様、アメリアお嬢様が、事故にあわれて重症です」


侍女が転がる様にして、玄関ホールに飛び込んできた。


「アメリアが? 今日はルクセンブルグ家に、訪問していたのではないのか?」


「はい。カーク様とお茶会の予定で、夕方からのこの雨で、急ぎ帰路に着いたようですが、川の急な増水に巻き込まれて、流されたようです。少し下流で橋に引っ掛かり、馬車にはカーク様も乗っていらして、何とかお嬢様を引き上げたのですが、意識が無く治療院に運び込まれました。」


「急ぎ、馬車を!」


「あなた私も行きます」


母はそう言いながらも、ふらついて膝から崩れ落ち侍女に支えられた。


「お父様?アメリアは大丈夫なの?」


「アイリスとフレアは、ここで待っていなさい。私が確かめてくるからね、アメリアは、今までも何度も危機を乗り越えた強い子だから大丈夫、フレア。母さんを頼んだよ」


「はい。お父様」


その日、私の大事な妹は、帰ってこなかった。




✿ ✿ ✿



アメリア 視点


私はあの雨の日に死んだ。


私はアメリア。


ジャクソン侯爵家の次女、留学に出ている、3歳上のお兄様と、ひとつ年上のお姉さまがいる。


体も弱い末っ子だからか、みんなに愛されて育った。


見た目も、ピンクブロンドの髪と、水色の瞳でなかなかかわいいと思っている。


あの日は。婚約者のカークと、月に一度のお茶会をしていたら、急な雷雨で急ぎ帰えることになった。


公爵夫人が、雨が止むまで待つように言ってくれたのを、素直に聞けばよかったのだけど……。


カークが、自分が送るから大丈夫と、帰宅する事になったのよね~。


失敗したわ。


婚約者のカークは軽傷で助かり、花も恥じらう14歳の私だけ死んだのよ!心残りなんて!てんこ盛りよ。


当然、直ぐに天国になんて、行けなかったわ。


私に関する心残りは、もう仕方がないけど。


1年前にディラン王太子殿下と婚約し、厳しい王妃教育を頑張っている、私の大事なフレアお姉さまの幸せを、確認するまでは、死んでも死にきれない。


そんなわけで、今日もお姉さまの幸せを祈り、背後に張り付いている。



私は小さなころ、体が弱くなかなか外にも出られないし、熱が出れば直ぐに死にそうになった。


まあまあ、大変な幼少期だったわね。


そんな中、ひとつ年上のフレアお姉さまは、優しく私に寄り添い、10歳の頃には、薬草を学ぶため薬師院に通い、私に会うお茶をブレンドしてくれた。


おかげで健康になった私は、14歳でカーク・ルクセンブルグ次期公爵様と婚約を結び、幸せを満喫すること半年で…………あの事故が起きた。


カークは、金髪の長い髪をひとつに束ね、琥珀色の瞳が眩しい美丈夫で、性格も身分をひけらかす事なく気さくでおおらか。


私達は、直ぐに仲良くなった。


私が、幸せにしてあげる予定だったけど。


カークにはいい人と再婚約し、幸せになって欲しい。


そして私のこの霊体は、なぜだかそのカークには、見えるし会話もできる。


なので!


お姉さまの幸せのために、カークには頑張ってもらっている。


何よりディラン王太子殿下と、従弟で仲良しなのが、使い勝手がいい。


(カークおはよう)


ちらりとカークが私の方を見た。


私からのおはようへの返事だ。


私にいちいち返事をしていては、カークが頭がおかしい人認定されてしまう。


フレアお姉さまにも、隣のディラン様にも、カーク以外の誰にも私の声は聞こえないのだから。


(お姉さまにも聞こえたらいいのに~)


フレアお姉さまの周りを、ふわふわしながら話しかけてみるも、やはりだめだった。


そんな私の最近の気がかりは、ダージー・ブラウン子爵令嬢!私と同じピンクブロンド((むかつく))さらにピンクの瞳と、ピンクにむせる感じの令嬢だ。


ディラン様を狙っているようで、二人の周りをうろついている。


カークを使って、何とかブロックしているが、なにしろしつこい。


あの女神の様な、フレアお姉さまにイジメられていると触れ回り!さらには、階段から突き落とされたと言い出した。


ディラン様はお優しいので、ダージーの話を聞いてあげているようだが、それもそれでイライラする!


