54 秋の感謝祭12
2日間に及んだ秋の感謝祭が終わりを告げようとしていた。
そして剣術大会が終わると、闘技場は一気に静けさを取り戻した。
夕方から始まるダンスパーティーに向けて、皆ドレスアップをしに一旦寮へ戻るのだ。
特にパートナーが意中の相手であれば、万全の用意をして、最後のダンスパーティーに臨みたいものだ。
ユリアは銀色のドレスに青のアクセサリーという、アレクシスを象徴する色を全身に纏いながら、これまでにない高揚感に包まれていた。
剣術大会に興奮も冷めやらぬまま、初めて本物のアレクシスと過ごせるダンスパーティーなのだ。
ユリアは思った。
アレクシスが剣術大会に参加することを知らなくて良かったと。
兜の中の誰かがアレクシスかもしれないと思いながら試合を観戦するなんて、きっと心臓がいくつあってももたない。
(あんなに強かったんだ・・・・・)
白銀の甲冑を身に付けて戦う剣士は贔屓目に見なくても格好良かった。
激闘の後に兜を脱いでもサラサラの美しい銀髪は、女性のユリアからしても、もはや羨ましい。
(すごく、格好良かったな)
大精霊リオネルの祝福を受けた王位継承者。
大きな獅子にも変身するし、可愛いテディでもあった。
コントロールしきれないほどの大きな力をもっているのに、耳や尻尾を生やしたりもする。
未知の力に振り回されてきたアレクシスだけど、剣術は彼が努力して身に付けてきたものだ。
幼い頃から剣を振り、優れた王になろうと努力してきた証。
婚約者として、そんなアレクシスを誇らしく思う。
(なんて声をかけようか)
素直に、格好良かったと伝えられたらいい。
(問題は、私にそんなことが言えるのかってことよね)
ユリアは自分の言いたい言葉を想像しては赤面し、両手で顔を覆った。
一人深い溜息を吐くと、この時まで大事に閉まっていた小さな箱を開ける。
アレクシスからもらった黄色の可愛い花の飾りだ。
ユリアはそっと手にとり、侍女が仕上げてくれた髪型の仕上げに自分の手で花を飾った。
自分がタッセルの色に悩んだように、アレクシスもどんな花飾りにしようかと悩んでくれたに違いない。
ユリアは鏡の中の自分に満足し、ダンスパーティーへと向かった。
仕上げとしてのダンスパーティーは、学園の生徒全員が心ゆくまで参加できるようにするため、学園主催で行われる。
外はすでに日が暮れ初め、ダンスパーティーが行われるホールの入り口はライトアップされていた。
生徒たちは男子寮と女子寮の間にある中庭でパートナーと待ち合わせ、ホールへと向かう。
ユリアが中庭へ向かうと、アレクシスはすでに到着していた。
「ユリア」
ふわりと笑うアレクシスが美しくて、ユリアはうっと赤面する。
「お待たせしました」
ユリアがぎこちなく言うと、アレクシスは腕を曲げてエスコートの形をとった。ユリアはそっと腕を絡める。
エスコートは何度もされてきたはずなのに、鼓動が激しくなるのを感じた。
「ユリア、そのドレス、とても似合っているよ」
ユリアがひどく緊張しているのに、今日のアレクシスは口も滑らかだ。
「ありがとう。あの、アレクシス様・・・・・」
拳を握りしめて、決意する。
(伝えるんだ!)
「今日の剣術大会とても素敵でした!」
これ以上ないくらい顔が熱いのを自覚しながら、ユリアは勢いよく言い切った。
アレクシスは一瞬キョトンとしたが、何を言われたのかを時間差で理解した途端、白い肌が一気に赤く染まった。
「あ、ありがとう・・・」
二人で褒め合って、二人で赤面し、どこかぎこちない動きでホールの入り口をくぐるのだった。




