2話
見知らぬベッドで目が覚めた。
ここはどこだ?
ベッドはふかふかで、部屋の装飾もどこか金持ちっぽい。
昔の貴族はこんな感じだったのだろう。
…?
となると、本当にここはどこだ?
天国や地獄にもこんなベッドがあるのだろうか?
…
いや、違う。
俺はおぼろげな記憶を思い出した。
異世界だ。
夢じゃなければ、ここは異世界で、俺は転生したんだ。
高位の神のような存在が、俺をここに飛ばしたんだ。
ベッドから起き上がり、手をグーパーして、感触を確かめた。
頬をつねってもみた。
…?
体に違和感を感じる。
普通に動かせるが、どこか自分じゃないような…
ベッドから立ち上がって、俺は確信した。
この体、俺のじゃない。
視点が低い。
顔を触って再確認する。
髭も生えていないし、肌もなんというか、きめ細かい。
鏡は…
この部屋にはない。
…
俺は誰かの体に入ってしまったのか。
だとしたら、この体の元の持ち主はどうなってしまったのだろう。
俺が乗っ取ったせいで、この世界からいなくなってしまったのか?
今まで”オートで進行された”俺の新しい人生の可能性もあるが…
…
罪悪感で胸が痛い。
転生と聞いて少し喜んでいたが、こうなると話は別だ。
しかし、元の持ち主に返す方法が分からない。
どこの誰かも分からない。
…
俺はため息を吐いた。
とりあえずはこの体の元の持ち主のふりをしよう。
転生だの異世界だのは信じてもらえないだろうし。
持ち主に返せるようになったら、その時は素直に返そう。
人から奪ってまで新しい人生を歩むつもりはない。
だからその時まで、俺の異世界転生を楽しもう。
ガシャン!
いきなりガラスが割れる音がした。
音の方を見ると、ドアの前で立ち尽くすメイドと、その足元に割れた花瓶が散らばっていた。
「ラックス様…!」
メイドは声を震わせて言って、どこかへ走って行った。
「あ、あの…」
俺の声は届かなかった。
…
ラックス様。
ラックス…
ラックって、「運」だよな。
なんだか神に馬鹿にされているような。
それとも、幸運に恵まれるような転生先を選んでもらったのか?
…今は分からないか。
とにかく情報が必要だ。
新しい人生を楽しむためには、運の前にまず情報だ。
よし、メイドを追いかけよう。
俺は部屋の外へ、足を踏み出した。




