考えてみてください。私が今日もし人を助けたら、あなたはどう思いますか?
私は今日、猫を拾った。いや、あるいは拾われたのかもしれない。それとも拾うところで止めてそのまま帰ってきたのかもしれない。もしかしたらそんな猫居なかったのかもしれない。そんなに深く考え込む必要はないのかもしれない。
私は今日、指輪を拾った。いや、あるいは指輪が拾われるようにそこにいたのかもしれない。もしくは、誰かが投げ捨てたのかもしれない。それとも、誰かが落とした落し物かもしれない。私が手を加えると、その指輪の運命は変わってしまう。あるいは、手を加えないというその選択すらも運命だったのかもしれない。それはそうとして、今日は天気が良い。なんてったって、雨が蕭々と降っているからな。
私は今日、何かを拾った。そんなものいちいち覚えてなんかない。あるいは、名前がわからなかったのかもしれない。もしくは拾っていないのかもしれない。
私は今日、命を拾った。あれば本当に危ない出来事だった。まさか昨日拾ったものが爆弾だったなんて。少しの衝撃で爆弾でもしていたら今頃どうなっていたか。それはそうとして、今日は地面が濡れている。ぺトリコールの匂いが際立っていて、凄く湿度が高い。にしても今日は、良い、凄く良い、最高な、涼しい風が吹いている。
私は今、容疑者たちと一緒の空間に居る。誰かが殺され、犯行現場を誰も見ていない。その中で推理ゲームが始まった。あぁ、生きて帰れるかな。
私は今日、指輪を捨てた。マリッジリングなんて大層なモノじゃない。ただのファッションとして身に付けていたものだ。少し身軽になり、気が優れなかった。
きっと今日も私は取捨選択をする。何かを見つけては観察してみる。そして拾って、後は忘れた。そもそも、落ちている物は拾わない方がいいのに。
私は今日、人を助けた。
そう思っているのは私だけなのかもしれない。「人を助けた」と思っているのは私で、相手は違うかもしれない。「助かりました」と言われても、表面上そう言ってるのかもしれない。そうだとしたら、そう言わざるおえない状況だったのかもしれない。となると、相手方に要らない心配と気遣いをさせてしまった。そんな思いをさせて、人助けなんて言えるワケがない。人を困らせてしまった。
人を助けて、相手を困らせてしまったなんて思う、私はとんだ捻くれ者だな。
今日は天気が良くないな。なんてったって、雨が蕭々と降っているからな。