もぉ~なんとかしなきゃ



✿ ✿ ✿




カーク視点


あの日俺は大きな過ちを犯した。


婚約者を、死なせてしまったのだ。


アメリアに初めて会ったのは、従弟のディランが側近候補として、お妃候補と顔合わせを行う席だった。


お妃候補であるジャクソン侯爵令嬢は、妹を連れてきた。


幼少期は病弱で、あまり外に出たことが無く、同世代との交流をさせたいとお願いしたようだ。


フレア令嬢の隣で、かわいらしくカテーシーをする少女に、俺は一瞬で目を奪われた。


ピンクブロンドで、サラサラの髪をハーフアップにし、透き通るような白い肌、緊張しているのか水色の瞳が、不安げに揺れていた。


かわいい~。


話しかけると、とてもしっかりしていて、驚いたがそこにも魅かれた。


帰宅後すぐに、父上に婚約を申し込みたいと願い出たが、病弱だったことや、ディランの婚約がまだな事、そのほか政治的なこともあったのだろう、聞き入れてはもらえなかった。


14歳になり、ディランがアメリアの姉のフレアと婚約し、漸く俺にもチャンスがやってきた。


アメリアは大きくなるにつれ、体調を崩すことが無くなったことと、アメリアとの婚約の意向を譲らなかった俺の熱意に両親も折れ、15歳で婚約することが出来た。


アメリアを婚約者にできた俺は浮かれていた。


あの日も母上はアメリアに泊って行けと言ったが、大好きなフレアを心配するアメリアを、侯爵家に帰してやりたくて、あわよくば俺が、侯爵家に泊まればいいと思っていた。


雨の中、順調に進んでいた馬車は、ぬかるみにはまり横転し河に落ちた。


馬車が傾く瞬間、俺はアメリアを守ろうと、手を伸ばした。


その途端、馬車が跳ね上がり、天井に頭を打ち付け気を失った。


気が付いた時には、馬車のほとんどが水に浸かり、アメリアは水の中に浮いていた。


急いで横倒しの馬車の扉を開け、アメリアを外に出す。


周囲の人たちに助けられ、馬車が引っかかった橋に上がったが、アメリアの意識は戻らず、近くの治療院に駆け込んだ。



アメリアは…………戻ってこなかった。



最愛のアメリアを失い、俺は部屋から出られなくなった。


食事も喉を通らない。


自分の行いを悔い。


眠る事も出来なくなった。


……………………。


一週間ほどして、フレアが俺を訪ねてきた。


ベッドに丸くなる俺の胸座をつかみ、顔を上げさせると、フレアは俺の左頬に平手打ちを食らわせた。


「アメリアの愛したあなたが、なんという様ですか!助かったあなたの命を、無駄にするんじゃありません!前に進むのです。アメリアを一生忘れることなく…………!」


フレアの言葉と、強烈な一発にいっぱい泣いて、俺は顔を上げた。


アメリアを失ったのは俺だけじゃない。


フレアも家族も辛いはずなのに、ひきこもる俺を助けに来てくれた。


将来の王妃に俺は、忠誠を誓った。


数日後、侯爵家のフレアにお茶に呼ばれ出向くと、庭園のテーブルに座り、ほほ笑むフレアの後ろに、手を振るアメリアを見つけた。


なぜだか俺には、半透明のアメリアが見えて話もできた。



✿ ✿ ✿



アメリア 視点


(ちょっとカーク)


「どうした?」


(ダージーまた、何か企んでるみたいなの)


「ディランはべつに、子爵令嬢のことなんて気にしてない感じだぞ」


(気にしてないなら、お姉さまの悪口を聞きくのに、会う必要ないじゃない!だいたい、あの小娘!お姉さまのことを悪役に仕立てるつもりよ!ディラン様も、無駄に大きな胸を押し付けられて、喜んでるんじゃないの~!イライラする)


「落ち着けって、ディランもそんなに馬鹿じゃないし、フレアも困れば侯爵家の力を使えばいいだろ」


(お姉さまは自分のために、家の力など使わないわよ!私が生きていれば、思う存分潰して差し上げられたのに!)


(そもそもカークは、乙女の傷つきやすい心がわからないのよ、どんな理由があれお慕いする婚約者が、ほかの子とイチャイチャして!悲しくないわけがない!)


「まあできるかぎり俺が力になるよ、俺もフレアを悲しませたくない」


(とにかく私、何を企んでいるか、留守の間に子爵家を探ってくるわね~)




✿ ✿ ✿ 




(きゃぁぁ~ 油断しましたわ~)


収穫も無いまま戻ってみると、学園の中庭で、お姉さまを断罪する劇場が始まっていましたわ~。


中庭の噴水のそばに、ダージーが倒れこんでいて、数メートル先にお姉さまが居る。


「酷いです。フレア様!私とディラン様の仲がいいことが、そんなに気に入らないのですね!」


ダージーは大声を上げるとさらに大きな声で泣くふりをして、芝生に顔を伏せた。


誰も近づかない。



ダージーは突然立ち上がり、また叫んだ。


「皆さん聞いて下さい!わたくし今、フレア様に、噴水に突き落とされそうになりました!いつもいつも私を目の敵にして、意地悪ばかり酷いです」


「あの。わたくし何もしておりませんわ、見ていた方もいたのでは?」


お姉さまが、少し怒った顔で、正論で返答する。


集まる人をかき分けて、ディラン様とカークがやってきた。


(ちょっと!カーク!なんでお姉さまが、こんなことになってるのよ!)


カークの後ろに回り、バンバンと背中を叩く!((叩けてないけど))


「そんな事言ったって。」


「あー。ディラン様 助けに来てくれたのですね~嬉しい~」


叫びながら、ダージーは、ディラン様の腕にしがみ付く。


お姉さまの悲しそうな顔……。


(離れろ!ダージー!このこのこの!)


