人種について
ある人族の研究者が纏めたレポートです。
<獣人族>
・獣の特徴を持った人々の総称(耳は獣のもの一対のみ。基本的に人族のような外耳は持たない)。元となった獣が何であれ人族と同じく雑食であり、胎生。
・人族より身体能力が高く、五感が鋭い傾向にある。各獣人族ごとにある身体能力や感覚が突出して高い場合があり、この特性は元となった獣に準拠している。保有魔力は人族と比べてかなり少ない。
・思考能力は人族と同等であるが、その意思決定には「本能」と呼ばれる何かが絡んでくることが多々ある。これは人族でいう衝動に近いものとみられるが、衝動とは断定し難い部分もあるためここでは「獣人族に特有の無意識な心の働き」とする。(獣人に対し調査を実施したところ、ほぼ全員から「本能に抗うのにはかなりの理性を必要とする」との回答があった。獣人の本能は我々の想像以上に彼らに大きな影響を与えているのかもしれない)
・各獣人族ごとに「王種」と呼ばれる種が存在し、王種はその獣人族内で最も高い能力を示す。王種以外の種は「本能」的に王種を尊重し、その命令に従おうとする。
・頭髪は耳や尾と同じ色、模様になる。
・共通してパートナーの首を舐める、噛むなどする行動が見られ、この行動は「マーキング」と呼ばれる。「匂い付け」ともいわれるようだが、その匂いは人族には感知不可能である。(実験の結果、獣人はこの「匂い」のみの情報で誰がマーキングを行ったかある程度判別できるようだ)
・満月の日には通常よりも高い能力を発揮する。また「本能」も高まる傾向にある。
・稀に「先祖返り」と呼ばれる通常の獣人より高い能力を示す者が生まれる。見た目等に変化はないため非常に見分けがつきにくい。(他の獣人が本能的に「自分たちとは違う」と感じ取る場合はあるようだ)
◆兎族
概要:兎の獣人。兎の耳と尾を持つ。基本的に耳は頭部から上に伸びているが、まれに垂れ耳の者もいる。草食動物を祖とするためか生殖欲が強く、多産傾向にある。
特徴:鋭敏な聴覚、強い脚力、(比較的精度の高い)危機察知能力。また、総じて俊足。
・赤眼種
毛色…白、瞳…深紅。
王種。非常に耳が良く、高い危機察知能力を持つ。白化個体と同様の色彩的特徴を持つが、白化個体によく現れる障害は見られない。
・群生種
毛色…茶、瞳…茶,黒。
兎族内で最も数が多い。
・平原褐色種/平原白種
毛色…茶、瞳…茶,黒。/毛色…白、瞳…黒。
他種より大柄な傾向にあり、耳も平均より長い。脚力が強く、特に足が速い。北部には平原種の特徴を示しながらも体毛の色が異なる者が見られ、平原白種と呼ばれている(環境の違いによって生まれた亜種と考えられる)。総数としては平原褐色種の方が多い。
・山岳種
毛色…茶、瞳…茶,黒。
他種よりかなり小柄で、耳も小さい。また、尾もない。山岳に暮らすためか、遠方の仲間と鳴き声に似た声でコミュニケーションを取る文化がある。
・南方黒種
毛色…黒、瞳…黒。
南部の限られた地域にのみ暮らす。身長、体格は平均的であるものの、耳が小さい。
◆狼族
概要:狼の獣人。狼の耳と尾を持つ。種ごとの能力差が見られない(王種は除く)。祖である狼が群れで暮らすためか、集団生活に適応している(コミュニティ内では個々人の能力等で順位付けが行われているようだ)。また、獣人族の中で特に満月の影響を受けやすい。他国でも存在が確認されている。
特徴:鋭敏な嗅覚、高い持久力。
・白銀種
毛色…銀、瞳…青。
王種。基本的に集団内で最も高い順位を占める。
