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第7話 前代の魔王と今代の魔王

 ルドルフが絶叫した五分後。


「す、すまな——すいません取り乱しました」

「お、おう、それは全然大丈夫なんだが……どうしたその口調?」


 いきなり敬語になられると困惑するんだが……俺のステータス見て怖くなったか?

 だが魔王軍幹部が人間に恐怖を抱いたらいけんだろうに。

 しかしどうやらそうでは無い様で、逆に目をキラキラ輝かせている。


「いえ、敬語で無くては魔族の名が廃ります! 何故なら貴方は——魔族の救世主なのですから!」

「……………へっ?」

「へっ? ではありません! 貴方様はこの魔界を大魔王バアルから救って下さった偉大なるお方! それにLevelなんて私よりも遥かに高いカンストッ!! 敬語を使わない理由がどこにありましょうか!?」

「お、おう……何かテンション高いな……」


 俺はルドルフのあまりの圧に若干怯んで後退りしてしまう。

 正直一瞬でも逃げたいと思ってしまったのは秘密だ。

 しかし此奴、持ち前の高いステータスをフル活用して逃げない様に立ち回ってるし。


「そ、それで……救世主様から見て私は強いでしょうか……? これでも鍛錬は怠っていないのですが」

「ん? お前は十分強いと思うぞ? 五〇〇年前の魔王軍幹部とどっこいどっこいくらいだ」


 俺がそう評価すると、途端にパァーと笑顔を咲かせるルドルフ。

 何か見ていると無性に子供の様だと感じるが、これでも俺より何百年も生きたんだよな。

 まるで推しにあったオタクみたいな反応だ。


「それで……俺から聞きたいことがあるんだが……」

「何でしょうか!? 何でもお教えしますよ!」


 そんなテンションで話す様なものじゃないんだが……。

 まぁでも教えてくれるって言うなら教えてもらおう。


「じゃあまず一つ。———前魔王とはアレンか?」


 その言葉でこの後の質問が分かったのか、それとも俺が勇者で親しい友人だったからか、先程の態度から一変して表情を曇らせた。

 そして俺の目を見ながら躊躇いがちに頷く。


「…………そうか……」


 何と無く分かってはいたがやはりそうなのか……。

 だがどうして奴は死ぬことになったんだ……?

 それも勇者に。


「……俺がいない間に一体何があったんだ? もしかしてアレンは人間界に侵略をしたのか?」

「滅相もありません! アレン様がそんな事をするわけが無いではありませんか!」

「なら何で勇者に殺されたんだ?」


 俺はそこが本当に分からない。

 だって三〇〇年前に殺されたのなら、二〇〇年は魔王として君臨していた計算になる。

 大魔王の時は奴が君臨してから二〇年で俺が殺した。

 アレンは強かったとは言え大魔王バアルよりは大分弱かったはずだ。

 だから勇者が倒すまでに二〇〇年も掛かるとは思えない。

 俺なら僅か一分ほどでアレンなら倒せる。


「何故二〇〇年も空いたんだ?」

「…………騙されたのです……」

「……何? 騙された?」


 誰に?

 