ダージーの頭を、ぽかぽか叩く。


「離してくれないか、ブラウン子爵令嬢」


そう言うとディラン様は、ダージーの手を振りほどいた。


「どうしたんです? ディラン様。恥ずかしがらなくてもいいのですよ」


ディラン様の眉間にしわが寄る。


「同級生でしかないブラウン子爵令嬢と、なぜ腕を組まなければならないんだい?」


「そんな。ディラン様は、私の話を聞いて、かわいそうだとおっしゃって、慰めてくれたじゃないですか!」


「ああ。 かわいそうな子だと思ったよ、子爵家の商会で行われている、悪徳な不正を悪びれもなく私に教えてくれたからね。情報を聞き出すのに、自分が動くのが一番手っ取り早いと判断したまでで、ブラウン子爵令嬢を、慰めたつもりはないよ」


ディラン様が二ヤリと笑った。


(ちょっとカーク!ディラン様って相当な腹黒ではなくて?)


カークもニヤリと笑う。


「でもでもディラン様。フレア様が私を虐めていたことだけは、信じてください」


「ブラウン子爵令嬢。君は王家を馬鹿にしすぎだよ、それとも子爵家では、そんなことも知らないのかな? 第一王子である私と婚約者であるフレアには、学院内でも必ず護衛と影が付いている、そんな見え透いた嘘は通用しないよ」


ディラン様は、フレアお姉さまの隣まで来ると、お姉さまの腰を引き寄せ抱きしめた。


「フレア、心配かけてごめんね。護衛や影の証言が無くても、フレアが芯のある清純で、正しい女性であることは、私が一番わかっているよ」


(きゃー。フレアお姉さま、お顔がまっかっかでかわいいですわー)


私はカークの肩に腕を置き、お姉さまのかわいらしい姿を満喫した。


(ディラン様は、なんだか思った以上に腹黒だけど、お姉さまを大事にしてくれていることは、わかったわ、任せても大丈夫ね)



その後、子爵家が商会を使い、収める税をごまかしていた不正と、以前からみんなうすうす感じていたダージーの狂言は、あっという間に学院と社交界に広がり、ダージーは退学となり、ほどなくして子爵家は取り潰しとなった。



お姉さまの残りの学園生活は、穏やかに流れ、卒業と共にお姉さまは結婚する。




✿ ✿ ✿



カーク視点


(ちょっとカーク、髪のリボンが曲がっているわよ)


「あーありがと」


(フレアお姉さまの大切な 結婚式なんだから!ちゃんとしてよね)


アメリアに言われて、俺は髪を結びなおした。


俺は、教会の親族席と少し離れた2階席で、アメリアと二人、ディラン達の誓いの言葉を聞いていた。


(二人とも幸せそうでよかった)


「そうだな。幸せそうだ」


そう言いながら、横に座るアメリアに視線を向けた。


俺たちはこの3年で、背も伸びたし、少し大人に近づいた。


アメリアは、あの日の………………14歳の姿のままだ。


(カーク私ね。   今日までと決めていたの)


アメリアは、俺の眼を見てほほ笑んだ。


「何をだよ」


(幽霊のままでいる私を。終わりにするの)


「それでどうなるんだよ!居なくならないでくれ」


(ダメだよ。だってカークは、このまま私が近くに居たら、新しい婚約者ができないでしょ)


「俺は、アメリア以外の婚約者はいらない」


(そんなこと言わないで、私の大好きなカークは、絶対に幸せになるんだから)


「アメリア!」


二人を祝福する、鐘が鳴り響いた。



(じゃあね。カーク)


アメリアの姿が薄くなり、体が浮き上がる。


俺は手を伸ばし、アメリアを捕まえようとするが、手はむなしく空を切る。


アメリアが泣いてる。


「アメリア!俺の手に掴まれ」


(私もカークにもう一度。 触れたかった…………。)


「アメリアが、いなくなるなんて無理だ、アメリア以外の婚約者は作らない、置いてくなんて許さない」


(もう…………。泣かないのカーク、しかたないわね!そしたら私が天国に行けたら。神様にいっぱい。 いっぱいお願いして、お姉さまの子供に生まれ変わらせ貰うわ、もし本当に生まれ変われたら、カークを婚約者にしてあげる)


アメリアは、微笑みながら消えて行った。


天を仰ぎ泣き続ける俺の顔に、キラキラと輝く、しずく型の水晶が一粒落ちてきた。



~ 終わり ~


ディラン殿下とフレアの間に一年後女の子が産まれます。

女の子は、しずく型の水晶を握っていたとかいなかったとか。

ちなみにディラン殿下は黒髪 短髪 紫の瞳

フレアは銀髪に紺色の瞳です。


いつも誤字脱字ありがとうございます。



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― 新着の感想 ―
点数稼ぎが好きな自称妹って感じであざといですね。姉にたくさん媚を売って色々賄賂をもらえそうです
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