修理地獄!罪も整理整頓しちゃいます!
料理地獄を改善し終えた私は、アゼルと並んで歩きながら、次なる業務地へと向かっていた。地獄の奥にある、ひときわ静かな空間。そこは「収納地獄」と呼ばれていた。
「ここでは、亡者たちが自分の罪を箱に詰め込み続ける。整理もせず、分類もせず、ただ押し込むだけだ」
アゼルの説明通り、そこには無数の棚と箱が並び、亡者たちが黙々と罪の記憶を紙に書き、折りたたみ、箱に詰めていた。箱は膨れ上がり、蓋は閉まらず、棚は崩れかけていた。
「……これ、収納っていうより、圧縮爆弾じゃん」
私は思わずそう呟き、棚の一つに手を伸ばした。すると、バランスを崩した箱が頭上から落ちてきた。
「わっ、危なっ――!」
反射的にアゼルが私を抱き寄せ、箱の直撃を避ける。だがその拍子に、私は彼の胸元に倒れ込み、棚の隙間に押し込まれるような形になった。
「っ……!」
「……なんか柔らかい……?」
アゼルの手が、私の腰のあたりを支えていた――いや、支えているというより、揉んでいた。
そこへ狙ったかのようにセロスが現れた。
品のある金髪を後ろに束ねて、ポケットに手を突っ込んで、歩いてくる様は彼の持つ品格を無くし、あたかも輩のようだった。
「よーよー!アゼルさんよぉ!またラッキースケベでっか?最早そこまで来るとわざとちゃいます?」
荷物の下敷きに、なって身動きが取れないでいる私にセロスが近づいて
「仁菜ちゃん、さっさと、こんなところ見切りつけて『白の世界』おいでーな。わしもラッキースケベ味わいたいわ。」
と、はやし立ててるのか本気なのか分からない口調で耳元で囁いた。
わたしは、擽ったさに肩をあげ、まだ私の胸元に顔を埋めて、おしりを揉みながらに抱きついているアゼルに、私は反射的に彼の頬を叩いた。
パシーン!という音が棚の崩れる音と重なって、地獄内に響き渡る。
亡者たちは手を止め、こちらを見てざわつき始める。
「なんだ?なんだ?」
と、亡者の野次馬が集まって、私達の上京を遠巻きに見ながら
「地獄で一番罪深いの、案内人じゃ……?」
「いや、叩いたのは女の子の方……」
と、ヒソヒソと声を潜め、話し始めた。
アゼルは、荷物をどかして立ち上がった。顔が耳まで赤くなってる。私も顔を真っ赤にしながら、崩れた棚を整え始めた。
「もう!いいから!収納に集中して!」
アゼルは耳まで赤く染めながら、そっと箱を拾い直した。
その後、私は収納地獄の構造を見直し、罪の分類と整理を提案した。亡者たちは、自分の罪をただ詰め込むのではなく、ラベルを貼り、時系列で並べ、必要に応じて“取り出して向き合う”という新しい儀式を始めた。
「罪って、しまい込むだけじゃダメなんだよ。時々、取り出して、見直して、整えて、またしまう。それが、本当の収納」
亡者たちは静かに頷き、棚の中に整然と並んだ箱を見つめていた。
アゼルは私の隣で、そっと呟いた。
「君が来てから、地獄が少しずつ人間らしくなった。……俺も、少しずつ変わってる気がする」
私は彼の言葉に、少しだけ照れながら笑った。
「じゃあ、次は何を整えようか。地獄、まだまだ詰め込みすぎてるよ」
収納地獄の棚に、静かな風が吹いた。罪の箱が、ふわりと揺れた。
──収納地獄、改善完了。
仁菜とアゼルは、次なる地獄へと歩き出す。
その距離は、少しずつ、こぼれ落ちた罪の隙間で縮まっていく。




