表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

修理地獄!罪も整理整頓しちゃいます!

料理地獄を改善し終えた私は、アゼルと並んで歩きながら、次なる業務地へと向かっていた。地獄の奥にある、ひときわ静かな空間。そこは「収納地獄」と呼ばれていた。


「ここでは、亡者たちが自分の罪を箱に詰め込み続ける。整理もせず、分類もせず、ただ押し込むだけだ」


 アゼルの説明通り、そこには無数の棚と箱が並び、亡者たちが黙々と罪の記憶を紙に書き、折りたたみ、箱に詰めていた。箱は膨れ上がり、蓋は閉まらず、棚は崩れかけていた。


「……これ、収納っていうより、圧縮爆弾じゃん」


 私は思わずそう呟き、棚の一つに手を伸ばした。すると、バランスを崩した箱が頭上から落ちてきた。


「わっ、危なっ――!」


 反射的にアゼルが私を抱き寄せ、箱の直撃を避ける。だがその拍子に、私は彼の胸元に倒れ込み、棚の隙間に押し込まれるような形になった。


「っ……!」


「……なんか柔らかい……?」


 アゼルの手が、私の腰のあたりを支えていた――いや、支えているというより、揉んでいた。

 そこへ狙ったかのようにセロスが現れた。

 品のある金髪を後ろに束ねて、ポケットに手を突っ込んで、歩いてくる様は彼の持つ品格を無くし、あたかも輩のようだった。


「よーよー!アゼルさんよぉ!またラッキースケベでっか?最早そこまで来るとわざとちゃいます?」


 荷物の下敷きに、なって身動きが取れないでいる私にセロスが近づいて

「仁菜ちゃん、さっさと、こんなところ見切りつけて『白の世界』おいでーな。わしもラッキースケベ味わいたいわ。」

 と、はやし立ててるのか本気なのか分からない口調で耳元で囁いた。

 わたしは、擽ったさに肩をあげ、まだ私の胸元に顔を埋めて、おしりを揉みながらに抱きついているアゼルに、私は反射的に彼の頬を叩いた。


 パシーン!という音が棚の崩れる音と重なって、地獄内に響き渡る。


 亡者たちは手を止め、こちらを見てざわつき始める。


「なんだ?なんだ?」


と、亡者の野次馬が集まって、私達の上京を遠巻きに見ながら


「地獄で一番罪深いの、案内人じゃ……?」


「いや、叩いたのは女の子の方……」


 と、ヒソヒソと声を潜め、話し始めた。


 アゼルは、荷物をどかして立ち上がった。顔が耳まで赤くなってる。私も顔を真っ赤にしながら、崩れた棚を整え始めた。


「もう!いいから!収納に集中して!」


 アゼルは耳まで赤く染めながら、そっと箱を拾い直した。


 その後、私は収納地獄の構造を見直し、罪の分類と整理を提案した。亡者たちは、自分の罪をただ詰め込むのではなく、ラベルを貼り、時系列で並べ、必要に応じて“取り出して向き合う”という新しい儀式を始めた。


「罪って、しまい込むだけじゃダメなんだよ。時々、取り出して、見直して、整えて、またしまう。それが、本当の収納」


 亡者たちは静かに頷き、棚の中に整然と並んだ箱を見つめていた。


 アゼルは私の隣で、そっと呟いた。


「君が来てから、地獄が少しずつ人間らしくなった。……俺も、少しずつ変わってる気がする」


 私は彼の言葉に、少しだけ照れながら笑った。


「じゃあ、次は何を整えようか。地獄、まだまだ詰め込みすぎてるよ」


 収納地獄の棚に、静かな風が吹いた。罪の箱が、ふわりと揺れた。


──収納地獄、改善完了。

仁菜とアゼルは、次なる地獄へと歩き出す。

その距離は、少しずつ、こぼれ落ちた罪の隙間で縮まっていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