「誰にだ?」

「こ、答えますので……その怒りを落ち着かせてくださいっ! 森が崩壊してしまいますっ!」

「……それはすまん」


 知らない内に感情が表に出てしまっていた様だ。

 確かに周りには先程まで魔界ではここにしか生息していない動物達の声や気配が完全に消えている。

 それに木も何本か幹の半ばからポッキリと折れてしまっていた。


「ふぅ……それで誰に騙された?」

「それは―――人間の、救世主様の次の代の勇者です」

「よし、今から俺を魔王軍に入れてくれ。最強の軍団を作って腐った人間どもを駆逐してやる」


 俺がそう言うとルドルフが焦った様な表情に変わり、俺の前に立ちはだかった。


「ちょ、ちょっと待ってくださいっ! 取り敢えず魔王様に報告しないと……」

「なら魔王の所に行こう。今代の魔王がどんな者か気になるしな」


 この魔界に入ってからずっと物凄い強大な気配を感知している。

 正直俺が別れる時のアレンといい勝負くらいの力を有していそうだ。

 これが戦闘でなく常時なら、もしかしたら大魔王に迫る力を持っているかもな。


「そ、それでは取り敢えず魔王様の下へと行きましょう」

「じゃあはい」

「え? これはどう言う……?」


 俺がルドルフに向けて手を出すと、ルドルフは困惑した表情に変化する。

 どうやら俺のしたい事の意図が分からないようだ。

 まぁコイツのスキル欄には俺が今から使おうとしている【転移】がないから分からなくてもしょうがないかもしれないが。

 手を繋ぐのも俺が転移を苦手としているからであって、本来なら一体範囲内の者を同時に転移出来る。

 昔はシンシアが使ってくれていたから俺はあくまで補欠的なものだったからそんなにスキルレベルを上げていないんだよな。


「今から魔王の所に転移するから俺の手を取れ」

「あ、はい。で、ですが魔王様の所に転移出来るのですか……?」

「ああ本来なら出来ないんだが、今代の魔王は強いから気配が感知し易いんだよな。だからその座標を割り出して今から転移するんだ」

「な、なるほど……」

「よし、じゃあ行こうか。———【転移】」


 その言葉と共に足元から天に昇る様に光が溢れ出し、その光が消える頃には既に俺たちの姿はなかった。






***






 ——場所は変わって魔王城。


 魔王城では玉座に座る一人の女魔族とその両隣に控える男女魔族が一人づつと、その下段に跪く男女魔族3名。

 玉座の間に集まった者たちは全て魔王軍の中で最上位の実力者であり権力者である。

 

「それで……魔王様、今日はどんな御用でございましょうか?」


 跪く魔族の中の一人が初めに言葉を発した。

 今回の招集は緊急事態と言う名目で急遽呼ばれていた。

 その為魔王軍幹部の一人で聖森の管理者であるルドルフを除いたすべての魔王軍幹部が集まっている。

 しかしその殆ど全ての者が今回の招集理由を知らなかった。


「今回突然呼んで申し訳ない」

「いえ、魔王様のお呼びでしたらいつでも駆け付けます」


 発言した魔族は慎ましく頭を下げる。

 この光景からも分かる様に、玉座に座っているのが今代の魔王である。

 魔王が玉座の隣にいる魔王軍幹部の一人に目配せをすると、その者が話を繋ぐ。


「今回招集したのは、この魔界に突如魔王様にも匹敵する強者の気配を感知したからです」


 その言葉に知らされていなかった幹部たち全員が驚愕に目を見開く。


「魔王様に匹敵する強者だと……? めちゃくちゃヤベェじゃねぇか!」

「私は戦いたくは無いわよ〜だって勝てる気しないもの」

「俺は全て魔王様に任せる」


 皆こんな感じでゆるい感じに話しているが、顔には冷や汗をびっしりとかき、手は震え翼がシュンと小さくなっている。

 魔王軍幹部は全員が一度は魔王と戦っていおり、如何に魔王が強いかを知っているため、魔王と同等と聞いて背筋が凍る思いをしているのだ。


「魔王様〜一体どうするおつもりなんですか〜?」


 女魔族のその言葉に全幹部の視線が魔王に集中する。

 そんな中で魔王は一度目を閉じて何かを考えている素振りを見せるも、すぐに目を開け言葉を放つ。


「妾は敵対するのであれば容赦しない———」

「——その必要はないぜ?」

「「「「「「!?」」」」」」


 魔王の言葉を遮る様にして突如目の前に一人の人間と魔族が現れる。

 その瞬間に全ての幹部だけでなく、魔王すらも戦闘態勢に入った。

 ただの人間(・・・・・)一人にだ(・・・・)

 

 しかしその誰もが目の前の人間の異常性に気付いていた。

 目の前の人間から感じる圧倒的な力量と、自分たちではどう足掻こうが強者には絶対に勝てない——と。


 しかしそんな重苦しい空気の中、誰よりも先に声を上げたのは、まさかの元勇者である優斗だった。

 その身から溢れ出る強者オーラを一瞬にして収めた優斗は手を上げて武器もすべて捨てると、自らに拘束魔道具の中でも最高峰の《神呪の鎖》と言う反魔法(アンチマジック)と、全ステータス一〇〇分の一にする魔道具を装備する。

 そしてポカンとしている魔王たちに一言。


「あのぉ……これで絶対に勝てないから割り込んだの許して?」


 その余りにもこの場に不釣り合いな言葉に、全ての者が気が抜けたのは言うまでもない。

 

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