テリーナ
テリーナ視点です
全て僕が間違っている。全て僕がわるいんだ。そんなことは知っている。知っているんだ。
僕が悪かった。勝手に2人と仲良くなって、友達になって。消えない王族と貴族の差を突きつけられて、嫉妬して…
だからやめたんだ。オニキスと、プラチナと関わるのを。
僕は2人の知っている幼なじみから変わったんだ。私は新しいテリーナ・アクバンドとして生きていくのだ。2人とは出来るだけ接触率を減らしたい。学園に入ると接触率も減るだろう。入学式まで我慢だ。そう思っていたのに。
「自己紹介は不要でしたが、ありがとうございます。勝手ながらこちらで調べさせていただきました。特に用がないならダンジョンハンターの作戦を考えましょう。」
ルイナと名乗る魔力の塊のような女と、シアラと名乗る女にダンジョンハンターのチームの誘いが来た。
メンバーを見て決めるつもりが、頼まれてメンバーを知らぬままチームに加入すると言ってしまった。
チームにプラチナとオニキスが居ることを知っていたら入らなかったのに。
「私たちのチームは、水、風、土、火、光の魔法を使えます。なにか作戦が思いつく人は居ますか?」
ルイナ嬢が宥めるように優しく言った。
「ダンジョンハンターはダンジョン攻略のスピードを競う。つまりボスの首をどれだけ早く落とせるかの勝負です。相手は魔物。」
プラチナが優しく言った。声色が聞いた事のない優しく、少し張り詰めたような声をしていた。いや、聞いていたのかもしれないが、その頃をもう忘れてしまった。
空気がしーんと静まり返った。考えているのか会話が止まった。
「なら、作戦では無いのですが、少しよろしいですか?」
一人の女性が手をあげて言った。
…こんな奴チームにいたか?
少し小柄とはいえ、視界には入るはずだ。
ブルームーンストーンのような、銀に近い水色の髪をした女が空気を入れ替えるようにはっきりと声を出した。
全員の同意が入り、意見を述べる。
「少しだけ、テリーナ様と2人きりで話をさせて貰えないでしょうか。」
…私?
理由は分からなかったが、時間を無駄にしたくなかった為、彼女について行くことにした。
移動をしながら彼女の話を聞くと、シアラ・リオリスと名乗り、自分が平民出身であることを明かした。
「どうして私をあの場から連れ出したのですか?」
「プラチナ殿下とテリーナ様の目線での争いを見ていられなかったからです。」
「どうして私にその話をするのですか?」
「……。着きましたよ。テリーナ様。ここが目的地です。」
そこに広がっていたのは花畑だった。遊んでいる間に1日が終わりかけようと、空一面の星に、満月が浮かんでいた。咲いていたのは、彼女の髪色に少し似た色をした勿忘草だった。
「私の一番のお気に入りの場所です。素敵でしょう?」
「学園内にこのような場所があったのですか?」
「門を出たのをお気づきになられませんでしたか?かなり学園から離れた場所にあります。」
彼女は私をここへ連れてきたかったのだろうか。それともまた別の話をしたかったのだろうか。
「私は貴方の、貴方達の気が少しでも楽になって皆でチームになりたいのです。」
どこまでも広がるような花畑に綺麗な星がこの場所を包み、月が彼女を照らしている。
そう言い、ゆらゆらと髪をゆらしながら月を眺める彼女の声は、誰かをなだめるように優しく、誰かを叱るように厳しく言っているようにも聞こえた。昔の私を知っているかのように、慰めるように。叱るように。
「貴方は私にこの光景を見せたかったのですか?」
「私は綺麗なものが好きです。花ももちろん、宝石やガラス。あの月や星も。」
彼女が何を言いたいのかは分からなかった。ここまで行動を読めなかった人は初めてだったから。冷徹の家系とは思えないほどの感情がある私に、家族からも、周りからも「おかしな子」という目で見てきた。家族に関すれば「家の名に傷がつく」だの「お前は私達の家系らしくない」だとか言って追い出されかけた事もあった。そのため行動パターンはほとんどの人が同じだった。
オニキスとプラチナはそんな私を受け入れてくれて、仲良くしてくれた。だからもっと大切にするべきだった。大切にするべきだった二人に嫉妬した。だから…
冷徹なフリをした。
一人称も僕から私に変え、立ち姿、態度、声質、性格。昔の僕から新しい私に変わった。
変わったはずだったのに。
彼女の姿を見ていると、彼女と話していると、気持ちがふわっと浮いて軽くなる。今まで背負っていた物を少しだけ下ろせたような感覚があった。何も変わってないが、それでいいと言ってくれている気がして、昔の自分を思い出してしまい、甘え泣きしたくなった。
「どうですか?私は楽しいです。これからは誰にも相談出来ない悩みなどを、私に話してくださいね。あなたの辛みを一緒に背負わせて欲しいんです。」
にこっと優しく微笑みながらこちらを見つめた。その瞳は信頼できる物だった。
「これは困った、研究棟自由使用許可願いを出さねばならないね。」
シアラ嬢の顔がパッと明るくなった。私はできるだけ綺麗にを心がけ花かんむりをつくり、彼女の頭の上にサッとのせた。
彼女は驚き、座り込んだ。座り込んでから嬉しそうに花かんむりを手で軽く触れた。
「下さるのですか?私に。」
「私の友達になって下さい。そしてまたここで遊びましょう。」
彼女は見た事ないほど明るく微笑んで
「もちろん、今遊びましょう!私を捕まえてみてくださーい!」
「えぇ、あ、転ばないようにだけ気をつけてくださいね。」
元平民だとしても、今は貴族。こんな明るくて元気な貴族令嬢が居ていいものなのだろうか。この明るさがシアラ嬢の良い所なのかも知れないが。
「は、速いです。シアラ嬢。」
「テリーナ様もなかなかでしてよ。追いつかれそうになったのは久しぶりです。」
二人して花畑で寝転がって話した。一日中遊んだ疲れが一気に出てきていたのに、私たちは笑っていた。
そのまま寝転がって魔具で写真を撮った。
彼女はもちろん私も、今までで誰も見た事が無いくらい自然に明るく笑っていた。
勿忘草の花言葉は「私を忘れないで」「真実の愛」「誠の愛」
そして「真実の友情」




