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夢見る聖女と呼ばないで!  作者: 兼業ニート
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長い夕食の翌日と前世の記憶

グアノについてお話しした長い長い夕食の翌日、側仕えのシャナンに起こされ目が覚めました。


「おはようございます。エレアノール様」


「おはようございます。シャナン」


顔を洗うように促され、顔を洗い、服を着替えさせてもらいます。


「昨日の夕食でのお話、わたくしも驚きながら聞かせていただきました」


夕食時に給仕をしてくれていたシャナンが私の服を着替えを手伝いながら話します。


「セシリア様がおっしゃっていた通り、5歳のお子様にしてはとてもご聡明だと感じておりました。ですが、まさか豊穣の聖人からお告げを授かっていたとは思ってもみませんでした」


改めてそう言われるといたたまれない気がいたします。悪意があるわけではないのですが、家族や家族同然の側仕えに嘘をついているわけですから。あと、聖人からのお告げという奇跡のような扱いをうけるのはむずがゆい気持ちです。


「シャナンまでそのように言うのはやめてほしいです。本当にただの夢かもしれないのですから」


「グアノというものについてあれほど整然とお話されていたのに、まだただの夢かもしれないとおっしゃるのですか?」


シャナンは少し驚いたような声でそう言います。ですが、わたくしもお父様から聞いた島の石がグアノであるか確信があるわけではありません。


「さあ、朝食へまいりましょう、エレアノール様」



 昨夜、前世の記憶について初めて家族に話しました。両親からどのような反応をされるか恐ろしくて扱いに困っていたのですが、もしかするとこの記憶が家族の役に立つかもしれないと思えるようになり、少しだけ心が晴れたようにも感じています。ただ、前世の記憶という点を言い出すことができず、聖人からのお告げということになってしまったことについてはもやもやしたままです。


 わたくしに前世の記憶があると気づいたのは4歳ぐらいのときでした。目の前の人が一生懸命に音を投げかけてくることに意味があるらしいこと、それは物や人の名前であること、動作にも名前があることを漠然と理解し始めたころだったと思います。そしてあるとき、名前の順番や名前の間に入っている声にも意味があることに気づいた瞬間、前世の記憶が一気によみがりました。言葉の習得具合がカギとなっていたのかもしれません。自分の前世が日本人の女性だったことを思い出しました。一度前世の記憶がよみがえってしまうと、4歳の子どもとしての振る舞いが難しくなってしまいました。親や側仕えに遠慮なく甘えることも、言葉を覚えるために言い間違いをすることも恥ずかしく感じてしまうようになったからです。それでも自分が4歳であることには変わりないのですから親や周囲の大人の力を借りないわけにはいきません。こうして子どもとしてぎこちない生活をすることになったのでした。ちなみにわたくしの丁寧な言葉遣いはお母様とシャナンの教育の結果です。生まれた時から貴族としての教育を受けると言葉も貴族然とするものなのです。


 わたくしは日本人でした。一般的な家庭で育ち、大学を出たのですが、親に甘えて実家に住みアルバイトをしながら40過ぎまで生きていました。塾の先生のアルバイトをして暇な時間は本や漫画を読んだりとインドアな生活を送っていました。塾の先生といっても教員免許を持っているわけでもなく、教える教科についてもせいぜい大学の学部生レベルの知識で、中学校や高校の授業を補うような授業をしていましたが、生徒や保護者には多少人気があったと思います。


 塾の先生のアルバイトというのは現役の大学生も多く、入れ替わりが激しいです。活発な子が多い世代、人間関係がうまくいかない世代、やたらと色恋沙汰の多い世代など、数年で教室の雰囲気もコロコロ変わります。そしてある年は先生の間でアウトドアな趣味が流行しました。わたくしは一切アウトドアな趣味には触れてきたことがなく、もういい年だったので遊びのお誘いもお断りするようにしていたのですが、あるときどうしても断り切れず登山についていくことになりました。標高3000メートルを超える高い高い山を登る山登りに。登り始める前日からふもとの宿に宿泊し、日の出の時間から山に登り始めました。案の定、すぐに呼吸が荒くなり足も上がらなくなりました。ですがどんなに周りに弱音を吐いても「大丈夫ですよ!がんばりましょう!」と励まされるばかり。そして何とか気力を振り絞って歩き続け、周りの樹木が背の低い針葉樹だけになり、あたりの風景がごつごつとした岩ばかりになったころ、足を滑らせたのが前世の最後の記憶です。わたくしを誘ってくれた彼ら彼女らには一生モノのトラウマを与えてしまい申し訳なく思ったのですが、わたくしのほうはというと登山が原因で死んでしまっているため、迷惑の度合いを比べるとおつりが返ってくるぐらいだと思います。せっかくなので恨めしい相手の枕元に立ってみたいと思ったのですが、気が付いたときには生まれ変わってしまいました。枕元に立つのは次に死んだときの楽しみに取っておきたいと思います。



 朝食のため食堂に行くと両親がもう席についていました。挨拶を済ませて急いで席に着きました。なんだか私のことを見る両親の目がこれまでと違う気がするのですが、気のせいでしょうか?気のせいだと嬉しいのですが……。

主人公、エレアノールの自己紹介の回です。穏やかだけど少し冷めていて大変なことからは距離を置きたい性格です。


一方次回は一晩経っても興奮の冷めない両親とのお話です。


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