親獣のドラゴン
親獣の召喚が終わり、教室へ戻ってきた。ほおづえをつき、机にいる親獣を眺めながら考え事をしていた。
ふわっと春風が吹き抜け教室の入口を見ると、ルイナが立っていた。
ルイナは優しい表情でこちらへ歩いてきた。
「考え事ですか?」
少し心配そうに話しかけてきたルイナに優しく答えた。
「親獣の竜に名前をつけようと思いまして。考えている所です。」
「親獣に名前、ですか。面白いことを考えるんですね。」
え?親獣はペットみたいな物だから皆名前をつけるのでは?
「面白い…でしょうか?」
「はい!親獣に名前なんて考えた人居ないですよ。シアラの親獣はこの子ですか?」
私の隣の席へ座り、竜を眺めた。
「そうですよ。触ってもいいですよ。」
「ありがとうございます。ドラゴンですか。難しいですね…」
その時、教室のドアが勢いよく開いた。
入ってきたのは、リーク様、オニキス殿下、プラチナ殿下だった。
「ルイナ!聞いてくれ。オニキス殿下とプラチナ殿下と話せたんだ。」
ルイナは少しも驚いた素振りを見せず、ニコリと微笑んだ。
「良かったですね。リークは幸運なのですね。」
「紹介する。こちらがオニキス殿下で、こちらがプラチナ殿下だ。」
2人ともペコりと私とルイナに会釈した。
「お初にお目にかかります。ルイナ・シラクトと申します。どうぞお見知り置きを。」
ルイナはスラっと立ち上がり礼をした。私も立ち上がり挨拶をした。
「シアラ・リオリスです。よろしくお願いします。」
「存じています。プラチナ・レオ・プライドと申します。こちらが弟の」
「オニキス・レオ・プライドです。年が一つ下なのですが、よろしくお願いします。」
オニキス殿下は優しくこちらに微笑みかけた。びっくりして目を逸らしてしまった。
「ところでそちらのドラゴンは?シアラ嬢の親獣ですか?」
「はい、そうです。せっかくなら名前をつけたいと思いまして。何かいい案はありますか?」
リーク様が竜を見つめて言い、その言葉に返した。
「ふむ、親獣のドラゴンに名をか。」
プラチナ殿下が顎に手を当てた。
皆が私の親獣を見つめて考え出した。
白くて青い目。小さくくるっと回り、座った。
「……ルコはどうだ?」
オニキス殿下がふと声を出した。
「ルコ?可愛らしい名前ですね。それにします。」
にこりと微笑み、まっすぐにオニキス殿下の事を見つめた。
「ありがとうございます!」
すると横からルイナが肩を組んできた。突然のことにバランスを崩してしまった。
「シアラったら〜。もー。隠さなくても良いのに。何かあったんでしょ?こっちで二人で話そうじゃない。」
「え、あ、お先に失礼しますー。」
ルイナに引っ張られながら殿下の方を見ると、リーク様に冷やかしを受けて居るように見えた。オニキス殿下の顔が少し赤らんでいるのを見て、嬉しく思った。
「シアラー。もう殿下とそんなに仲良くなったの?いつの間に。」
教室から少し離れた廊下でルイナが言った。
「そういうのじゃないんだって。」
恥ずかしくて下を向いてしまった。
「そんな事ないでしょ!シアラはオニキス殿下の事どー思ってるのよ。」
「今は特に何も無いよ。ルイナ、恋話好きなの?じゃあリーク様とルイナはどーなの。」
ルイナはハッとしたかのように目を背け言った。
「んーじゃあ今はやめるからさ、私と敬語やめよう?お互い元平民だし。」
華やかに微笑むルイナにつられて笑ってしまった。
「分かった。じゃあお互い敬語やめよう。」
絶対話題逸らした。と思いながらも仲良くなっといて損は無い相手だったので、笑いあった。
「教室戻ろう。次の授業が始まるわ。」