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観測所は真っ白な建物だった。
小さな二階建ての建物で、一階が生活をするためのスペースで二階が白い月を観測するためのスペースになっている。
観測所の天井には大きな白いアンテナがあって、まるで花のように咲いている。
その大きな白いアンテナで、月からの通信を受ける。あるいは、月の電波を観測する。
天体望遠鏡はない。あくまで電波を観測するだけだ。(月を望遠鏡などを使って見ることは宇宙法と呼ばれる特殊な法律で禁止されていた)
そんな観測所の外観を、れいは強い風の吹いている緑の世界の上にたって眺めている。
れいの肩までの黒髪がその強い風に揺れている。
れいは泣いてる。
その涙を見て、どうして私は泣いているのだろう? ってれいは疑問に思った。
れいは白い少し小柄なれいにはぶかぶかで大きめの宇宙服のような不思議な服を着ている。それは観測所での特殊な作業着で、れいは普段、とき博士のお手伝いをする時間は、この白い宇宙服を着ている。
観測所の責任者であるとき博士の助手であるれいは主に一階で家事を行い、月の観測や研究ばかりをしている、(私生活のだらしない)とき博士の生活のサポートをしていた。
今日もれいがいつものように早起きをして、観測所の掃除をしてから、(もとから掃除の必要もないくらいに綺麗だったけど)キッチンで朝ごはんの用意をしていると、二階からとき博士がまだ眠そうな顔をして、あくびをしながらスロープの階段をおりて一階にやってきた。
「おはよう、れいちゃん」
「おはようございます。とき博士。朝ごはんできてますよ」と、にっこりと笑って、エプロン姿のれいは目玉焼きを焼きながら言う。(ちょうど、ちん、と言ってトーストが焼き上がった)