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第12章

 1990.9.12 A.M. 7:11 記


 1980年4月~1982年3月までの2年間、ぼくは美絵子ちゃんを、まっけん(= 松本けんいち君)とかに取られないよう、努力していたことを思い出した。


 まっけんは、ぼくよりもギャグが面白い児童だったからだ。


 おおし(= 大島かずひろ君)や伊藤ゆうじ(君)とかのグループにも取られたくないとがんばった。


 上級生のぼくらと、2年生の美絵子ちゃんらが、何かでいっしょになるときも、気をつかった。


 まっけんとかが、ぼくよりも面白いと美絵子ちゃんが考えて、くらがえされては困ると思ったのだ。


 さいわいにも、そういったことはなかった。


 今でも、あのときがんばって本当によかったと思っている。

 

 そういやあ、柴田(君)にも取られないようにしてたっけ。


 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆


 1990.9.10 P.M. 6:08 思い出した。トイレでうんこ中に。


 キン肉マン第5巻の、「では、まいるぞ。」と、ぼくが大桶しげはると美絵子ちゃんのところへ向かうときに言ったのは、いつだったか。


 ぼくと大桶しげはるが、美絵子ちゃんとふざけっこするために、ボール当てをやった、あの「低いかべ」のところから、鉄棒の方へ行くとき、ぼくが大桶しげはるに言った言葉である。


 あとでやつも、それをマネして、「では、まいるぞ。」といった。


 (注釈)


 これも、皆様には初めて語る史実・・・真相です。


 実はぼくは、年がら年中、美絵子ちゃんとぼくの「二人みずいらず」で、休み時間に遊んでいたわけじゃなかったんですよ。


 ときどきこの、「大桶しげはる」という、一学年下の下級生の男子児童を引き連れて、美絵子ちゃんのところに遊びに行くことがありました。


 大桶くんは、非常に素直でおとなしい、まじめな児童でした。


 美絵子ちゃんと何らかの事情で「遊びの」スケジュールが合わなかったり、美絵子ちゃんが風邪で欠席した日などに、ぼくは彼とキャッチボールや、前述の「ボール当てっこ」なんかやって、時間をつぶしていました。


 ・・・『たからもの』に登場する「大山少年」のモデルが、この「大桶しげはる君」なのです。


 物語のように、彼には、「小便を漏らすクセ」がありました。


 そして、その現場を見ちゃって落ち込んだぼくが向かった先が・・・


 『たからもの』とまったく同じで、鉄棒近くでぼくを待つ、美絵子ちゃんのところでした。


 美絵子ちゃん自身は、あの事件が起きる直前に、本当に「大桶君・小便漏らし事件」があったことは、今ここで告白するまで知らなかったと思います。


 ぼくはね、美絵子ちゃん・・・


 あのときのことを、便宜上べんぎじょう『魔物事件』なんて表現してるけど、本当はそうじゃない。


 あのとき君を突き放したのは、この「小便漏らし事件」で、いわば、遊び相手の「同志」である大桶君が、クラスメートからからかわれてるシーンを見ちゃって、ぼくまで「いらぬ落ち込み」「余分な同情」をしちゃってたからなんだ。


 ・・・信じてくれ。


 物語とちがい、ぼくは君を困らせたりイジワルしたり、傷つけるためにあんな妙な「思わせぶり」な態度を取ったわけじゃなかったんだよ。


 ただ単に、「混乱してただけ」だったんだ。


 あの日、いつものように明るい笑顔で駆け寄ってきた君のお顔が、いまも忘れられないよ。


 一度、「中休み」にソレをやったのに、美絵子ちゃん・・・君は、二度目に、今度は昼休みにぼくがそうする直前でも、また笑顔で駆けてきてくれてたよね・・・。


 読者の皆さん・・・


 実はそうだったんですよ。


 ぼくも美絵子ちゃんも、あのときは、病気でも何でもなく、ふだんどおりの「健康体」で、お互い、絶好調でした。

 

