5 月の歩きかた
月の歩きかた
ときどき空を飛ぶ夢をみる。
この夢がどんな私の心から生まれた望みなのかはわからない。
夢の中で私は空を飛んでいる。
空を飛んで、あの白い月にいくのだ。
そこで私はもう一度、あなたと出会う。
出会うのだ。
……、あなたと一緒に月を歩くんだ。
壊れた宇宙船
観測所の近くにある緑色の大地の上に大きな白い人工物が見える。
それは壊れた宇宙船だった。
その真っ白な宇宙船はずっとむかしに本当に月までいったことのあるとてと古い時代の宇宙船だった。(今は遺跡のようにそこにあって、じっとしていた)
帰るときに、そんな風景を見て、れいは空を見上げた。
するとそこにはいつものように青色の空の中に浮かんでいる、小さな小さな白い月があった。
「お昼ごはんはカレーが食べたいな。とっても甘いやつ」
とジープを運転しながらとき博士はいった。
「わかりました。いいですよ」
れいは言った。
観測所に帰ってくると、れいはとき博士の希望の通りに甘いカレーライスを作った。
「できましたよ、とき博士」
お昼ごはんの時間になると、エプロン姿のれいはお仕事をしているとき博士にそう声をかけた。
ぱたぱたと嬉しそうな足音を立ててやってきたとき博士は目を輝かせて、甘いカレーライスをとっても美味しそうにお腹いっぱい幸せそうな顔で食べた。(れいはそんなとき博士を見ながら、自分も甘いカレーライスを食べていた)
「とき博士。私、とき博士のこと。大好きです」
午後のおやつの時間に、まるで月みたいな丸いホットケーキを食べているときに、突然そんなことをとき博士にれいは言った。
「私もれいちゃんのこと、大好きだよ」とにっこりと笑って、銀色のフォークで焼きたてのまんまるのお月様のホットケーキ(とてもうまく焼くことができた自信作だった)を食べていたとき博士はれいを見てそう言った。
テーブルの上にある飲み物はレモンティーだった。
やっぱり月みたいな輪切りの檸檬が紅茶の上にぷかぷかと浮いていた。
「おいしいね。ホットケーキ」
ともぐもぐと子供みたいに蜂蜜をかけたホットケーキを口いっぱいに頬張っているとき博士がれいに言った。
ホットケーキが食べたいって言い出したのは、とき博士だった。
「ありがとうございます。頑張って作ってよかったです」
とにっこりと笑って(ちょっとだけ泣いちゃいそうだった)れいは言った。(それから甘い蜂蜜たっぷりのホットケーキをご褒美みたいに食べた。うん。おいしい)