6 ひとりぼっちの孤独なお散歩
ひとりぼっちの孤独なお散歩
午後の時間。
れいは観測所の外に広がっている緑色の大地の上をゆっくりと(まるで月の上を歩いている人みたいに)歩きながらお散歩をした。
世界には優しい風が吹いている。
ときどき、れいは白い月を見る。
とき博士は月にいけたのかな?
白い月を見て、そんなことをれいは思う。
とっても遠くにある、真っ白な月を見ていると、まるでその真っ白な月が、ひとりぼっちでお散歩をしている、孤独なれいに語りかけてくるみたいにして、いろんなことをおしゃべりするみたいにして、語りかけてきた。
れいちゃんの見ている世界はれいちゃんだけの世界なんだ。本当にね。
れいちゃんはれいちゃんとして生きているだけで、意味があるんだよ。れいちゃんに必要なことは、自分を自分で認めてあげることだよ。れいちゃん自身が、れいちゃんのことを大好きになることなんだ。
世界は変化していくものなんだよ。あらゆる人にとってね。あるいは同じ自分でも生きている間に、少しずつ変化をしていくものなんだ。
失敗しない人なんていないよ。そんな人はどこにもいないんだ。
れいちゃんのこと、大好きだよ。出会ったときから、ずっと大好き。
それは、みんなとき博士の言葉だった。
小さな白い月は、とき博士の声で、そんなことをれいに語りかけてきた。
鏡に映った自分の顔。
本当の顔じゃない顔。でも、その顔を見て、自分の顔を観察することしかできない。
自分で自分の本当の顔を見ることは、誰にもできないのだから。
それが、もっとも難しい問題。
自己認識。
自分で、自分のことを本当に理解すること。
それもとき博士の言葉だった。
そんなとき博士の言葉を思い出して、れいは、それはまるで悟りにいたることみたいだなって、そんなことを思ったりした。(あるいは、湖に映っている月を掬うことみたいだと思った。確かにとっても難しい問題だった)