プラチナ
遅れてしまい、申し訳ありません。
プラチナ視点です
「テリーナ・アクバンドと申します。よろしくお願いします。」
嬉しそうなルイナと反対に、会いたくなかったとこちらに訴えてくるように冷たく放ったテリーナの言葉と態度に、少し腹が立った。が、ぐっとこらえて優しく挨拶をした。
「必要無いかもしれませんが、私はプラチナ・レオ・プレイドです。使用魔法は、炎魔法と、少しなら水魔法も使えます。こっちが…」
「弟のオニキス・レオ・プレイドです。使用魔法は風魔法とその応用。事情があり、一年早く入学しました。」
自己紹介はしてみたものの、テリーナの態度が良くなる訳もなく…
「これはこれはどうもご丁寧に。私の使用魔法は水魔法です。攻撃特化ですが。まぁこんな自己紹介私たちにはいらないですけれども。」
その場がしーんと静まり返る。
この空気は私が何を話しても変化しない事を察し、リークに合図を送った。
「俺はリーク・アレイドだ。使用魔法は土魔法だが、正直に言うと物理攻撃の方が得意だ。よろしくな、テリーナ様!」
こういう時こそリークの明るさが役に立つと思ったのだが、逆効果だったかもしれない。
「自己紹介は不要でしたが、ありがとうございます。勝手ながらこちらで調べさせていただきました。特に用がないならダンジョンハンターの作戦を考えましょう。」
そう、テリーナは効率主義という言葉を人にしたような人なのだ。そんな風にしてしまったのも私なのだがな。
私、弟のオニキス、テリーナは幼なじみだった。
小さい頃のテリーナは髪を結ばず、言われた事はやるが、自分のしたい事もする。自由な人だった。小さい頃からずっと仲良く追いかけっこやかくれんぼなどの色んな遊びをたくさんした。
しかし、私が10歳になった頃、次期王としての教育を叩き込まれていった。それまでも勉強の時間はあったが、休憩時間に三人で遊んでいた。
勉強時間が増え、休憩時間が減った。三人で遊べる時間も少しづつ減っていった。
「プラチナ。オニキスが雪だるま三人でつくろうって。」
三人で約束した事だった。毎年屋敷の庭で三人で大きな雪だるまを作ること。しかし10歳になった私に遊ぶ時間は無くなっていた。
「ごめん。作りたいけど、つくってる時間なくて。」
「プラチナは僕とオニキスより勉強の方が大切なのか。」
胸が締め付けられた。屋敷の外に出ることはほぼ許されなかった私とオニキスの唯一の友達がテリーナだった。そんなテリーナが悲しむ事はしたくなかった。
「ごめん。」
十三になった時に、私とオニキスとテリーナ。三人一緒に父上、現国王から魔法を教わった。
オニキスは風でつくった見えない壁をつくれるようになり、私は炎をほとんど自由に操れ、小さな水の球をつくれるようになったが、テリーナは上手く扱えず、自分の使えるはずの水魔法が小さな水の球しかつくれず、たまに暴走して私達を襲った事もあった。
テリーナは上手くなりたい一心で、父上に弟子入りし、私達よりたくさんの時間を魔法の練習に使った。しかし、あまり上達せず、一緒に練習する時は、父上は上達する私とオニキスばかりを褒め、テリーナには励ましの言葉ばかりをかけていた。
いつしかテリーナは、私が水魔法を使っている時、にらんでくるようになった。
「テリーナ、待ってくれ。どうして私をそんな目で見るんだ。」
練習が終わった後に声をかけた。すると辛そうにこちらを向かずにテリーナはボソッと言った。
「いいよなプラチナは。」
「テリーナ、なんて言ったんだ?」
純粋な気持ちだった。何かいたずらをしようと思った訳では無かった。ただ、私が思っていたより、テリーナは大人だった。
「いいよなお前は!炎も上手く操れて、水も使えるなんてさ。僕はいくら練習したって。僕の魔法は僕の言う事を聞いてくれないんだ。そもそも駄目だったんだよ。王子のお前らと貴族の僕が仲良くなったら駄目だったんだよ!」
どうしてそうなったのか分からなかった。色んな考えが頭をめぐってどんどん分からなくなっていった。
「テリーナ、私はただ」
「僕は!」
自分の意見を整理しようと発言したら、テリーナに遮られた。
テリーナは泣き崩れるかのように膝から崩れ落ちた。
「僕はただ、同じ水魔法を使うのに、お前だけ上手く使えてて、お前だけが師匠に褒められているのに嫉妬したんだ!でも僕とお前らはスタートラインが違ったんだ。比べてはならなかったんだ!王族と貴族の差。認めたくはない、無くならない差なんだよ。これが。」
何も言えなかった。言ってる内容はあまり分からなかったが、テリーナの言っている事は正しい気がした。
「もういいよ。悪かったな。次の練習でまた会おーぜ。」
次の練習、テリーナに謝るべきだと思い、覚悟を決めて練習場に入ったが、そこにいたテリーナは今まで私が共に時間を過ごしてきたテリーナでは無かった。
綺麗な直立に乱れのない練習着を綺麗に着こなし、髪も綺麗に一つに束ねていた。謝ろうと話しかけても、やはり別人としか思えなかった。
「テリーナ。私が…」
体をこちらへ向け、滑らかに優しい口調で話を逸らした。
「プラチナ殿下。いらっしゃったのですね。あと十分ほどで練習が始まりますので練習着に着替えて下さい。」
それからテリーナは私とオニキスに敬語になり、一人称も僕から私になった。焦った時にたまに僕と言っている時もあるが、テリーナはそのままどんどん昔の面影がなくなっていった。
それから関わる頻度はぐんと減り、練習場以外で顔を合わせなくなった。
「兄さん、最近テリーナの様子がおかしいんだけれど、」
ある日、オニキスが聞いてきた。心当たりしか無かったが、オニキスを心配させたくなかった。
「体調でも悪いんじゃないか。」
「でも、僕少し寂しいよ。」
私とオニキスの会話が減ることは無かったが、オニキスとテリーナも関わる頻度が減っていった。




