ダンジョンの中と隠し事
「必要ないですよ。代わりに、今からここで起こること、誰にも話さないでくださいね?」
その後ろ姿は勝てるという自信に満ち溢れていた。
ライは一歩右へ踏み出した。途端に一気に視点が低くなった。立っていた俺は膝から崩れ落ちた。ライから発せられた威圧感と言うのだろうか。それだけでゴブリンが一歩下がった。
にやりと狂気的に笑う。綺麗なライの髪がふわりと舞い上がった。不思議に思っていると、ライの視線の先からゴブリン達の断末魔が聞こえた。見ると、大きな竜巻にたくさんのゴブリンが巻き込まれていた。それも、とても大きな竜巻がいくつも立っていた。
身の危険を察したのか、数体のゴブリン達が逃げ出した。どうするんだ、逃がすのか?と思い追いかけようとすると、一瞬でライが消えた。何が起きたのか、脳の理解が追いつかない。瞬き一回の時間で、ライはゴブリン達の進行方向を遮った。
「逃げようなんてひどいなー。僕の方が速いに決まってるのに」
そして、ゴブリン達を一気に斬った。何を使って斬ったかが分からない程、目にも止まらぬスピードで。
「だいぶ見晴らしが良くなったね〜。あぁ、心配しないで。ちゃんと皆倒すから」
数え切れないほどいたゴブリンが、今ではもう、30体程しか居なくなっていた。
おいでおいで、と手招きするライに対して、逃げ道がないと知ったゴブリンはライに襲いかかった!
「かかっておいで。返り討ちにしてあげる」
もちろんとでも言わんばかりに勢いよくゴブリンが突進してきた。ひらりと華麗に交わす。ゴブリンは勢いが余り、反対側に居たゴブリンにぶつかってしまった。周りのゴブリンはどうすれば良いのか分からず、やみくもにライに襲いかかった。沢山のゴブリンが一気に襲って来ていたから心配になったが、その気持ちは一瞬にして要らぬものとなった。腰にさしてあった片手剣で素早く十体ほど切り刻んだ。残りのゴブリンは感電したかのように体が震え、別のゴブリンは斬られたことに気づく間もなく倒れた。
またたく間にあんなに沢山いたゴブリンが全滅してしまった。
「リークサーン!もう大丈夫ですよ、こっち来てくださーい!」
にこにこと微笑みながらこちらに手を振ってくるライに少し恐怖を覚えたが、その恐怖は一瞬にして驚愕に変わった。ライの背後にとても大きなゴブリンが見えたからだ。その大きさは、男性の中でも背の高いライの3倍はゆうに超えていた。そんな巨大ゴブリンがライに向かって攻撃をしようとしていた!
「ライ!危ない!!」
叫んで全力で走ったが、間に合わない…!!
ライは驚くような素振りを全く見せず、くるりと後ろを振り返った。そして右足を軽く浮かして曲げ、敵に向かって真っ直ぐに伸ばされた腕の先には手で銃の形をつくっていた。指の先には雷が凝縮されたかのような弾が生成されている。そして、女の子の心を射止めるかのように甘々しく攻撃をした。
「バン♪」
その一撃はゴブリンの額に直撃し、ゴブリンは倒れた。
「さぁ、リークサン。ゴブリンの角、集めよーぜ。これだけ居れば大丈夫だろ」
「あ、あぁ。それはそうなんだが。お前やっぱ呪文言ってないだろ」
「小声すぎて聞こえないなぁ」
「それに、さっきの一撃は明らかに呪文じゃない言葉を言っていたと思うが?」
「まぁまぁ、早くしないと置いてくぜ?」
話したい事はまだまだあったが、皆と合流するのが先だ、仕方ない。作業を優先するか。
「あれって風魔法だけじゃないよな?風魔法ってそんなに速く走れるようになるものなのか?」
「いや、雷魔法だよ。特殊魔法ってヤツ。ルイナ嬢の光魔法も特殊魔法だよ」
「そ、そうなのか?強いんだなお前。俺もお前くらい強くなれば騎士団長になれるか?」
「とりあえずここで見たことは他には言うなよ。というかリークサン、騎士団長なりたいのか?」
「父親が元騎士団長でな。憧れてたんだ。皆には秘密なのか?なぜだ」
「ルトマリン家は隠し事が好きなんだ」




