1 帰ろう。みんなのいるところに。
コスモスと一緒に。
帰ろう。みんなのいるところに。
「幸運の星を掴まないとね。ようやく手が届きそうなところまでやってきたんだからさ」と、遠くの宝石みたいにきらきらと光り輝いている一つの星に向かって、にっこりと笑って水槽みたいな特殊なガラスのヘルメットの中で三日月は言う。
三日月は宇宙船の部屋の中をふわふわと浮かんで、ゆっくりと漂いながら、ペンダントにしている片手におさまるくらいの小さな石を見る。それは月の石だった。宇宙飛行士だった三日月のお母さんが月で拾ってきてくれた石で、三日月の大切な大切な宝物だった。
私たちは(どんな場所にいても)歌を歌い、ダンスを踊る。
小星三日月がその音を聞いたのは、本当にただの偶然だった。
……なに? この音? こんな場所で音なんて絶対に聞こえてこないはずなのに、……私の幻聴? それとも、……もしかしてこれって……。
「三日月。どうかしたんですか?」
耳元にある通信機から、そんな聞き慣れた『人工知能のコスモス』の声が聞こえてくる。
「ううん。なんでもない。報告は、宇宙船の中に帰ってからする」
三日月は言う。
「了解です」
明るい声でコスモスは言う。
それから三日月は自分の仕事である『宇宙船の外壁の検査と安全の確認』をする。
三日月は、今、宇宙にいる。
宇宙空間の中で、一人孤独に、真っ白な(太っちょの)宇宙服に身を包んだままで、大きな花が咲いたような可愛いピンク色のアンテナをつけている、真っ白な丸い球体の形をした宇宙船の定期的な検査と安全の確認をしている最中だった。
それが宇宙飛行士である三日月の仕事だった。
その仕事が終わったところで、宇宙船の中に帰る前に、三日月は、透明なガラスの中で、小さな声で歌を歌った。
それは、愛の歌、だった。(三日月の故郷の国で流行っていたむかし、むかしのラブソングだった。お母さんの大好きな歌)
三日月の視界の先には、真っ暗な宇宙の中できらきらと光っている星たちの中でも、とくに大きな光を放っている一つの綺麗な星がある。
太陽みたいな星。
でも、その星は『太陽ではない』。
なぜなら、三日月は、太陽系の外側にいて、生まれ故郷の生命の星である青色をした地球(最初に宇宙から地球を見たときは、本当に感動した。泣いてしまうかと思った)がある場所よりも、ずっと、ずっと、本当に、ずっと遠い場所にいたからだった。
……、孤独に、ずっとひとりぼっちで。