・灰種
毛色…灰(茶色が混じることも),灰褐色、瞳…黄,茶。
黒鉄種と能力に差異なし。狼族内で最も数が多い。
・黒鉄種
毛色…黒、瞳…茶,黒。
灰種と能力に差異なし。
◆鷹族
概要:鷹の獣人。背に鷹の翼を持ち、耳は人族と同じ形状。翼の色や模様の個体差が大きい。
特徴:飛行能力、高い視力
・金翼種
毛色…金茶、瞳…白茶。
王種。特に目が良く、他種より飛翔速度が速い。
・斑羽種
毛色…茶色と白の横縞,灰色と白の横縞、瞳…黄,茶。
金翼種より小柄で、翼もやや小さい。小回りの利いた飛行を得意とする。鷹族内で最も数が多い。
・黒羽種
毛色…黒、瞳…黄,茶。
鷹族内で最も大柄で、翼が大きい。他種より力が強い。
◆豹族
概要:豹の獣人。豹の耳と尾を持つ。幼い頃は目が青いが、十五歳前後で大人と同じ目の色になる。縄張り意識が強く、個人で行動することが多い。他国でも存在が確認されている。
特徴:優れた身体能力(跳躍力や柔軟性、筋力が特に高いが、持久力にやや欠ける)、高い夜間視力
・橙斑種
毛色…橙に黒い花様の斑点、瞳…薄い茶。
王種。
・淡黄斑種
毛色…淡黄色に黒い花様の斑点,淡褐色に黒い花様の斑点、瞳…薄い茶。
豹族内で最も数が多い。黒斑種と能力差が見られない。
・黒斑種
毛色…黒に黒い花様の斑点、瞳…薄い茶,茶。
淡黄斑種と能力差が見られない。
・雪斑種
毛色…灰白色に黒い花様の斑点、瞳…灰,青。
山岳地帯や豪雪地域に暮らす。寒さに強い。他種より尾が太い傾向にある。
◆蛇族
概要:蛇の獣人。人族と同じ形状の耳を持つ。皮膚に鱗を持つ他、縦長の瞳孔、先が二股に分かれた舌、発達した犬歯など一見して識別しづらい外見的特徴を多く持つ。まれに魔眼の一つ、『魔を視る瞳』を持つ者が生まれる(そのためか、祭祀官に占める蛇族の割合は非常に多い)。寒さに非常に弱く、体温が下がると強烈な眠気を感じる(蛇族の多くは冬になると家に籠もったり、温暖な地域に移動したりする)。
特徴:高い柔軟性と筋力、鋭敏な嗅覚と聴覚、牙から分泌される毒(毒の有無、種類は種による)
・白鱗種
毛色(鱗の色)…白、瞳…深紅。
王種。多くは毒を持たないが、まれに毒を持つ者が現れる(非常に強力であったという記録あり)。白化個体と同様の色彩的特徴を持つが、白化個体によく現れる障害は見られない。
・緑鱗種 無毒型/有毒型
毛色(鱗の色)…暗緑色,藍色,黒、瞳…黒。
有毒型は出血毒を持つ。
・褐鱗種
毛色(鱗の色)…砂色~暗褐色、瞳…黒
強い麻痺毒を持つ。
・網様鱗種 大型/有毒型
毛色(鱗の色)…茶系統の網目模様、瞳…茶,黒。
種内でさらに大型と有毒型に分類される。大型は平均よりかなり大柄であり筋力も高いが、毒は持たない。有毒型は麻痺毒および出血毒を持つが、体格は平均的。
・縞様鱗種
毛色(鱗の色)…白~淡い茶の地に濃い茶色~黒の横縞模様、瞳…黒。
強い麻痺毒を持つ。
<人族>
・獣の耳や尾を持たない人々の総称。雑食であり、胎生。
・種として際立った身体能力を持たないが、獣人族より保有魔力が多い傾向にある。
◆人族
概要:世界で最も数の多い人種。現状、全ての国家で存在が確認されている。目や髪の色が非常に多様であり、分類は困難である。居住地域の太陽光の強さによって、肌の色が変化する。
特徴:高い保有魔力
———アグリア王国、王立図書館収蔵の資料より抜粋
※これはあくまで作中の人族および獣人族が一般的に理解している情報であることをご了承ください。