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51 秋の感謝祭9

 突如、声のした方を見ると、そこにはカイナが立っていた。。

 そして、アレクシスにゆっくりと近付いた。

「殿下、命を救って下さったことに、お礼を申し上げます」

 美しいカーテシーをして、スッと顔を上げると、部員たちを眺めた。

「さあ、あなたたちは昼食をとって、午後の開演に向けて準備を始めて」

 公演を続けるつもりのカイナに、部員たちは動揺する。

「マーク、今考えても、あなたの代役なんてどうでもいいわ。そんなこと考えるなんて時間の無駄よ。殿下のことを考えている方がよほど有意義だわ」

 カイナは淡々と告げる。

「だって、何時間一緒に練習したと思っているの?私の相手役なんてあなた以外にはできないのだから、そもそも代役なんて考えたって意味ないじゃない。私たちが歌えなければこの公演は終わりよ。代役なんかでどうにかなるわけがないじゃない。考えるだけ無駄」

 カイナの告げる言葉の意味に、マークはハッとする。

 カイナがどうでもいいと言った言葉の真の意味を履き違えていたのだ。

「アレクシス殿下、あなたのおかげで私は元気です。どうか、マークを午後の公演に参加させ、音楽部が通常通りに活動することをお許しくださいませ」

 カイナは深く頭を下げた。

 部員たちは高慢とも言えるカイナが、マークのために頭を下げたことに衝撃を受ける。

「カイナ・・・」

 そしてカールが、カイナの横に来て、同じように頭を下げた。

「俺からも、お願いします」

 部員たちが続くように、それぞれに声をあげ、深く頭を下げた。

 部員たちの行動に、マークは心から自分を恥じた。

 カイナの言葉の表面だけを聞いて傷つけたこと。

 これまでの全員の練習を台無しにするような行為をしてしまったこと。

 部員たちが、自分に寄せてくれていた信頼を裏切ってしまったこと。

 それら全てを思い、マークは床に跪いて頭を下げた。

 アレクシスはその様子を見て、決断を下す。

「当事者である歌姫カイナ=グランカが望むならば、その願いに答えよう。午前の公演は素晴らしいものであった。午後の公演もそうなるよう、力を尽くすがよい。そしてマーク、人を傷付けておいて逃げるなど、貴殿は許されないことをした。二度目はないと思え」

 アレクシスの言葉に、マークはありがとうございますと頭を下げた。

 部員たちが喜びにわっと湧く。

「カイナ、すまない。俺は君にどう詫びれば・・・・・」

「そんなの決まってるじゃない」

 カイナは即答する。

「最高の歌で詫びなさいよ」

 カイナの言葉にマークは感動し、思い余ってその手を握ろうとする。すると、カールがその間に割り入ってきた。

「僕は許していないから!」

「何であなたが許さないのよ」

 カイナが突っ込むと、カールは複雑な表情を浮かべる。

 3人の姿を見たユリアは、敏感に理解した。

(なるほど、カールは・・・・・)

「それよりアレクシス殿下」

 カールの返答を待たず、カイナは突如、アレクシスに色めいた声をかける。

「わたくし、改めて惚れ直しましたわっ」

 興奮に顔を赤く染め、訴える。

「意識を取り戻した時、体が温かな光に包まれて、天国に召されるのかと思いましたの。目を開けたら、天使のように美しい人が目の前にいたから、これはもう自分は死んでしまったのだと思わず誤解してしまいましたわ。すぐに現実だと気付きましたけれど、やっぱりあなたはわたくしの運命だと確信しましたの」

 早口で捲し立てるカイナの姿に、カールはがっくりと項垂れる。

 対してアレクシスは、笑みを貼り付けたような表情になって言う。

「私の運命はユリアだよ」


 




 

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