 天気も良くてね。


 その部分だけは、「創作」「パラレルワールド」になってますね。


 また、大桶君とは、あの物語のような「図書室での無言の友情」というものはありませんでした。


 彼を図書室で見かけたことは、一度もありませんでした。


 美絵子ちゃんのところに彼を連れて行けた理由は・・・


 彼女が、「ぼくだけを見ていたから」でした。


 彼女はけっしてぼく以外の、「まっけん」にも「いんけんグループ」にも、「しばじ」にも「大桶しげはる君」にも、興味を持ちませんでした。


 ・・・「よそみ」せず、ぼくただひとりのみを見つめてくれていましたよ。


 一度、こんなことがありました。


 ぼくが美絵子ちゃんと鉄棒のそばでふざけっこしていたときのこと。


 美絵子グループの「渡辺ようこちゃん」と「伊藤りつこちゃん」のふたりが、すごくうらやましそうな表情で近寄ってきて、ぼくらにこう言ったのです。


 「・・・ねぇ、あたしたちも混ぜて。」


 ぼくね、ちょうど美絵子ちゃんをゲラゲラ笑わせて、いい気分だったものですからね・・・


 ちょっと強い口調で言っちゃいました。


 「ダメだよ・・・入ってこないで! 邪魔すんなよな!!」


 ちょっとビクッとした「ようこちゃん」と「りつこちゃん」は、さびしそうにその場を離れ・・・それ以降は、二度とぼくたちの間に無理に割り込もうとすることはなくなりました・・・。


 あのときぼくね、もう少し「やんわりと」断れなかったのかなぁ・・・って、いまでも思っています。


 でも、その場にいた美絵子ちゃんはといえば・・・


 先のぼくの強い口調に対し、ビクッとおびえることもなく、そのあとはまた、ぼく特製の(?)ギャグの続きを聞いて、何事も無かったかのようにゲラゲラしてくれましたとさ♪


 あのときの美絵子ちゃんね・・・


 どこか「うれしそう」でした。


 たぶん彼女ね、「ああ、茂雄くん、あたしだけを見てくれてる!」って感じてくれたんじゃないですかね。


 いまもぼく、こう思います。


 「ちょっと口調はキツかったけど、あの二人に割り込ませないでよかった・・・。あのときのぼくの判断は、けっして間違っていなかった。」


 とね。


 もし、美絵子ちゃんとの「みずいらず状態」を解消・緩和・妥協させて、4人で遊ぶようになっていたとしたら・・・


 おそらく、あの『魔物事件』を待たずして、ぼくと美絵子ちゃんとの親密な信頼関係は、もっと早く「崩壊への道」をたどっていってたんじゃないですかね。


 美絵子ちゃん、きっとね・・・


 「ぼくと渡辺ようこちゃん」あるいは、「ぼくと伊藤りつこちゃん」が談笑したり、追いかけっこするようになれば、次第にぼくから離れていってたんじゃないかなぁって・・・。


 よくよく「焼きもち」いちゃってね・・・。


 だから、あれでよかったんですよ、きっと。


 m(_ _)m


 追伸


 この「第12章」ではじめて公の場で語る「真相」は・・・


 実は、処女作『たからもの』をまだ執筆中の時分にも、皆様や美絵子ちゃんに話したくて話したくて、しょうがなかった史実なんです。


 でも、『たからもの』がパラレルワールドになってますから、その「執筆中」の段階では、まだ皆様には語れなかったんですヨ。


 「物語」が終了してなかったんですからね・・・。


 まぁ・・・それでもいずれは、何らかの形でもって、最後の最後に「タネあかし」じゃないですけれど、告白・公開するつもりではいましたけどね・・・。


 でも、こうして誰かに、「文章」という形でも、長年、孤独に抱え込み、苦悩していた思いというものを吐き出して、さらにそれを聞いていただけるのって、本当に素晴らしいことだと思うんです。


 そしたまた、そんな「告白」でも、娯楽として皆様や美絵子ちゃんにも楽しんでいただけたのなら・・・!


 こんな幸せなことはありませんよ。

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